30年近くに渡る広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2016年)(最新)

2016/02/18 10:33

経済産業省は2016年2月16日、特定サービス産業動態統計調査の収録データにおいて、年次ベースの時系列表の更新を行った。同データは広告費の主要項目について月次ベースのものを逐次【経産省広告売上推移(経済産業省・特定サービス産業動態統計調査)】として分析しているが、今回は年単位における中長期的な動きを確認していくことにする。

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伸びるネット、落ち込む新聞、そしてテレビは!?…金額推移


「特定サービス産業動態統計調査」の時系列データは1988年以降のものが収録されている。そこで1988年から今回新規登録された2015年分のものまでについて精査を行う。

なお2005年までは「プロモーションメディア広告など」の項目に「インターネット広告」が含まれていること(2006年から分離された)、電通が同時期に発表している「日本の広告費に関する調査報告」資料における「衛星メディア関連広告」が区分されておらず、「プロモーションメディア広告など」に含まれていることなど、他の類似記事とはいくぶん各項目区分に違いがある。そのことに留意した上で、各値を確認してほしい。

まずは直近分となる2015年における各項目の金額累計。仕切り分けは月次の報告に係わる分析記事と同じにしてある。

↑ 年次広告費(2015年、億円、特定サービス産業動態統計調査から)
↑ 年次広告費(2015年、億円、特定サービス産業動態統計調査から)

全体額をグラフ内に盛り込んだために他の項目があまり目立たない形となっているが、テレビ単独の額面の大きさ、インターネット広告の実情、屋外などの従来型広告の市場規模などが改めて確認できる。テレビは単独で年間1.5兆円、インターネットは6800億円の広告市場を有している。

続いて積上げ推移。従来型4大メディア(いわゆる「4マス」)を黒枠で囲い、区分として見やすくしている。また、月次精査記事で取り上げている4マスとインターネット広告に関して、その推移を折れ線グラフ化したのも追加しておく。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2015年)(特定サービス産業動態統計調査より)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2015年)(特定サービス産業動態統計調査より)(億円)

↑ 媒体別広告費(1988-2015年)(4マス+インターネット)(特定サービス産業動態統計調査より)(億円)
↑ 媒体別広告費(1988-2015年)(4マス+インターネット)(特定サービス産業動態統計調査より)(億円)

広告費は景気と高い連動性・正の比例的関係がある。景気が良い時は広告費も大きくなり、景気が後退すると広告費も減退する。とりわけ直近ではリーマンショックの影響を大きく反映し、2009年が前年から格段と落ち込み、2010年以降は順調に持ち直し動きを見せている。

また、それとは別に各メディアの事情、例えばテレビ広告費は2000年前後がピークで、それ以降は減少の一途をたどり、さらにリーマンショックで大きな影響を受けたこと、その後は少しずつ額面を戻してはいるが、金融危機以前の水準までにはまだ届いていないこと(直近2015年では久しぶりに前年比でマイナスを計上)、4大従来型メディアとインターネット広告以外の広告部門(緑の部分)は、やはりリーマンショックの影響による急激な落ち込みを除けば、比較的堅調に推移していることなどが分かる(2015年では実質的にリーマンショック以前の水準を超え、最高額を示した)。

折れ線グラフで明確化しているが、月次ベースでは2013年でほぼ確定した「新聞とインターネットの逆転現象」(【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】)が、年次ベースではすでに2012年の時点で起きていることが確認できる。それ以降、差は開くばかりの状態。

機会を改めて触れることにするが、例えば新聞や雑誌の広告費はこの10年で約半減。ラジオもほぼ同じ程度の減少。「広告費」と「利用率・媒体力」はそのまま直結するわけではないものの(景気動向やライバル媒体とのパワーバランスも影響する)、激動する時代、そしてメディアの変貌の実情を感じさせる。

広告費全体に占めるシェアでパワーバランスを知る


次に構成比推移。要は「その年の広告費全体(一般広告含む)のうち、各項目はどれほどのシェアを占めていたのか」を意味するグラフ。相対的なパワーバランスを知ることが出来る。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、1988-2015年)(特定サービス産業動態統計調査より)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、1988-2015年)(特定サービス産業動態統計調査より)

上記にある通り、公開データで「インターネット広告」が独立項目として反映されるようになったのは2006年から。その時期から「4マス」と「インターネット」の合計シェアはほぼ同じ比率を示し、「インターネット」が他の4マスを浸食しているようすがはっきりと分かる。記録の限りでは、「インターネット」が項目として登場して以来、毎年シェアは増加し続けている(2011年から2012年はグラフの表記上7.4%と横ばいを示しているが、実数としてはそれぞれ7.37%、7.42%である)。

また2010年時点ではシェア増加の動きすらみられた「テレビ」も2011年以降はシェアを落とし続けている。額面は微増しているが、広告費全体の伸びには追い付かない状態(2013年から2014年の流れではグラフ表記上は同一値に見えるが、少数第2位まで算出すると2013年が26.84%、2014年が26.83%となり、0.01%ポイントの減少となる)。

一方「インターネット」以外では2011年以降、「プロモーションメディア広告など」(要は「4マスとネット」以外の屋外広告全般)が大きな伸びを示す形となった。直近の2015年では実に56.2%となり、6割にも届きそうな勢い。これは多分に「特定サービス産業動態統計調査」、そして電通と博報堂の広告費動向で言及しているように、東日本大地震・震災の影響、例えば強制的節電に伴い、電力消費での配慮があまり要らない従来型広告への再注目の影響によるところが大きい。

また昨今では4大従来型メディアやインターネット、さらには屋外などの従来広告にも分類し難い、複合型あるいは別仕様の広告が多数登場し、既存の仕切り分けに該当しない広告の売上が「その他」にまとめて放り込まれている感はある。結果として「その他」が大きく肥大した形。金額面だけを見ても2011年以降は急傾斜の上昇を続けている。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2015年)(「その他」)(特定サービス産業動態統計調査)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、1988-2015年)(「その他」)(特定サービス産業動態統計調査)(億円)

この現象もまた、月次の「特定サービス産業動態統計調査」、そして電通と博報堂の広告費動向で生じているもので、広告費の状況把握の上では必ずしも好ましいものでは無い。今後何らかの形で細分化が成されることを期待したい。



2011年3月の震災の影響は少なからず広告業界・広告費にも影響を与えており、一部はいまだにその爪痕を残しているが、全体的な「震災前からの流れ」は継続中。むしろ震災によってその流れが加速化した感がある。今件は広告費の推移であり、部数・視聴者数の推移や媒体力、その業界の売上とはまた別のものだが、それぞれの媒体の「パワー」を示す一つの指針との認識で間違いない。

上記グラフで黒枠を用いて囲った各メディアは今世紀に入ってから、特にこの数年、胸を張って第三者に誇れるようなものでは無い、色々と大人げない、過去の実績・権威を汚すような動きをしている。とりわけ震災以後、頭に疑問符を浮かべてしまう質、内容、姿勢の動向を感じる人も少なくあるまい。そのような動きの原因の一つとして、今件データが示す実情を受けての「焦り」があるとする解釈は、決して的外れなものでは無かろう。


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