育児系と食・レシピ系雑誌は明暗分かれる…諸種雑誌部数動向(2012年10-12月)

2013/03/01 08:45

先の2月25日に公開した記事【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年10月-12月データ)】など複数の先行記事で、【社団法人日本雑誌協会】が2013年2月19日に発表した、2012年10月から12月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開した公式データを用いて、いくつかのグラフを生成し、現状の精査と分析を行った。今回は多種多様な雑誌について、「前年同期比」における部数推移のグラフ化を試みることにした。雑誌不況の動向を概要的にでも推し量れると良いのだが。

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まずは一般週刊誌。状況を端的に表現するのなら「ごく一部は踏みとどまり、他は減退」「減退雑誌でも勢いの度合いで二分化」というところ。

一般週刊誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年10-12月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年10-12月)(万部)

今回計測分では前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスなのは3誌。前回の4誌よりは状況が悪化。しかし5%超は皆無。マイナス誌は11誌で、誤差の範囲を超えたのは5誌。業界全体の縮退傾向が一層強く出ている。

マイナス5%超のうち「SPA!」「AERA」は、紙媒体による「写真週刊誌」という存在において、供給過多のイメージは否めない。数字の減退ぶりがそれを裏付けている。デジタル系での配信をメインとし、本誌はそのプラットフォームとして割り切り、出版形態・構成を変えるぐらいの変革も切り口の一つとして考察すべき時が来ている。写真誌の経験を上手く活かせれば、電子書籍上での優位性確保も十分考えられる。

また、今回は前年同期比でマイナス1.4%と減退したものの、前期比ではプラス0.4%の値を示している「週刊アサヒ芸能」。その奮戦ぶりの事由として前回取り上げたのが『めしばな刑事タチバナ』。いわゆるB級、さらにはC級グルメが熱く語られる漫画だが、飲食物がすべて実名で登場することもあわせ、読者の「あるある感」が非常に強く、多くの人の共感を集めている。2010年末から連載を開始し、口コミなどで昨年中旬から注目を集め始めており、週刊アサヒ芸能の印刷部数の堅調動向とほぼ一致する。さらに先日【テレビ東京内の番組ページ】にある通り、2013年4月10日からテレビドラマ化が決定。主演の立花刑事は佐藤二朗氏が演じることとなる。この時間帯は2012年に2期に渡り放映された「孤独のグルメ」と同じドラマ枠で、テーマも似通ったもののため、大いに話題を集めるに違いない。当然「週刊アサヒ芸能」にもプラスの影響を与えるだろう。

同じプラス値の雑誌では「FRIDAYダイナマイト」も気になるが、こちらはたまたま前年同期が5000部ほど部数を減らしていたため、その反動に過ぎない。今四半期の18万部は、この一年強ほどの間継続してのものである。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期も状況は変わらずあまり良くない。その中でプラスを示した雑誌のうち目に留まるのが、前四半期から続いて堅調な「初めてのたまごクラブ」。今誌は季刊誌で該当期間に発売されたのは1誌のみ。「妊娠がわかったら最初に読む本」をコンセプトに掲げ、毎回役立つ小物や小冊子などの付録が魅力的。また【「初めてのたまごクラブ」公式サイト】を見ると、同社類似他誌との巧みな連動性(「子育て」をテーマにするという雑誌の性質上、連動するのは当然の話)や関連商品の情報提供など、多種多様の切り口で相乗効果を測っている工夫が見て取れる。現時点では数少ない、この分野での成功事例として評することができる。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食をする人が増え、需要も強まるばかり。しかし全般的に軟調なのは前四半期と変わらず。インターネット、とりわけモバイル系端末経由の情報提供サイトに読者を奪われている可能性は高い。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績
↑ (参考)レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績

今四半期では前年同月比でマイナス5%を超えたのが2誌。特に「オレンジページ」のマイナス17.2%が辛い。部数はまだ30万部台前半だが、早急に何らのテコ入れが必要であることは間違いない。一方で「栗原はるみ haru mi」は前回同様今回も堅調な動き。「栗原はるみ」というカリスマ的存在が、雑誌の最大の魅力として生き続け、読書を引きつけているに違いない。また「レタスクラブ」だが、データ掲載経歴が比較的浅いものの、その中では部数を減らすことも無く現状維持を果たしている。

エリア情報誌。こちらも苦境は続く。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

前回唯一マイナスとならなかった「北海道ウォーカー」も、今回はマイナス圏、しかも5%超。これで該当誌はすべて赤塗り(前年同期比マイナス5%超)となった。昨年12月に発売された四季報の、角川に対する解説の中で「全国6地区の雑誌『ウォーカー』は3地区に縮小」との文言も確認でき(現時点で角川側から正式な発表は無し)、今後の動向が気になるところ。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、しばしば対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数(万部)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)

今回は前年同期比では「いぬのきもち」の勝利(とはいえ両誌ともマイナス)。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」13.4万部・「ねこのきもち」10.0万部で、こちらは「いぬ」の勝ち。なお両誌とも前四半期比ではプラスを計上そしている。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前解説したように、「小学●年生」シリーズそのものはすでに2誌しか残っていないので、幼稚園関連の雑誌3誌を追加した上でグラフ化している(今グラフに限り、雑誌の並びは変化率では無く雑誌特性に沿う形にしてある)。

「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年10-12月、前年同期比)

今回も前回同様、「小学一年生」「小学二年生」共に大きくマイナスを示している。今件は「前年同期比」によるもので、季節属性に伴う影響は無く、純粋に「勢いの減退」を感じざるを得ない。特に「小学一年生」は節目となる10万部を割り込んでおり、通例ならば入学関連で盛り上がる次四半期での動きが気になるところ。

一方幼稚園系3誌のうち「たのしい幼稚園」は今回も他誌と比べれば大人しい下げ方に留まっているが、「幼稚園」「入学準備学習幼稚園」は苦しい値が出ている。この動きはなかなか止められないのだろう。



以上ざっとではあるが、いつものように各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移のグラフ化を行った。料理誌のようなごく一部の例外をのぞき、ほとんどが前年同期で大きな下げ幅でのマイナスを示している。

今回取り上げた業界専門誌の領域(料理や育児など比較的ハードルが低い、一般向けの業界)は、デジタル系ツールとの組合せで、紙媒体としての魅力を活かしつつ、多くの人から注目を集められる可能性を十分に秘めている。例えばAR(Augmented Reality(拡張現実・強化現実))を利用するなど、今だからこそ出来る挑戦もある。急速に普及率が上昇しているスマートフォンやタブレット機との連動は、工夫次第で雑誌の魅力を何倍にも引き立てることが期待できる。

市場を取り巻く環境が複数要因で大きく変化しているのは否定できず、当然これまで通りの切り口は通用しない。その事実をあらためて認識し、その上で各誌とも前進してほしいものだ。

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