媒体別金額と前年比、経年変化動向…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(2013年発表)

2013/02/23 14:00

先に【電通資料を基に過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる(2012年分反映版)】でお伝えしたように、電通(4324)は2013年2月23日、日本の広告費に関する調査報告書を発表した。それによると、電通推定による2012年の日本の総広告費は前年比3.2%増の5兆8913億円であることが明らかにされた。景気低迷による企業の予算縮小や円高、東日本大地震・震災をはじめとした各種災害の影響を受けて広告の出稿も減少していた昨今だが、5年ぶりに前年比プラスの値を計上している。今報告書では広告業界に関する多種多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのにはよい資料といえる。今回は主要項目のいくつかをグラフ化し、直近1年間、つまり2012年の状況把握の容易化を試みることにした(【発表リリース、PDF】)。

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まずは2012年の広告費における前年比。2011年から2012年の間に、各媒体で広告費に関してどのような動きがあったかがよく分かる。

↑ 2012年媒体別広告費前年比
↑ 2012年媒体別広告費前年比

景気後退と震災の影響でダイナミックな下げを見せ、「インターネット広告」と「衛星メディア関連」の上昇突出ぶりが一目瞭然だった2011年とは対照的に、ほとんどの項目が上昇している。これは景気回復基調の他、比較対象となる2011年の額面があまりにも低かったのが主要因。先の記事でも記した通り、「前年」比では大きくプラス化しているが、ほとんどの項目では(額面上は)2010年水準までに戻していない。2010年と比べて増加しているのは「インターネット広告」「衛星メディア関連」以外では、「テレビ」「交通」「POP」のみである。

続いて前年比ではなく、絶対金額のグラフ。

↑ 2012年媒体別広告費(億円)
↑ 2012年媒体別広告費(億円)

既存4大媒体(4マス)、中でも「テレビ」が未だに大きな広告費を占めているのがひと目で分かる。「プロモーションメディア広告費」を全部合わせてどうにか対抗できる水準。また、金額の面で「インターネット広告費」全体が「新聞」を抜き、「テレビ」に次ぐ金額を見せている。しかも大体半分位の水準。以前【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2012年7月まで対応版)】にて「経済産業省の特定サービス産業動態統計調査」の結果動向で確認した動きと同じであり、この流れはメディアの変化の一つと考えることができる。

経年変化を眺めてみよう
直近における個々の項目の金額はこれらのグラフで分かるが、広告費全体に占める比率や金額そのものの推移がどのようなものかも気になる。広告費の面から見たパワーバランス、広告出稿側のウェイト配分などが概算できるからだ。そこで過去のデータや今回発表された数字を基に、経年推移をグラフ化する。

今回公開されている範囲は2004年から2012年まで。さらに2004年と2005年の間で広告費の区分などの変更が行われているため、厳密にはその間前後のデータに継続性は無い。参照程度ということで認識してほしい。また、2000年以前のものもサルベージをすればデータを反映させることは可能だが、2001年より前のものはインターネット広告などの項目が無いに等しいため、省略する。

まずは単純に金額を積み上げたグラフ。今世紀に入ってからは、2007年が天井で、あとは景気後退と共に広告費そのものも減退していることが分かる(2011年はそれに加えて震災起因とする減少)。そして特に「新聞」や「テレビ」が大きくその額を減らしているのも確認できよう。もっとも2012年はわずかだが合計額を積み上げている。トレンドの転換、回復の兆しとしての読みも出来る。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2012年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2012年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

「プロモーションメディア広告費」(黄緑色)が2004-2005年の間に大きく上昇しているのは、区分の変更で色々と追加がされているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長したわけではない。また、すでに複数の記事で触れているが、中期的に「新聞」や「雑誌」など紙媒体が大きく落ち込んでいるのが分かる。これは【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(総世帯版)(2011年分まで反映)】などで解説しているように、購入層そのものの減少による媒体力の低下「も」大きな要因(「も」としたのは、部数減少だけではなく、全体的な質の低下も要因のため)。また、一部には媒体側がインターネットへの傾注度合いを増した面も影響している。

既存4大メディア(4マス)、すなわち「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」の「広告費」という観点からの影響力の変化が分かるのが次の図。広告費全体に占める、それぞれのメディアの構成比を100分率でグラフ化したもの。やはり2004-2005年の継続性は無い。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2012年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2012年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

既存4大メディアを黒枠・青系統色で装飾したが、その部分が2004-2005年以降じりじりと、しかも確実に減少していくのが手に取るように分かる。それ以前も小さな減退傾向は見られたが、この区分変更以降、はっきりと確認できる。

2004年-2005年に大きな変化があることから、「区分変更が要因では?」とも思えてしまう。しかし同じタイミングで増加している項目が上昇面でホープの「インターネット広告」「衛星メディア関係」なので、納得もいく。また、4大既存メディアでは「テレビ」が唯一シェアを継続して伸ばしており、4マス中では他の媒体との色合いの違いが見て取れる。

シェアだけで動向を見ると、「インターネット」「衛星メディア」が積極的な攻め、「テレビ」が消極的な攻勢、「新聞」「雑誌」「ラジオ」「プロモーションメディア広告」が守勢に回っているように見えてくる。



数少ない出世候補といえる「インターネット」「衛星メディア関係」だが、成長の伸びしろは大きいものの、その市場規模はまだ小さい。「インターネット」はようやく「テレビ」の半分程度にまで成長したが、「衛星メディア関係」と合わせても広告費全体の2割にも届かない。2012年は幸いにも他の項目も前年比で上昇するものが多く、総広告費もプラスに転じたが、広告を出稿する企業側のお財布事情が厳しい、そして選択眼やコスト意識にも敏感なのはいつもの通り。既存のものより効果測定がしやすい媒体があれば、そちらに配分を増やす動きを見せるのも納得は行く。

もちろん旧来の広告メディアが消失することなどありえない。しかし、世相や技術の流れを見極め、追随する形で進化をしなければ、相対的・絶対的なコストパフォーマンスは落ち、魅力も減退する。2005年前後から顕著化した、広告費の構造変化は今後も継続していくに違いない。最後のグラフにあるシェア比において、「インターネット広告」と「衛星メディア関連広告」の合計が、「新聞」「雑誌」「ラジオ」の合計を超えるのは、いつになるだろうか。速ければ2013年分の値で達するかもしれない。

なお余談だが、例えば「雑誌」の区分範囲は「全国月刊誌、週刊誌、専門誌の広告料および雑誌広告制作費」とある。そしてインターネット広告費は「インターネットサイトやアプリ上の広告掲載費および広告制作費(バナー広告等の制作費および企業ホームページの内、商品/サービス・キャンペーン関連の制作費)」と定義されている。企業が同じ出版社への広告を出稿する際に、紙媒体としての雑誌から、同雑誌のオンライン上に移行した場合、雑誌社に入る広告費は同じでも、今件統計のデータ上では「雑誌……マイナス」「インターネット……プラス」との動きを見せることになる。「雑誌」の急下降ぶりには幾分なりともこの動きがあることを付け加えておく。


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