一部雑誌の急激な下げ、その原因は…少女・女性向けコミック誌部数動向(2012年10月-12月)

2013/03/04 08:45

先日まで【社団法人日本雑誌協会】が2013年2月19日に発表した、2012年10月から12月分の印刷部数データを元に、いくつかの定期発刊雑誌の動向をグラフ化し、分析した。今回は少女・女性向けコミック誌の雑誌について、グラフ化と状況の把握を試みることにする。なお記事執筆者(不破)は男性で女性誌には疎いこともあり、数字そのものは別としても、内容分析については的外れなことを述べている可能性もある。その点はあらかじめご了承願いたい。

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データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項は一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少女向けコミック誌。少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」の立ち位置に「ちゃお」がついている。これは前回と変わりなし。

2012年7-9月期と最新データ(2012年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年7-9月期と最新データ(2012年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」のように100万部超の世界には届かないものの、他誌に比べて「ちゃお」が言葉通り「群を抜いている」様子が分かる。直近データでは55.8万部。販売実数はこれよりも少なくなるので、50万部くらいと見てよい。第2位の「別冊マーガレット」の3倍近くに及んでいる。ただしこの55.8万部も、データが確認できる2008年4月-6月期以降における最盛期の値92万部から比べれば、40万部近く数を減らしている計算になる。

直近の動きとしては青棒より赤棒の方が短い、つまり前期から部数を落とした雑誌が多く見受けられる。中長期的な雑誌離れの影響が多分にあるものと考えられる。特にトップの「ちゃお」の下げ方が著しい。

続いて女性向けコミック誌。こちらは横軸の区切りが小さめ(2万部単位)ということもあるが、少女向けコミックと比べると綺麗な序列が出来上がっている。

2012年7-9月期と最新データ(2012年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年7-9月期と最新データ(2012年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップは前四半期に続き「BE・LOVE」。元々「週刊ヤングレディ」の増刊漫画誌で、1980年の創刊。女性の大人向け(30-40代)のレディースコミック誌。以前トップの座を明け渡し、現在は次点の立ち位置にある「YOU」同様、レディースコミックの強さを再認識させる。

「別フレ2012(2011)」は発売間隔が2か月おきで、本来なら毎四半期単位で印刷実績の公開があってしかるべきなのだが、この1年では四半期ごとに公開・非公開を繰り返している。今回は非公開の期のようでデータは無い。よって今回はグラフには顔を出していない。公式サイトでは名前を「別フレ2013」に切り替えており、休刊の雰囲気も無いので次四半期まで待ちたいところ。

さて「少女・女性向けコミック誌」としての記事は今回が9回目となり、一年前の同期データも参照が可能な状態にある。そこで他の分類同様に、印刷数変移を「前期」「前年同期」の双方の視点からグラフ化する。まずは最新期と前期の変移率。要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったのか、その割合を示すもの。

雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前期比)

赤対象、つまり誤差(マイナス5%)の範ちゅうを超えた下げ幅を示す雑誌が、前四半期期の1誌から今期は5誌に増えている。一方で誤差の範囲(プラスマイナス5%)を超えて上げている雑誌は前回同様皆無。プラスマイナスの振れ方を見ると、「概して軟調」と評るのが適切。

なお部数トップの「ちゃお」が大きく落ちており気になるところだが、原因は不明。該当期間では「姫ギャル パラダイス」の連載が終了しており、これが一因の可能性がある。もっとも「12歳。-Boyfriend-」「魔法使いにヒメのKISS」「ロマンチックアンティーク エミリィ My Love!!」のように新連載も続々スタートしており、一概にコンテンツ不足による失速とは言い切れない。

一方「別冊花とゆめ」も大きく下げているが、これは前四半期同様「ガラスの仮面」が休載を継続しているのが原因と考えて良い。昨年は「秋口再開予定」としていたが、今記事執筆時点で未だ復帰の気配は無い。

続いて女性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2012年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2012年10-12月期、前期比)

目を引くのは「CIEL」の伸びと「Silky」の落ち込み。「CIEL」は隔月刊誌で該当期間に発売されたのは1冊のみ。この号は創刊19周年ということと、付録として「『純情ロマンチカ』&『世界一初恋』ボールペン」「アニメ『八犬伝―東方八犬異聞―』特別DVD」がついており、特に後者の評判が良い。これが多分に部数を押し上げたと考えられる。

他方「Silky」の下げの原因は不明。同誌はこの数年、部数が漸減傾向にあったものの、この四半期での下げ方はややイレギュラーな動きを示している。今回の減少により、直上の「CIEL」とは部数における立ち位置を逆転されてしまったのも印象的(※)。

SilkyとCIELの部数推移
↑ SilkyとCIELの部数推移

続いて「前年同期比」の値も算出する。いわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む(例えば今回なら、2012年10-12月と、その1年前の2011年10-12月分の比較)ので、純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前年同期比)

前四半期記事のグラフと概要的には変わらない。ただ前回ではプラスを示す雑誌があったものの、今回は皆無であり、状況の悪化が懸念される。中でも「別冊花とゆめ」は2割を超える下げ幅を記録しているが、これは上記にある通り前年同四半期に「ガラスの仮面」連載による底上げがあり、それとの比較のために大きなマイナスを示してしまっているのが主要因。

続いて女性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2012年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2012年10-12月期、前年同期比)

↑ Cocohanaの部数推移
↑ Cocohanaの部数推移

こちらも少女向けコミック同様、前四半期から状況は悪化している。特に「Cocohana」の下げが目に留まる。2つ目のグラフにある通り、同誌は2012年1月号で「コーラス」からのリニューアルを果たし、その際に大きく部数を底上げしたのだが、その効果も半年ほどしか継続しなかった。今回はそのリニューアル期との比較のため、マイナス値が大きくなっている。



今期は前四半期以上に全般的に失速感を覚える結果となった。リニューアルや有力タイトルに伴う数字のかさ上げの影響力が薄れ、その反動の大きさが目立つ。「よほど優れた、体質そのものを変え得る特効薬でない限り、減少傾向を止められない」業界の実情を再認識させられる。

複数ラインで「大家」あるいは「大きな底上げ効果が望める」ビックタイトルがあれば、継続的な飛躍が期待できる。しかしそれは少年・男性向けコミックをはじめ他ジャンル同様、今では難しい。単発では今回の「別冊花とゆめ」の事例のようなリスクを伴うことになる。

「少子化だから仕方ない」という、反論が難しい説明がされることもある。しかしこの数年でここまで劇的に落ち込むのは、少子化だけでは説明ができない。趣味趣向の多様化、メディアの上での選択肢の増加、可処分所得の変化、質の低迷など、複数の要因が原因として挙げられる。数少ない、堅調なセールスを見せる雑誌を元に、なぜその数字を維持できるのかを検証し、自分の環境に応用できれば、各誌とも困難な現状を打破……できるかもしれない。


※追記:
今記事執筆後、Silkyの休刊・ウェブマガジンへの移行が明らかになりました。
【白泉社のSilkyが休刊、月刊のウェブマガジンに移行】

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