「懐がさみしい」「無料ので満足」「今所有している曲で満足」…音楽購入が減った人の事情を探る(最新)

2020/04/24 05:20

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2020-0421音楽を楽しむスタイルは多様だが、大きな区分の一つに「金銭的な対価を支払うか否か」がある。CDや楽曲ファイルの購入は当然対価が不可欠だが、無料データのダウンロードや無料動画配信サイトの動画視聴ならば金銭的対価は(原則)発生しない。音楽業界としては対価が無ければビジネスとして継続することはかなうはずも無く、音楽聴取者の消費性向は非常に気になるもの。今回は日本レコード協会が2020年4月に発表した最新の調査結果資料「音楽メディアユーザー実態調査 2019年版(公表版)」の結果を基に、音楽の対価を支払ったもののその購入度合が減った人に向けて行った質問「なぜ減ったのか」の結果を見ていくことにする。その動きから音楽業界の問題の一端を知ることができるかもしれない(【発表リリース:2019年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。

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調査対象母集団の要項は今調査に関して先行する記事【年齢階層別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】を参照のこと。

今件報告書では音楽との付き合い方に関して、新曲への関心の度合いや商品購入などの面から、大きく次の4つに区分を設定した。

・有料聴取層:
「音楽を聞くためにCDや有料音楽音源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」(定額制音楽配信や有料のコンサートへの参加も含む。通信料金や聴取機器の購入は除く)

・無料聴取層:
「音楽にお金を支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聴いた経験がある」

・無関心層(既知楽曲のみ):
「音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない」

・無関心層:
「音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聴かない(音楽には特段積極的な好意、関心を持たない。音楽への本当の意味での無関心派)」

↑ 該当期間における音楽との関係でもっとも当てはまるもの(再録)
↑ 該当期間における音楽との関係でもっとも当てはまるもの(再録)

そして前年同期では「有料聴取層」だったが、直近年では引き続き「有料聴取層」であるものの支出金額購入が減った人を対象に、なぜ減ったのかについて尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 楽曲購入減少の原因(前年同期から購入が減った人限定、複数回答)(2019年)
↑ 楽曲購入減少の原因(前年同期から購入が減った人限定、複数回答)(2019年)

最大の原因として挙げられているのは「金銭的余裕減少」。1/3強の値を示している。心底アーティストを好み発売された楽曲が気に入っても、肝心のお財布事情が厳しければ購入することは難しくなる。「音楽聴取の時間減少」「音楽にお金を使おうと思わない・思わなくなった」「音楽への興味減少」なども回答者側の事情によるもの。これらは音楽業界の動向とはあまり関係が無いように思われる。

「音楽市場離れ、購入性向が減った原因」としてやり玉に挙げられることが多い「無料音楽配信サイトや動画配信サイト・アプリで満足」は30.3%で第2位の原因として挙げられている。「音楽にお金を使おうと思わない・思わなくなった」など音楽への対価方面での理由に間接的なつながりがあるとの解釈も可能だが、影響力はそれなりにあるようだ。

第3位は「現在保有している音楽で満足している」で29.0%。音源がデジタル化し検索・カテゴリ化・ランダムアクセスが可能となり、多数の楽曲を保有しても気軽に聴きたい曲をすぐに選べるようになったのが現状。1000曲の楽曲保有でも、CDが1000曲分と音源ファイル1000曲分とでは、利用スタイルはまったく異なる。当然、後者の方が隔てなく何度となく音楽を聴取・利用可能。

たとえるならば自分の好みの、あるいは必要な方面のレシピ本を10冊購入するのと、レシピサイトから1000件分のレシピを取得するようなもの。大量のレシピをデータ化したレシピサイトのブックマークを10か所取得して定期的に巡回ルートにあてると表現した方がよいだろうか。

デジタル楽曲の取得と蓄積により、保存の場所を取らずに即時に検索して該当楽曲を聴取することが可能となっただけでなく、ランダムに聴取すれば「自分のお気に入りの音楽を多様な組み合わせでエンドレス状態にして聴く」こともできるため、CDなどの物理メディアで楽曲を取得し再生する音楽聴取スタイルと比べ、新規の購入動機は手元の楽曲が増えれば増えるほど減っていく。お気に入りの曲の雰囲気、歌手やグループにスポットを当てて音楽を楽しんでいるのなら、該当領域内の手持ち曲が増えれば、それで満足感を堪能できてしまう人が増えてくる。要は「お腹いっぱい」「手持ちのと比べてもっと新しいもの、よい曲でないと買うに値しない」との判断を下した結果に他ならない。

「好きなアーティストに関係なく買いたい曲が減った」「好きなアーティストの新商品の発売が減った」「好きなアーティストが居なくなった・減った」は音楽業界における魅力、訴求力が(相対的に)減ったのも一因ではあるし、同時に回答者側の心境変化も要因として考えられる。

昔と比べてデジタル化、聴取ツールの増加に伴い、音楽への門戸はより大きく開かれているはずなのに、音楽そのものへの興味自体を持たなくなった、減ったがために楽曲を購入しない人が確実に一定数存在している。対価支払いをしている・していた人も、手持ちの曲で満足してしまったり、無料のもので音楽への需要を充足してしまい、購入動機が減少している。音楽に関する環境の変化を今一度確認した上で、根本的なビジネスモデルの再構築が必要な時期に来ているのかもしれない。


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