「ファミ通DS+Wii」の「森」特需は継続、他誌から群を抜く伸び…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2012年10月-12月)

2013/02/26 07:55

【社団法人日本雑誌協会】は2013年2月19日、2012年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さの観点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値である。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項は一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付き。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたもので、雑誌社側の公称(=自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる場合もあるが、その際は個別で説明する。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2012年の10-12月期とその直前期2012年7-9月期における印刷実績を見ることにする。

2012年の7-9月期と2012年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2012年の7-9月期と2012年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

前四半期と比べて随分と騒がしくなった今グラフ。1年ほど前に一斉にデータを非公開化した角川グループパブリッシングのうち4誌、具体的には「マック・ピープル」「アスキー・ドット・ピーシー」「電撃PlayStation」「週刊アスキー」のデータ開示が再開された。現時点では前四半期の値は当然無く比較もできないが、ありがたいことに違いは無い。

印刷部数そのものの絶対値としては、やはり「Vジャンプがずば抜けた売上」「アニメ系ではニュータイプがトップ」の二つが印象的。そして前期と比べると、一部を除いて前期比ではマイナスが多い(青より赤が短い)雰囲気。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年10-12月期、前期比)

今四半期は前四半期以上に低迷下の様相を呈している。赤着色(前期比で5%超の下げ)の棒グラフを形成する雑誌が多く、スリリングな状況(前回が4誌なのに対し今回は倍の8誌)。一方で前回唯一5%超のプラスを見せた「ファミ通DS+Wii」は、今回も見事にプラス。しかも2ケタ台。

これは2012年11月8日に発売されたニンテンドー3DS用ソフト『とびだせ どうぶつの森』の記事の影響によるもの。いわゆる「どうぶつの森特需」といったところ。特に2013年2月号の付録「とびだせどうぶつの森 まめつぶカタログガイド」は評価が高く、絶賛に近い声が多数寄せられている。

一方「コンプティーク」の下げ方が気になる。最初のグラフにある通り、実売数ではこの四半期で7000部強を落としている。前四半期でもそれ以上の部数減が確認されており、急速な部数減退の真っただ中にある。連載陣の入れ替わりが激しいとの話はあるが、ここまでの急な減り方の原因は不明である。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2012年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2012年10-12月期、前年同期比)

状況としては「前期比」とさほど変わりない。「Vジャンプ」の下げ方が気になる位。季節変動などとは関係なく、この分野での専門誌の多くが、か細いロープによる綱渡り状態にあることが分かる。

以前【「ゾッ」とするかな...? 三大アニメ誌の動向】で紹介した三大アニメ誌「ニュータイプ」「アニメージュ」「アニメディア」では、印刷部数そのものでは「ニュータイプ」「アニメディア」に及ばないものの、「アニメージュ」が奮闘しているのが確認できる。とはいえ部数を落としていることに違いは無く、今業界専門誌が岐路に立たれているのも否定できない。

「アニメージュ」や「PASH!」など、コア層色が強いものは、今回も上位に多く位置しているか、下げ率を最小限(誤差の範囲)のものに留めている。これらは読者として設定している層への積極的かつ需要に応えた雑誌構成や付録提供が、現状維持・堅調化に表れていると見てよい。特に「PASH!」は印刷証明部数の絶対値としては他誌に比べると小さめ(直近では3.0万部)だが、半年ほど前に隔月刊から月刊への飛躍を遂げており、数少ない前進事例(通常はセールスが思わしくなく、逆の事例として月刊から隔月刊のパターンとなる)として注目できる。



今期における「前年同期比」の比較対象となる2011年10-12月は、震災の直接影響を考慮する必要はほぼ無くなっている。またゲーム・エンタメ業界の専門誌にブレーキをかけるような突発的事象も見当たらない。そのような状況で前年同期比マイナス10%超の悪化が6誌という結果は、業界全体の業況悪化を意味している。

一方で「PASH!」に代表されるような、上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動した読者層のニーズを適切につかみ、そのニーズに応えるコンテンツの提供」「自社、自雑誌の『資産』の有効活用」が際立つ傾向がある。それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばし、あるいは減少を最小限に留めている。

他方今回大いに上昇が確認できた「ファミ通DS+Wii」の場合は「特需」的傾向が強く、普遍的な流れ・法則を見出しにくい。あえて言えば「金脈をとらえられるように身構え、つかんだらそれを最大限に活かせる体制を常に維持する」ことだろうか。あまりにも大まか過ぎる話だが、専門誌の中には可能性の高い素材を目の前にしながら、みすみす逃してしまう事例も少なからず見受けられる。

不景気で可処分所得が減り、さらにスマートフォン・携帯電話のようなモバイル情報端末や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間と可処分所得を奪われる。ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、情報発信のスピード感では劣る、紙媒体としての雑誌の必要性も薄れている。とりわけスマートフォンや電子書籍リーダーの普及は、「機動性の高い娯楽」(例えば雑誌、携帯ゲーム機)に大きな打撃を与えている。スマートフォンの浸透が主に若年層から進んでいることを考えれば、エンタメ市場に与える影響は、加速度的といえる。

限られたお金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「他には無い特別な一品」「紙媒体として手元に残しておきたい魅力あるもの」に見える個性的な雑誌を創らねばならない。ありがちな内容では、「その他諸々」扱いされ、入手ハードルが低い新媒体にお客を奪われる。

もちろん、いくら専門誌とはいえ、「読者の需要をひたすら深く追求する」だけを求めるのも困りもの。一定数量を販売する(=一定数の不特定多数から成る人達に支持される)商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない(その「ノリ」が通じる「市場」が、雑誌を支えるのに十分な力を持っているのなら話は別だが)。

印刷部数上でプラスを示す、あるいは安定的な売り上げを維持している雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、前進し続けている。上位陣の雑誌をくまなく読み解くことで、不調著しい雑誌業界における状況改善策のヒントが見いだせるに違いない。

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