「今所有している曲で満足」「懐がさみしい」「買いたい曲が減った」…音楽購入が減った人の事情を探る(2017年)(最新)

2017/04/18 05:23

音楽を楽しむスタイルは多種多様だが、大きな仕切り分けの一つに「金銭的な対価を支払うか否か」がある。CDや楽曲ファイルの購入は当然対価が不可欠だが、無料データのダウンロードや無料動画配信サイトの動画視聴ならば金銭的対価は(原則)発生しない。音楽業界としては対価が無ければビジネスとして継続することはかなうはずも無く、音楽聴取者の消費性向は非常に気になるもの。今回は日本レコード協会が2017年4月に発表した最新の調査結果資料「音楽メディアユーザー実態調査 2016年版(公表版)」の結果を基に、音楽の対価を支払ったもののその購入度合が減った人に向けて行った質問「なぜ減ったのか」の結果を見ていくことにする。その動きから音楽業界の問題の一端を知ることができるかもしれない(【発表リリース:2016年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表】)。

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調査対象母集団の要項は今調査に関して先行する記事【年齢階層別の「音楽との付き合い方」をグラフ化してみる】を参照のこと。

今件報告書では音楽との付き合い方に関して、新曲への関心の度合いや商品購入などの面から、大きく次の4つに区分を設定した。

・有料聴取層:
「音楽を聞くためにCDや有料音楽音源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」

・無料聴取層:
「音楽にお金を支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聴いた経験がある」

・無関心層(既知楽曲のみ):
「音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない」

・無関心層:
「音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聴かない(音楽には特段積極的な好意、関心を持たない。音楽への本当の意味での無関心派)」

↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(2016年3-8月)(属性別)(再録)
↑ 該当期間における音楽との関わり合いでもっとも当てはまるもの(2015年3-8月)(属性別)(再録)

そして前年同期では「有料聴取層」だったが、直近年では引き続き「有料聴取層」であるものの購入が減った人(原典では単に「減少した」との表現のみであり、楽曲数なのか購入金額までは明記されていないが、常識的には楽曲数と考えられる)を対象に、なぜ減ったのかについて尋ねた結果が次のグラフ。

なお今件設問は択一回答のため、最大となった理由が提示されている。その理由のみで楽曲が減ったわけでは無く、相対的に影響力は小さいものの、他の項目も購入減少の理由となっていることは容易に想像ができる。

↑ 楽曲購入減少の原因(2016年、択一回答、昨年から購入が減った人対象)
↑ 楽曲購入減少の原因(2016年、択一回答、昨年から購入が減った人対象)

最大の原因として挙げられているのは「現在保有している音楽で満足している」。これが20.7%と2割超え。音源がデジタル化し検索・カテゴリ化・ランダムアクセスが可能となり、たくさん音楽を保有しても気軽に聴きたい曲をすぐに選べるようになったのが現状。同じ1000曲を保有していても、CDが1000曲分と音源ファイル1000曲分とでは、利用スタイルはまったく異なる。当然、後者の方が隔てなく何度となく音楽を聴取・利用可能。

たとえるならば自分の好みの、あるいは必要な方面のレシピ本を10冊購入するのと、レシピサイトから1000件分のレシピを取得するようなもの。大量のレシピをデータ化したレシピサイトのブックマークを10か所取得して定期的に巡回ルートにあてると表現した方がよいだろうか。

デジタル楽曲の取得と蓄積により、保存の場所を取らずに即時に検索して該当楽曲を聴取することが可能となっただけでなく、ランダムに聴取すれば「自分のお気に入りの音楽を多様な組み合わせでエンドレス状態にして聴く」こともできるため、CDなどの物理メディアで楽曲を取得し再生する音楽聴取スタイルと比べ、新規の購入動機は手元の楽曲が増えれば増えるほど減っていく。お気に入りの曲の雰囲気、歌手やグループにスポットを当てて音楽を楽しんでいるのなら、該当領域内の手持ち曲が増えれば、それで満足感を堪能できてしまう人が増えてくる。

今件でも「現在所有楽曲で満足」の回答値が、他の選択肢と比べて群を抜いた同意率を示しているのも、大いに納得ができる。要は「お腹いっぱい」「手持ちのと比べてもっと新しいもの、良い曲でないと買うに値しない」との判断を下した結果に他ならない。

第2位は「金銭的余裕が減った」。これは14.5%と1/7近い回答率を占めている。どれほどアーティストを好み曲がお気に入りのものでも、肝心のお財布事情が厳しければ、購入することは難しくなる。「音楽を聴く時間を持てなくなった」「音楽にお金を使おうと思わない・思わなくなった」「音楽への興味関心減退」なども回答者側の事情によるもので、これも音楽業界の動向とはあまり関係が無いように見える。

ただし見方を変えると、これらの選択肢は他のさまざまな趣味趣向や生活行動と比べ、音楽に時間やお金を割くことの相対的価値が低下したとの解釈もできる。子供の時に大好きだった積み木のおもちゃが、成長するに連れて他の遊びへの熱中度が高まることによって自身に変化は無いものの相対的に価値が下がり、手をつけなくなるようなものである。

「好きなアーティストが居なくなった・減った」「好きなアーティストに関係なく、買いたい曲が減った」「好きなアーティストの新しい商品の発売が減った」は音楽業界における魅力、訴求力が(相対的に)減ったのも一因ではあるし、同時に回答者側の心境変化も要因として考えられる。

「音楽市場離れ、購入性向が減った原因」としてやり玉に挙げられることが多い「無料音楽配信サイトや動画配信サイト・アプリで満足」は7.9%で1割を切っている。「音楽にお金を使おうと思わない・思わなくなった」など音楽への対価方面での理由に間接的なつながりがあるとの解釈も可能だが、影響力はそれほど大きなものでは無いようだ。

昔と比べてデジタル化、聴取ツールの増加に伴い、音楽への門戸はより大きく開かれているはずなのに、音楽そのものへの興味関心自体を持たなくなった、減ったがために楽曲を購入しない人が確実に一定数存在している。対価支払いをしている・していた人も、手持ちの曲で満足してしまったり、無料のもので音楽への需要を充足してしまい、購入動機が減退している。音楽に係わる環境の変化を今一度確認した上で、根本的なビジネスモデルの再構築が必要な時期に来ているのかもしれない。


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