インターネットはそこそこ、4マスは概して軟調が続く(電通・博報堂売上:2013年2月分)

2013/03/13 08:45

博報堂DYホールディングス(2433)は2013年3月11日、同社グループ主要3社の2013年2月における売上高速報を発表した。これで電通(4324)が同年3月7日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2013年2月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比を再計算の上でグラフ化し、両社それぞれの広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認する。

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グラフを作るために取得したデータに関する解説、各項目の留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で記述している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2013年2月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年2月分種目別売上高前年同月比

本震からほぼ2年経過したこともあり、東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではすでに終息している。そして昨今では震災以前からの広告業界・メディアのトレンドが継続されている。つまり中期的な概況として「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っているが、テレビは例外的にやや復調の兆しあり(対象層が高齢者中心のため、社会全体の高齢化がプラスに影響している可能性がある)」「デジタル系、そして屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」といった動き。特にこの数か月においては「その他」項目が強い動きを示していた。

今回月・2013年2月分の特徴としては「4マス軟調、テレビは例外的にほぼ横ばい」「インターネットはそこそこ」「従来型はOOHが強い」の3項目を呈することができる。比較対象となる1年前の状況を示す記事を見ると、博報堂の雑誌はマイナス13.9%と大きく下げており、この反動が多分にプラスに影響しているものと考えられる。他方OHH(Out Of Home、屋外広告)は電通・博報堂共にプラスだが、1年前は博報堂がマイナスなものの電通はプラスで、そこからさらに両社ともプラスを示している点を見ると、特に電通のOOHが堅調であることが分かる。

また4マス全体として、テレビはかろうじてゼロ付近で行き来しているが、新聞・雑誌・ラジオは博報堂の雑誌以外すべて2年連続してのマイナス。厳しい状況が続いているようだ。さらに理由は不明だが、電通のマーケティング・プロモーションは2年連続してのマイナスで、今月は特にマイナス22.6%という大きな下げ方を示している。同項目の金額は約100億円とかなり大きめなため(新聞や雑誌、ラジオ、さらにはインターネットよりも大きい)、この動きは気になるところだ。

特に4マスの現状を一歩引いた状態で把握するため、参考値として電通・博報堂それぞれにおける「一昨年前の値」との比較を当方で算出し、グラフを生成する。プラスにせよマイナスにせよ、大きく振れた時の年を越えた「反動」をある程度考えなくても済む、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2013年2月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2013年2月度単体売上(前々年同月比)

博報堂DYHD2013年2月度単体売上(前々年同月比)
↑ 博報堂DYHD2013年2月度単体売上(前々年同月比)

電通は中期的な広告業界の動向を広範囲で反映している感がある。特にインタラクティブメディアとOOHメディアの堅調さが特徴的。またテレビがかろうじてプラス、雑誌やラジオなどが痛々しい下げ方なのも目に留まる。他方博報堂はインターネットメディアですら軟調で、少々焦りを覚える。

昨月まで大きくプラスを描いていた「その他」項目は、今回は電通がひかえめ、博報堂が大きな下げ。後社は昨年2012年2月にマイナス21.0%を示したのが大きな痛手として残っている計算になる。ともあれ年末から1月までの大攻勢はひとまず終了したようだ。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値だが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、取引額そのものは意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、博報堂より電通の方が上となる。以前、単純に%の値だけを見て企業規模・各項目の額面を連想する読者がいたので、念のために書き加えておく。

電通・博報堂HDの2013年2月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2013年2月における部門別売上高(億円、一部部門)

2012年夏に続き今冬もまた、場所によってはそれ以上の電力需給問題を起因とする「被害」が生じている。「被害」には直接事件事故性のあるものに加え、経済面・雇用面・リスク面における影響も多分に含まれる(【続く節電要請・逃げる企業…関電管轄内企業の「今後も節電継続」の場合の対応は?】など参考)。そして政治状況に変化が生じた現在もなお、前政権党の政策による日本経済への傷跡は大きく、電力需給問題は今なお進行中で、経済に痛手を与え続けている(【火力発電所の燃料消費と調達実態レポート】)。

電力はあらゆる産業の糧(かて)となり血となり燃料となる。それは広告業界でも同様で、「無駄」と烙印を押されかねない派手な電力消費を用いた広告は自粛を余儀なくされかねない(代理店側が良しとしても、クライアント側が懸念を持ち、腰が引けてしまう)。また電力を常用する公的・準公的施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、導入され、稼働率を高めつつある。

伊右衛門の広告入り緑の山手線新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ(デジタル系、インターネット系技術を取り入れた従来型広告の発展版。液晶パネルが使われることが多い)」も、地震直後のような「電力需給を考慮・配慮し全面電源オフ」との状況からは復帰しているが、積極的な節電の「強要感」は深く浸透し、以前ほどの活力・積極性は見られない。「全国規模で」電力浪費(に見える)による非難リスクを広告主は敬遠するため、必然的に代理店側も工夫を凝らすようになる。デジタルサイネージが撤去されたり、各小売店でも身を削る形での節電状況が随所で日常茶飯事化している。このような動きは、売上へのマイナスの影響が懸念される。消費者心理の観点では、暗い場面での意思決定は積極性を欠いてしまうからだ。

そのような状況においては当然のごとく、電力消費の心配が要らない、立て看板をはじめとした従来型野外広告に注目が集まることになる。震災後特に際立つようになった「従来型広告の堅調さ」も、これら電力事情を主にする社会情勢が影響している。これらの動きを見る限りにおいては、従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用、さらには併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、慣習にこだわらずに、費用対効果が高く、同時に効果が広告主にも把握しやすい広告手法が求められる。大層な話にも聞こえるが、当たり前のことが強く確かめられただけに過ぎない。

震災による影響が収まり、各広告種類が再び本来の力量による動きを見せ始める中、4マス中「テレビ」以外の3項目における軟調さが目に留まる。これはそれら媒体の「メディア力」の低下を示している。その低下が「絶対的なもの」か、他メディアと比較しての「相対的なもの」かは広告費の動向だけでは断定できない。しかし少なくとも、広告出稿側からは厳しい評価がなされている。

今後も広告費動向を注意深く見守ることで、各メディアにおけるパワーバランスの変化を感じ取りたいものだ。

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