イタリアが大幅な悪化の動き…EU失業率動向(2013年1月分)

2013/03/04 07:55

ヨーロッパ、中でもスペインとギリシャで大きな値を示す失業率だが、これについて【EU統計局(Eurostat)】で毎月発表している、失業率関連の統計データを元に、最新情報の確認と精査を当サイトでは行っている。今回はその2013年3月1日発表・2013年1月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした(該当リリース:【Unemployment statistics】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2013年1月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時で公開されている最新月分のデータを代用している。

↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も前月に続き、スペインすら超えてギリシャがトップについてしまった。同国の状況悪化はさらに進んでいることが予想される。もっとも抜かれた側のスペインにおいて前回言及したように、過去数か月分に渡り、ゼロカンマ数%ポイントの修正が行われていることを忘れてはならない。この修正によってギリシャに抜かれたまでの話であり、スペインにおいて就業問題で何らかの改善があったわけではない。全体的には債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置しており、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあるのもいつもの話。

今回も前回同様、該当月の前月(2012年12月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率は(直上のスペインや次の若年層周りでも同様)、国毎に細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年12月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。また直近分のリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年12月→2013年1月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年12月→2013年1月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあり、正直なところプラスマイナス0.3%ポイント以内は誤差と見て問題ない(概して小国の方が誤差が出やすい)。今回月ではギリシャ、イタリアが大幅な悪化の動きを示している。ギリシャの悪化はいつものことであるが、イタリアは詳しくは後述するものの、緊縮財政政策の副産物的なものとして景気が悪化しており、これが失業率の上昇を招いているものと考えられる。

そして冒頭にあるように、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で24.2%・EU27か国でも23.6%を記録しており、5人に1人以上(間もなく「4人に」1人になりそう)が失業状態。中でもギリシャの59.4%(2012年11月)、スペインの55.5%を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国、急激に経済が冷え込んだ国の若年層失業率の高さが確認できる。

↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)
↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)

↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)
↑ 2013年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.3%ポイント以内は誤差と判断すると、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ハンガリー、ブルガリア、リトアニア、フィンランド、オーストリアが悪化、スウェーデン、チェコが改善と読める。もっとも人口が小さな国では失業率もぶれやすく、よほどの事態でない限りさほどの心配は要らないのだが、やはりギリシャの1.2%・イタリアの1.6%の悪化が気になるところ(リトアニアはこの1年、25%前後を行き来しており、むしろこの数か月では改善の兆しすら見せている)。

ギリシャの動向は前々から繰り返し伝えている通りだが、先日【「ギリシャ 若者の失業率60%超」との報】でも伝えたように、若年層の失業率が急激に増加したことが報じられている。またイタリアはモンティ現首相の緊縮財政政策により財政赤字を縮小させつつあるが、同時にGDPも縮小をしており、景気そのものは悪化中。この政策が嫌気をさされたせいか、先日の総選挙ではベルルスコーニ前首相の一派が優勢に事を進め、上院で過半数を有する勢力が現れず、政情混乱が続いている(【イタリア:ベルサニ氏はベルルスコーニ氏と連携否定(ブルームバーグ)】)。もっとも市場は事前の策が施されており、翌日以降落ち着きを見せ始めている(解説・【イタリア総選挙は最悪の結果でも意外に冷静を保った市場の反応(ダイヤモンド)】)。

↑ イタリアの総選挙結果が伝えられた2月26日、大幅な円高・株安となり、いわゆる「イタリアショック」が発生した
↑ イタリアの総選挙結果が伝えられた2月26日、大幅な円高・株安となり、いわゆる「イタリアショック」が発生した。

↑ 2012年2月-2013年1月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ギリシャ/イタリア)
↑ 2012年2月-2013年1月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ギリシャ/イタリア)

EU諸国も合わせ先進諸国で若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要人員数が減ったこと、その上為替レート上で相対的賃金の安い新興国に、それらの作業が割り振られる動きを見せているのが主要因。

そして債務問題で国レベルの財政の悪化による破たんを防ぐため、上記イタリアの例に挙げられるように、緊縮財政が取られていることも悪化を後押しする大きな要素。緊縮財政をとればその国の国内産業が冷え込み、経済は低迷し、労働市場も緊縮する。家計で収支のバランスを改善するために出費を減らせば、食費も削らざるを得ず、食卓のレパートリーが貧しくなるのが良い例だ。

その上、ヨーロッパ諸国は他の先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇しており、「高齢者が就業場所に居座り、席が空か」ず、若年層が割を食う事態に陥っている。また、すぐには利益が数字として表れない(だからこそ企業にとっては「財産」となる)「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」との判断がなされ優先順位が下げられ、若年層の立ち位置はさらに悪化する。いわゆる負のスパイラル状態に陥っている。

もっとも昨今では【IMFの"「緊縮財政で景気回復」への総括"覚え書き・その2】などにもある通り、特に欧州方面での緊縮財政のリーダーシップをとっていたIMFも、「過度の緊縮財政方策では景気回復はおぼつかず、財政再建自身も困難さを増す」と判断し、これまでの自らの方針を修正、方針転換を図る姿勢を見せている。

また【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、既存労働者の権益を守るあまりに新規雇用が難しくなり、若年層の雇用窓口が狭まり、結果として若年層の失業率増加につながっている。この問題は日本でも当てはまるもので、先進国共通の労働市場問題として憂慮すべき懸念事項といえる。

労働市場の検証や失業対策では、単純に数字だけを比べて「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では無く、「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的で先行きの明るい政策の実行が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。雇用はそのまま収入であり、雇用の安定は収入の安定に他ならない。

無論、上記にもある通り「雇用の長期化」は「他の状況に変化が無ければ」新規参入を阻む弊害。そこが労働問題の最大の問題点でもあり、一見矛盾するポイント。その弊害を無くすには、雇用そのものの拡大を推し量るのが単純明快な方策。いつも満員のレストランに新規客が入りやすくするためには、レストランを拡張して店員を増やし、対応できる客数を増やせばよい、というわけだ。

また、経済は多項目が連動するのが常であることから、単に雇用状況のみを改善しようとしても破綻する(逆の事例がIMFのこれまでの方策)。社会福祉と雇用市場と経済すう勢、そして金融政策はお互いが密接に連動する。安定したインフラを提供して労働・生産の環境を作り上げ、金融政策で後押しをすることで産業を興し活性化させ、お金と商品を「社会全体に循環させる」ことで、経済は育まれ、雇用も活性化し、社会福祉も充実していく。

明るい先行きの見通しがあってこそ、就業者は経済面での生活の上でも精神的にも安定する。そしてさまざまな面での個人、そして国全体としても飛躍が期待できる。経済と雇用、労働市場、金融政策は、連動する形で対策を打つ必要があることを忘れてはならない。


■関連記事:
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】

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