「景気は、持ち直している」…2013年2月景気ウォッチャー調査、現状・先行き共に上昇

2013/03/09 10:00

内閣府は2013年3月8日、2013年2月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて増加し、水準値50を上回った。先行き判断DIも先月から続く形で増加し、50以上を維持している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は「景気は、持ち直している」とし、景気が回復基調にあることをうかがわせる内容となっている(【発表ページ】)。

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先月に続き現状・先行き共に全項目でプラス、双方基準値の50を突破
調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらでチェックしてほしい。

2013年2月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス3.7ポイントの53.2。
 →4か月連続の増加。「やや良くなっている」が大幅に増加、「やや悪くなっている」が大幅減少。「悪くなっている」も減っている。
 →家計では高額品や乗用車などを中心に、消費者の購買意欲の改善により上昇、企業動向は円安に伴い、製造業を中心に受注の増加や採算の改善が見られたことなどから上昇。雇用関連は建設業やサービス業などで求人の増加があり、上昇。

・先行き判断DIは先月比でプラス1.2ポイントの57.7。
 →燃料価格などの上昇懸念があるが、円安・株価上昇や、現政権の政策への期待感から全部門で上昇。
今月は先月から継続する形で、現状・先行き共にプラスとなった。冒頭の「景気の見方」のコメントも「持ち直しの動きがみられる」から「景気は、持ち直している」に変わったことからも、具体的な挙動が認識できる。また判断DIそのものも昨年12月分の先行きに続き、今回現状も基準値の50を突破し、具体的な回復感を確認できる。

上昇継続、「先行き」はそろそろ天井か
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では先月に続き、すべての項目がプラス。先月と比べると項目間の上昇幅の差異が縮まり、3-5ポイント内外の上昇で推移している。特定セクターの好況感ではなく、まんべんなく心境が改善していることが分かる。全体以外でも多くの項目が基準値の50を超え、未達なものは飲食関連のみとなった。元々大きく下げていたのと、消費性向の変化で同セクターがやや厳しめなのが影響しているのかもしれない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」不景気時(つまり2001年当時の)における下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフからは一目瞭然だが、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向を見せていたものの、2008年後半の「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落してしまう。そして2008年12月前後でその動きも落ち着く状態となった。その後2009年初頭以降に反動も合わせ大きく戻しを見せたものの、結局基準値50までには戻らなかった。実経済の状況や回答者の心理などを受け、回復するまでの好況感が足りなかったものと考えられる。そしてそれ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を繰り返していた(2010年頭から2011年2月まで)。

そして2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が、単月ではリーマンショックを超える勢い(ほぼ垂直)で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブ(これまた垂直に近い形)となり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドによるもので、景気が回復したというよりは「あの頃よりはマシ」という心理が多分にある。実際「震災特需」の類は一部地域・セクター以外は確認できない。

そして「リバウンド」も長続きせず、2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。一時は戻しを見せる気配もあったが、その後1年ほどは低迷を続けながら、さらなる下落を模索する形だった。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動か」の懸念がありつつも、回復の兆しが見られ、その後のは上昇速度を強め、明らかに景気の回復機運が起きている。今回の判断文言「景気は、持ち直している」が頼もしいばかりである。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認済み。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災で
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
・社会や政治環境の変化で
上昇の動きを確かなものに。
前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んだ。世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化したことにより、互いの数字の下落度合いがズレる余裕すらなかったことになる。

そして2011年3月の東日本大地震・震災の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で前回の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちた状況は、「墜落」という表現の方が適切といえる(この状況は「リーマンショック」直後、あるいは「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と同じ)。

地震直前までの流れは、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあった。これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようで、このパターンが継続すれば、「その時点での」景気状況(どん底ではないものの、やや不況状態の慢性化)がしばらく続く可能性が高かった。

しかし東日本大地震・震災がそれをリセットしてしまう。さらに欧州債務危機の懸念再来、震災に伴う社会情勢の混沌化をきっかけに発生した電力不足の長期化がマイナス要因となり、さらなる不況感を実体化させる。景況感はちょっとしたきっかけで下振れしやすい、2003年よりもさらに下の水準での不景気感で固定される雰囲気を描いていた。

ところがこの数か月においては状況の大きな変化と共に、明らかに、実態に裏付けられる形での上昇が体現化している。本格的なトレンド転換が来たと考えて良い。

景気の先行き判断DIもさらに勢いこそブレーキがかかったものの、先月から続いて上昇している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

プラスの最高値は飲食関連のプラス8.7。一方で最低の伸び率は製造業のプラスマイナス0.0。後者は為替レートの適正化に伴う円安にやや落ち着きが見られたことや、伸び代の少なさが原因だろう。基準値の50超えは当然前回から続き全項目。先行きの景況感という観点に限られるが、全項目で景況感に先月からますますポジティブな心理状態にあることになる。

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすいのが「雇用関連」。2007年勃発の金融危機以来に限れば、最高値を示した昨月の58.9からさらに上乗せし、59.3を示している。もっとも上げ幅は急速に縮小しており、また今世紀に入ってからの動向を見ても、ここらあたりが天井のようだ。

次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば分かるように、「雇用関連」の指数の動きは他の指数に先行する場合が多く、特に「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な下落が起きている事例がある(2001年前半と2008年前半)

3か月前、2012年11月にその「合計値>>雇用関連」という状況が発生したが、今回は早くもその次の月(=先月)に切り返しを見せ、再び「合計値<<雇用関連」という形となった。今月もその状態は維持されており、特にアノマリー的な話を気にしていた人には良い傾向といえる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している。そしてその後、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。「リーマン・ショック」が人々の不安定感を増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後は幾分立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた。この状況は「現状指数」よりも顕著である。そして2011年3月の震災による大幅な下落はリーマンショックの時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕し、針のようなグラフが形成されている。

震災による下落のリバウンドも十分なものでなく、基準値50付近を迷走。現状指数と比べて50を突き抜けることが無かったのは、多分に明るい見通しが見いだせない、材料がない状況による所業。

ところが2012年11月以降は、これまでの「50付近での迷走」「さらなる下値への模索」から転じ、大きな上昇を見せている。この点では現状指数を先行する形で動いていたが、そろそろ天井感の動きを示している。21世紀初頭の好景気時の値をすでに超えているのだから、「先行きへの期待感」としてはこれで十分過ぎる。

生活の知恵と高額消費の動きと
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・株高による資産効果と、ガソリン高に伴う低燃費車への買換え効果で、新車販売は上向いている(乗用車販売店)。
・皮革商材などの高額品の動きが例年に比べて良くなっており、良い物ならば多少お金をかけても手に入れたいという客の気分がうかがえる(百貨店)。
・土日集中ではあるが来街者の多さが感じられる。また株高、円安傾向のためか高額品の売上も堅調である(商店街)。
・2月に入り、長びく寒波や積雪の影響から消費がやや停滞していることに加え、野菜中心に価格が高騰しており、飲食店、スーパーが特に苦戦している。全体的に消費動向が弱い(商店街)。
・燃料油の仕入価格の推移に伴い、小売価格が上がり気味である。暖房用の灯油価格も値上がりし、客からは不満気味の声が聞かれる。燃料油の販売量は相対的に昨年並みである(その他専門店[ガソリンスタンド])。

■先行き
・製造業を中心に円安の影響で景気が良く、ホテルの宴会場利用も増えてきている(都市型ホテル)。
・円安の影響によって、海外旅行から国内旅行へシフトすることが予想される(観光名所)。
・政府の景気対策の効果が現れて、これから景気が良くなると思う(百貨店)。
・電気料金の値上げが予定されているほか、円安によって今後は輸入原材料や商品、燃料など、様々な値上げも避けられない状況であり、家計の負担感は強まる可能性が高い(スーパー)。
などとなっている。先月のブランド物の動きに続き、「ガソリンが値上げされるので低燃費車の売上が伸びる」という動きは正直想像もつかなかったが、確かに需要層からはそのような考えによる行動も不思議ではない。

全体的には先月同様、国内政治環境の変化に伴い、政策の転換で景気が動くことへの直接的期待と、動いたことによる波及効果を待ち望む間接的期待が見て取れる。特に高額商品の動きが目立ち、また「少し前までは掛け声だけだったが、ここ暫くの間に実体化した形での景気回復感」を覚える声も多い。さらに大型補正予算の成立に期待する声もある。全体的な理由一覧の表で「▲(やや悪)」「×(悪)」の項目が少なくなったこと、それらのマイナス項目にも現状維持的な内容のものが多いのが印象的。他方、一部セクターで業務縮小が継続的なこと、燃料など円安の流れに伴うマイナス面を懸念する声も少なくない。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
リバウンドもすぐに沈静化。
景況心理は下落を継続。
直近数か月は国内の
政治環境の変化で
政策転換の期待・実態が
景気を動かす流れに。
2007年夏に始まった直近の不景気は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力も確認されており、「2011年の”震災前”における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする不景気圏でのもみ合い」が続くとするものだった。

しかしながら2011年3月の東日本大地震・震災の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理にも大きな衝撃をもたらす。直接的、物理的な被害だけでなく、間接的な不安要素が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させ」てしまう。これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表することができる。特に一般社会の経済行動では中心的な存在となる、中堅女性層にこの傾向は著しく表れており、小売セクターに大きな影響を与えた。

さらに昨今の情勢を「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの利益を成す者も多数登場している。山師やペテン師だけでなく、この流れに乗る政治家や「自称」専門家も多数見受けられる。これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因であることは明らか。

以前からの不景気の状態は、震災によりさらに強固に、そして確実なものとなっいた。心理的な低迷感は継続し、円高、そして致命的な政策ミスの連続による状況悪化はますます深刻化し、輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けて「いた」。

そしてここ数か月においては上記で触れている通り、日本国内の政治状況の大きな変化に伴い、不透明感が払しょくされる動きが各所で見受けられ、期待に伴う動きが経済面でも表れ始めている。期待の強さは上昇幅の大きさと部門を問わずに上昇機運が起きていることに、そして「現況」よりも「先行き」が先に天井感を覚えていることからも把握できる。すでに実体化している為替・株価動向や、次々に打ち出される具体的方策が、それらの期待を裏付け、後押しする形となっている点にも注目したい。

震災経験を元にした災害対策では、現在多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、感情的な論議とその煽動が(以前の状況から継続する形で)行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを論理的・数理的な面で、可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので講じるのが中長期的・全体的に見て最善。しかし残念なことに直前まで打ち込まれていた「くさび」が諸原因で、多方面でそれとは異なる方向へ歩みを見せている。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が跳梁跋扈している昨今においてこそ、理知的で常識的に「正しい道筋」が求められる。その道筋が確かなものならば、明日に希望が見出せれば、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的景況感もさらに改善する。その流れに世の中が従い、勢いを増すのなら、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示し続けるに違いない。


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