総広告費は6兆5300億円・4マス揃ってマイナス、インターネットは1割を超える伸び…過去30年あまりの媒体別広告費動向(最新)

2019/03/03 05:06

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2019-0302電通は2019年2月28日、日本の広告費に関する調査報告書「2018年 日本の広告費」を発表した。それによると、電通推定による2018年の日本の総広告費は前年比2.2%増の6兆5300億円であることが明らかにされた。いわゆるサブプライムローンショックに始まる世界同時金融危機・不況で広告費が大きく減少した2008年以降、リーマンショック、さらに東日本大地震・震災の影響を受けて続いていたマイナス基調からようやくプラスに転じた2012年分以降7年連続し、前年比プラスの値を計上することができた。今報告書は広告業界に関する多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのには適した資料である。今回は1985年以降の主要メディア毎の広告費の移り変わりに関して、グラフを生成した上で概況の精査を行う(【発表リリース:2018年 日本の広告費】)。

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リーマンショック後確実に復調する広告業界、二極化する内部成長構造


今回発表された資料によれば、2018年の広告費は前回年から続き前年比でプラスとなるプラス2.2%の6兆5300億円を示した。大別区分で金額動向を見ると、前年比プラスはインターネット広告の2495億円プラスのみで、それ以外はすべてマイナス。新聞の363億円のマイナスが一番大きなマイナス幅となる。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2014-2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2014-2018年)

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)

↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2018年)

2018年は先行き不透明感の強い世界経済や度重なる自然災害の到来、個人消費の弱さなどの足を引っ張る要因は多々あったものの、企業収益の堅調さが後押しする形で広告費へのリソース配分の思惑も高まりを見せ、全体としては前年比でプラスを計上した。他方、広告メディアにおける技術革新、特にデジタル化への影響も大きなものとなり、進化の波に乗るメディアには広告費の投入が積み増しされ、立ち遅れたメディアへの投入が縮小するという、ある意味酷な結果が数字となって表れた。具体的には主要広告媒体の4マスすべて、さらに屋外広告や交通広告などの一般広告を包括するプロモーションメディア広告までもが前年比でマイナスを計上する一方で、インターネット広告だけが大きく伸張する形となった。

前年となる2017年では軟調な動きを示したメディアもあることから、その反動も考慮するために2年前比を試算したが、4マスすべてとプロモーションメディア広告がマイナスであることに変わりは無い。直近の2018年も含めたここ1、2年の総広告費の堅調ぶりは、事実上インターネット広告がけん引しているものと判断できる。総広告費はプラス3.8%(年換算でプラス1.9%)。リーマンショック後、震災を乗り越え、景況感の回復とともに額面では確実に復調しつつある広告業界全体と、その波に乗れないメディアの動向が顕著に表れる状況が見て取れる。

伸びるメディアと減退するメディアと…1985年以降の動向を確認する


今資料では1985年以降の主要媒体別の広告費一覧(あくまでも電通の推定によるものだが)も掲載されている。その値をグラフ化したのが次の図。なお2014年分から既存の地上波テレビと衛星メディアが統合されテレビメディアとして扱われることになったため、過去の値も逆算した上で反映させている。

↑ 媒体別広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)
↑ 媒体別広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)

計測基準の変更により、2004年と2005年との間では厳密には連続性は無い(雑誌、インターネット広告、プロモーションメディア広告の3項目で差異が生じ得る)。特にプロモーションメディア広告では変更年前後に大きな差異が生じている。突然、該当広告部門に大規模な変化が生じたわけでは無いので注意が必要。

中長期の動向をグラフ化すると、(連続性を欠いた部分は別にしても)オーソドックスなプロモーションメディア広告はそれなりに順調な伸びを示していたが、2007年の金融危機勃発以降は下降傾向にあったことが分かる。そして今世紀に入ってから順調に成長を見せているのはインターネット広告のみとなる。テレビメディアは横ばいの動きに見えるし、プロモーションメディア広告は緩やかな下落の動きを示している。

雑誌は2005年に少々ふくらんだようにも見えるが、これは上記で触れたように連続性の寸断によるもので、むしろその差分が生じたあとは下げ幅を拡大している。2011年あたりからは2500億円内外を推移し、ようやく底を打ったところかと思いきや、2015年では再び大きく下げてしまい、その後も失速中。新聞は多少の起伏はあるが1990年代前半にピークを迎えた以降は横ばい、震災でイレギュラーな下げ方を見せたあとやや戻したが、2000年以降は概して継続した減少のさなかにある。テレビメディアは1990年代後半にピークを迎えたあとに横ばい、2009年から2010年にようやく底打ち感があり、その後回復の動きを示したものの、早くも天井感。高齢層の増加に伴う後支えはあるものの、これ以上の増加は望み難い。

伸び悩んでいる媒体に共通しているのは、1990年代後半(媒体によっては前半)にピークを迎えたあと(広告費の)成長が止まっており、 2002年から2003年あたりから下げ基調を見せていること。この下げ基調の時期は携帯電話やインターネットの普及など、新メディアが世間一般に浸透し始めた時期と一致する。利用者のメディア移行に伴い、広告出稿側も注力・広告費配分のバランス調整を行い、その結果が出たと見るのが無難ではある。

前年比を算出し勢いを確認する


次の図は、各メディア毎の広告費の前年比推移。1枚目に示すのは全項目を対象としたものだが、あまりにも起伏が激しいインターネット広告のために、他の項目がほとんど確認できなくなってしまった。そこでインターネット広告を除いて再構築したのが2枚目のグラフ。後者には名目GDPの動向も追加している。さらに計測基準の変更に関する影響が及ばない、かつインターネット広告の大きな値によるグラフのゆがみも生じない2006年分以降も併せて掲載する。

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、インターネット除く、前年比)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、インターネット除く、前年比)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)(2006年以降)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(電通推定、前年比)(2006年以降)

2004-2005年の間で連続性を欠いているため、その部分の起伏がイレギュラーな形(突出する形で大きなプラス)をしているが、それをのぞけば前世紀(20世紀、-2000年)までは各広告費は名目GDPの変化とほぼ連動する形をとっていたのが分かる。

しかし21世紀に入ってからは主要4マスにおいては「上昇時期における」連動性を失い、一貫して下げ基調にあることが分かる。これは民放連側が指摘していたのと同じ結果・動向である。しかもその一方、2007年に始まる直近の金融危機に伴う名目GDP下落傾向時にはともに落ちており、主要4マスの広告費は「上げる時には伴わず、下げる時には一緒に下がる」状況にある。

この数年ではかろうじてテレビメディアやラジオがGDPとの連動性の回復の兆しが見えた程度。しかし直近の2018年ではGDPがプラスなのに対し、それらもマイナスを示してしまっている。他方、新聞や雑誌は厳しい状況に変わりが無い。



「広告費全体が削られているから4マス、既存メディアの広告費も減っている」との主張がある。しかしそれはさほど筋が通らない。発表資料には総広告費も掲載されており、それによれば総広告費は名目GDPの伸びにほぼ連動する形(起伏率は名目GDPより総広告費の方が大きい)で上昇。1985年と比べると2018年のそれは8割強の増加を示している。

↑ 総広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)
↑ 総広告費と名目GDPの移り変わり(電通推定、左軸:GDP・右軸:総広告費、億円)

また、この数年の動きをよく見直すと、冒頭でも言及している通り、新メディアの伸長に伴い、広告を出稿する側の企業による各広告メディアに対するバランス調整が行われているのが確認できる。詳しくは別の機会に譲ることにするが、新メディアとして成長を続けるメディアと、相対的・絶対的広告力が漸減するメディアとの間で、各企業による広告費のウェイトが明らかに変化しつつある(経産省の特定サービス産業動態統計調査からもその動きは確認できる)。昨今の金融危機や震災もまた、それらの動きを加速する一つの出来事に過ぎないと考えれば、この動きも容易に理解できよう。


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