穀物が上がり、他は下げる…先月から傾向継続(2013年2月分世界食糧指数動向)

2013/03/12 07:55

2011年3月4日付けで公開した記事で、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイトで発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が、歴史的に見ても高い水準を維持し続けていることをお伝えした。この値は1990年以降にFAOが、世界の食料価格の月単位での変化を定期的に独自の計算を行い発表しているもの。昨今の各種商品市場の動向、さらには政治情勢を判断する際には、重要な指針となるものだ。そこで今サイトでは元データの更新(ほぼ毎月)があるたびにそれを確認し、グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2013年2月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認を願いたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年2月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年2月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたのが確認できる。ところが2007年夏に始まる金融不況を皮切りに各値は大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向を示すようになった。特に「サブプライムローンショック」(2007年夏-)時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、少しずつ下落の動きが確認できる。とはいえ大きく下げているのは砂糖と油脂のみで、他の種類はやや高値で横ばい安定化(単月で下げていても、中期的に見れば調整の範囲内でしかない)の流れにある。

続いて、2007年以降にグラフ生成期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちらの図。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年2月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年2月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つ。数か月でほぼ半減しているのだから、驚かざるを得ない。これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動(反落)の結果。しかし価格上昇の原因「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するわけでは無く、再び上昇をはじめている。そして少し前までは高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。昨今ではこの下値抵抗線を破る形で値を下げ続けているが、これは豊作による供給増加や、不景気による甘味需要の減退が原因とされている。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年2月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年2月)

前年同月比で油脂や砂糖の下げ方、そして穀物の上げ方が気になる。これは先月もまったく同じ傾向で、砂糖に関してはますます下げ幅を拡大している。特に砂糖はこの1年間で大変動を起こしていることが、上記の折れ線グラフでも把握できるが、それだけ他の食品と比べて値動きが激しいことを再認識させられる。なお穀物はこの20年来における最高値圏に近づいていたが、この数か月は値上がり傾向も沈静化し、今月も先月に続き、値を下げる動きを示している。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数はタイやインドでの政策の影響やアメリカでの供給引き締めで米価格がわずかに上昇したが、小麦やトウモロコシが下落したことで、先月比ではマイナス。特に小麦の収穫予想量において、アメリカの値が改善したのが大きい」「油脂指数は先月に続きパーム油の供給量不足が原因で上昇。一方で大豆油の下落やバイオディーゼル関連での需要低下が、上昇幅を最小限のものに引き留めた」「乳製品指数はやや上昇。オセアニアにおける干ばつが主要因。また需要は確実に増加しており(特にバターや粉ミルク)、供給がそれに追いつかないのが、昨今の上昇原因の一つ」「食肉指数はほぼ安定。鶏肉がやや安めで豚肉がやや高め。ただし消費の減退や飼料価格の高騰により、業者は厳しい立場に置かれている状況に変化は無く、これが同指数を高いままに押しとどめている」「砂糖指数は下落。とりわけブラジルやタイでの供給過が原因で、この4か月ほど下落を続けている」などと言及している。

食料価格の上昇は一般市民の日常社会生活に大きな負担となる。さらに急激な変動は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。食料品の生産は概して年単位で行われるため、数日、数か月で目まぐるしく価格が変化すると、対応が仕切れずに、作り手の疲弊を招いてしまう。需給双方の立場からも、食料品の大幅な価格変動、特に価格上昇は好ましい話ではない。この数か月は比較的安定した動きを見せているが、中期的には上昇傾向にあることは違いない。



砂糖食料価格の上昇要素は新興国における需要の累乗的な拡大に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感(概して商品市場は株式市場などと比べて規模が小さく、資金流入により大きく値が跳ねる)と、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は景気後退による需要縮小以外に見つけにくい(科学技術の進歩による品種改良で増産は不可能ではないが、地力を下げるリスクが多分にある)。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値は上がり続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと構造的には変わりがない。

20年来高値間近となり、特に気になる穀物の動向だが【農林水産省の海外食料需給レポート(2013年2月分)】によると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦で生産量が減少、米はやや増加。一方消費量も価格高騰で需要が減退し、米以外は減少(米はインドと中国の需要増で増加)、期末在庫量見込みは4銘柄すべてで減少する見込みとのこと。

人が生命の営みを繰り返す上では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のかなめとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与える。見方を変えれば、各種食料品の価格は社会・経済状況を多分に反映している。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることができる、今件世界食料価格指数を注視し、その動向の変化を見極めたいところである。。


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