店舗数漸減継続中、CD総在庫数も大幅減少…CDレンタル店舗数(最新)

2019/10/16 05:13

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2019-1012日本レコード協会は2019年10月10日、2019年度におけるCDレンタルショップの動向をまとめた報告書の概要【CDレンタル店調査2019年度概要】を発表した。そこで今回はこのデータを基に、最新のCDレンタル店の動向を複数のグラフとして描き起こし、状況の精査を行うことにした。


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店舗数減少継続、店舗面積拡大化再開


同調査は店舗規模・業態を勘案したサンプル調査方式で、886店を訪店調査した結果によるもの(全店舗数は1882店舗)。それによれば2019年におけるCDレンタル店舗の特徴として、

・店舗数減少傾向は継続。

・大型化は継続中。

・CD総在庫は大幅に減少、1店舗あたりの在庫も減少継続。

などの傾向が確認できる。

まずは店舗数の動向。今データでは2016年分までは年末、2017年分以降はその年の6月末時点の値を適用している。

↑ レコード・CDレンタル店数(店)
↑ レコード・CDレンタル店数(店)

傾斜が一様なわけではないが、減少傾向を続けていることに違いは無い。直近の変化率は前年比でマイナス7.9%(161店舗減)と大きな減少を示している。ピークとなる1989年以降では初めての2000店割れで、このままの勢いが続けば、あと数年で1500店を下回ることは容易に想像できる。

店舗面積の上では、拡大から横ばい、そして再び拡大化の動きが見受けられる。

↑ 店舗面積(1店舗平均、コーナー別、平方メートル)
↑ 店舗面積(1店舗平均、コーナー別、平方メートル)

データを確認できるもっとも古い1994年以降、「その他」の売り場も含めた平均店舗面積は拡大を続け、「店舗数の縮小」とともに「業態の多様化・兼業化の促進」と「規模の拡大」、さらには「小規模店舗の統廃合、自然淘汰」が行われていた。

ところが2009年にイレギュラー的な落ち込み、そしてそれを乗り越えて2010年にさらなる増加を見せたものの、その年をピークとし、2011年以降はこれまでとは逆に減少の動きを示した。過去において面積増加の牽引力だった「その他(つまり複合業態)」「レンタルビデオ」ともに減少しており、トレンドが「拡張一本やり」から変化した雰囲気があった。

しかしながら2013年ではその流れから再び舵を切り直して増加の動きに転じ、以降直近の2019年に至るまで、その流れが続いている。2017年にはこれまでピークの2010年の値すら超え、2018年以降は毎年過去最大面積を更新中。かつての傾向の通り「店舗数減少」「店舗面積拡大」といった集約的方向に動き出したようだ。

1店舗あたりの在庫数も減少に転じる


レンタル用CDの在庫だが、今世紀初頭から「シングルの減少」「アルバムの増加」といった傾向が続いていた。総枚数はデータが確認できる1994年以降では以前のピークの1997年・4504万枚を超え、2014年時点で最大の4750.4万枚に達した。店舗数の減少と大型店舗化(、小規模店舗の閉店・合併など)の動きでは後者が前者を上回るスピードだったために、総在庫数は増加の一途をたどっていた次第である。

ところが2018年は前年比でシングルこそ増えたものの、アルバムは大きな減少を示し、総数も大きく減少してしまった。そして2019年ではシングルもアルバムも大幅に減少、総数も勢いよく減少。そして1店舗あたりの平均在庫数も16年ぶりに前年比でマイナスを示した2018年に続き減少を示した。減少ばかりである。

↑ CD総在庫数(千枚)
↑ CD総在庫数(千枚)

↑ 1店舗平均在庫数(枚)
↑ 1店舗平均在庫数(枚)

店舗平均のアルバム在庫中は漸増する一方で、シングルは減少の動きを示していた。しかし2011年を底値に再び増加に。ところが2018年をピークとして、2019年では再び減少に転じている。2019年ではアルバムの減り方が大きいので目立たないが、シングルも確実に減少してしまっている。

各店舗側は在庫を増やすことで一人でも多くの顧客の需要に、しかも即時に応えられるよう、努力していたように見える。デジタルメディアと異なり物理メディアでは、在庫不足は顧客が店舗で示す「衝動的な需要」に応えられない可能性を生み出し、それは大きな機会損失になりうるからだ。メジャータイトルなら「貸し出し中」の喧伝は逆に人気のバロメーターとなり、宣伝効果も期待できるのだが。

また、ずらりと在庫を並べて充実感を演出することで、潜在的需要の掘り起しを生み出す期待もできる。充実した図書館に足を運ぶと、つい手に取って目を通したり、借りたくなる、あの現象である。多くの在庫は利用客の安心感を想起させる。

そのような戦略が容易に推測できるからこそ、2018年から生じている1店舗平均在庫数の前年比の減少は要注意な動きに違いない。店舗数そのものの大幅な減少も合わせ考えるに、レンタルCDそのものの需要が明確な縮小をはじめ、それに店舗側が応じているようにすら見える。

なおCDシングルの在庫総数の全体に占める比率は低く、大部分がアルバムCDの状態が続いている。2019年では枚数換算で94.0%がアルバムCDで占められており、この比率は年々増加しつつある。総在庫数に占めるCDシングルの割合が5%を切る、つまり20枚のレンタルCDのうちシングルは1枚しかない状況も、もう間もなくのことだろう。

なお各店舗の在庫CD枚数で区分した店舗「数」シェアだが、この数年は概して大量在庫店舗の比率が増加する傾向にあった。これもまた、「顧客の需要に即時対応できる店舗=大型化」の傾向の裏付けとなる。2018年では最大区分の「1万5000枚以上/店」の店舗比率が7割を超える形となった。

↑ CD在庫規模別店舗数分布
↑ CD在庫規模別店舗数分布

2011年から数年は中型規模(4000-6999枚)の店舗シェアが持ち直しの動きを見せていたが、2014年で大きく後退。4000-6999枚の店舗数も顕著に減り、その分が数字的には大規模店舗にシフトした形となっていた。

ところが直近年では最大区分の店舗比率が11.5%ポイントも減り、それ以下の区分の店舗比率が大きく増加する形となった。グラフからも明らかに2018年をターニングポイントとしてトレンドが変化したような動きをしている。大型店舗化への流れにブレーキがかかり、中型・小型店舗が増えた形となっている。総店舗数やCD総在庫数の大幅な減少と合わせ見るに、レコード・CDレンタル業界に大きな動きが生じていそうではある。

兼業傾向は相変わらず不明


残念ながら今件レポートでは該当店舗の兼業状況について、2010年度のレポートを最後に、数字の公開は行われなくなった。個別業種の区分が難しくなり(多種多様化したため)、個々の業態に該当するか否かを見極めカウントするのが不可能になったからかもしれない。最近ではスナック菓子や雑貨の販売まで始めるレンタルショップも珍しくなくなった。

レポートではそれを裏付けるかのように、店舗面積の内訳の解説で「その他」の項目の増加に関して「前年比2.1%増の540平方メートルと拡大した。その他部分では、書籍・コミックのレンタル・販売、ゲーム販売、文具販売などが展開されており、CDレンタル店において、CD、ビデオレンタル以外のサービスが拡大していることが窺える」と説明しており、レンタル店が単なるCDやDVDのような光媒体の映像メディアの貸し出しだけでなく、多様なエンターテインメントツールのレンタル、さらには販売にまで手を広げ、総合アミューズメント・レンタル店の様相を呈していく実態が想像できる。あるいはソフトメディアレンタル&セールショップと表現すべきか。

↑ CDレンタルショップの兼業状況(2010年分までのもの、再構築の上で再録)
↑ CDレンタルショップの兼業状況(2010年分までのもの、再構築の上で再録)



レンタルショップの店舗数の減少は続いている。この流れは【書店数とその坪数推移】【本屋の場所、大きさ別・雑誌やコミックの売上全体に占める割合】でも指摘しているような、書店業界の動きと何ら変わりがない。ピーク時の1989年当時と比べて、すでに3割強にまで減っているのが現状ではある。

スマートフォンに代表される、モバイル端末の普及率がさらに高まり、デジタル機器に慣れ親しんだ世代(デジタルネイティブ)が歳を重ねていくにつれ、CDそのものやCDレンタルの需要は減少していく。音楽もデジタル経由で、自分の好きな曲だけを選択して、聴きたいと思ったその時点でダウンロード購入し、すぐに耳にできる時代。さらには定額制による聴き放題サービスも浸透を続けている。今後も試行錯誤を繰り返しながら、CDレンタルショップは自らの長所を活かす様態に変化を重ね、進化を遂げていくに違いない。


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