内容が受けて「COURRiER Japon」が伸びる…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2012年10月-12月)

2013/02/28 15:45

【社団法人日本雑誌協会】は2013年2月19日、2012年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項は一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2012年の10-12月期とその前期、2012年7-9月期における印刷実績を確認する。

2012年7-9月期と2012年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2012年7-9月期と2012年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今回は前四半期でデータが消えた「\en SPA!」が再び復帰した。【「\en SPA!」の公式サイト】は現在も更新中で、期間中の発売号も『2012年12月6日のものを見つけることが出来る』。アマゾンでは「不定期版」との記述が確認できることから、不定期発行のスタイルとなったため、前四半期では該当期日内での発売が無く、部数計上が出来なかったのかもしれない。

お馴染みのメンバーの中においては、【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年10月-12月データ)】の週刊少年ジャンプの「群を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「PRESIDENT(プレジデント)」が断トツで印刷部数が多い。第2位以降の雑誌がトップと順位を入れ替えるには、相当の努力が必要になる。

続いて各誌の四半期間の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化が生じたのかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られない。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年10-12月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年10-12月、前期比)

前回とは大きな差異は無いが、5%超の下げ率を示した雑誌が2誌存在するのは痛い話ではある。

他方大きな伸び率を示すのが「COURRiER Japon」。概要説明に「世界1500のメディアから情報を厳選する『国際標準マガジン』 」とあるが、単に情報を展開するだけでなく専門家・有識者の見解を盛り込んで記事化しており、仕事周りの提言的・具体性を有する話が多く、読み応えのある記事が多数見受けられる。特に該当期間号では「仕事そのものの環境変化」の問題解説、そして2013年2月号ではアマゾンCEOの話など、興味深く濃い内容が多い。ビジネス系雑誌が軒並み部数を減らす中、同誌が安定的な数字を維持しているのも、その質の高さを支持する固定層によるものといえる。

COURRiER Japon印刷証明付き部数
↑ COURRiER Japon印刷証明付き部数

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年7-9月、前年同期比)

前年同期比でも前期比と大きな違いは無い。「COURRiER Japon」は直上グラフにある通り、今四半期でやや大きな上昇を記録しており、これが前年同期比でもプラスに働いている。また「\en SPA!」は今回のデータ再登場で前年同期比が算出できるようになり、グラフ中に顔を見せているが、この限りでは減少傾向には歯止めがかかりつつあるようだ。



2008年秋の「リーマンショック」で多くの人が経済情報・動向に注目した時期がこの数年間(多分に「今世紀に入ってから」と表現できるかも)におけるピークとなる形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトへの(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加はゆるやかなものとなり、あるいは減少に転じている。しかしパソコン、そして携帯電話やスマートフォン、タブレット機など各種モバイル情報端末からアクセスできるインターネット、特にソーシャルメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速を続けている。

特に時間・分単位で情勢が変化する経済系のジャンルでは、記事の作成から読者の手に届くまでの間に大きな時間差が生じる紙媒体の雑誌の不利さは、他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)とは比べ物にならないくらい大きい。スピード感で例えれば、インターネット系媒体は紙媒体における「号外」(しかも読み手が希望すれば、すぐにでも手元に届く)を逐次配信しているようなもの。昨今では、即時対応ができる今ジャンルのインターネット上での情報展開は、ますますその重要度を増しつつある。

かたくなに古い体制を固持するのでは無く、現状を正しく認識・分析し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みはどのようにすれば構築できるか」といった雑誌作りの原則に立ち返り、同時に「新メディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いか」との模索をすること。その際に固定概念や既得権益にとらわれることなく、先を見据えて柔軟な発想を行うこと。さらに答えを見つけ出したら躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が早急に求められている。

そして同時に金融経済系に限らず、すべての雑誌、さらにはコンテンツ系事業には欠かせない「品質の維持向上」も忘れてはならない。時節をとらえるのはいいが、あおりや過剰表現で集客を図っても、一時的なものでしかなく、長期的にはさらに自らの価値をおとしめてしまいかねない(ただしこの手法は容易に可能なため、多くの雑誌が手を下してしまいがち)。今回随所で触れた「COURRiER Japon」は、その点での具体的な良質系サンプルとしてチェックを入れたいところだ。

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