総広告費は6兆1710億円・インターネットは1割強の伸び…過去30余年の媒体別広告費動向(2016年)(最新)

2016/02/27 10:15

電通は2016年2月23日、日本の広告費に関する調査報告書「2015年 日本の広告費」を発表した。それによると、電通推定による2015年の日本の総広告費は前年比0.3%増の6兆1710億円であることが明らかにされた。いわゆるサブプライムローンショックに始まる世界同時金融危機・不況で広告費が大きく減少した2008年以降、リーマンショック、さらに東日本大地震・震災の影響を受けて続いていたマイナス基調からようやく転じた2012年分以降4年連続し、前年比プラスの値を計上することができた。今報告書は広告業界に関する多種多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのには適した資料である。今回は1985年以降の主要メディア毎の広告費の移り変わりに関して、グラフを生成した上で概況の精査を行う(【発表リリース:2015年 日本の広告費】)。

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リーマンショック後確実に復調する広告業界、二極化する内部成長構造


今回発表された資料によれば、2015年の広告費は前回年から続き前年比でプラスとなるプラス0.3%の6兆1710億円を示した。上昇金額を見ると大別区分では「インターネット広告」がトップの1075億円プラス、それ以外はすべてマイナスで、「新聞」の378億円マイナスが一番大きなマイナス幅となる。「新聞」は前年では唯一の前年比マイナスを計上しており、継続する軟調さが改めて認識される動きとなっている。

↑ 媒体別広告費(2011-2015年)(単位:億円)(電通推定)
↑ 媒体別広告費(2011-2015年)(単位:億円)(電通推定)

↑ 媒体別広告費(2015年、前年比)(電通推定)
↑ 媒体別広告費(2015年、前年比)(電通推定)

前年2014年はソチオリンピックやワールドカップ・ブラジル大会、消費税率引上げ直前の駆け込み需要などが広告費を底上げしたこともあり、その反動も影響し、2015年の前年比は伸び悩みを見せる形となった。2年前比を試算すると、「インターネット広告」はもちろんだが「ラジオ」「テレビ」もプラスを計上している。マイナスは「新聞」「雑誌」「SP広告など」。総広告費はプラス3.3%(年換算でプラス1.6%)。リーマンショック後、震災を乗り越え、景況感の回復と共に額面では確実に復調しつつある広告業界全体と、その波に乗れない一部メディアの動向が顕著に表れる状況が見て取れる。

伸びるメディアと減退するメディアと…1985年以降の動向を確認する


今資料では1985年以降の主要媒体別の広告費一覧(あくまでも電通の推定によるものだが)も掲載されている。その値をグラフ化したのが次の図。なお2014年分から既存の「地上波テレビ」と「衛星メディア」が統合され「テレビメディア」として扱われることになったため、過去の値も逆算した上で反映させている。

↑ 媒体別広告費とGDPの移り変わり(1985-2015年)(単位:億円)(右軸:名目GDP)(電通推定)
↑ 媒体別広告費とGDPの移り変わり(1985-2015年)(単位:億円)(右軸:名目GDP)(電通推定)

計測基準の変更により、2004年と2005年との間では厳密には連続性は無い(雑誌、インターネット広告、SP広告/プロモーションメディア広告の3項目で差異が生じ得る)。特に「SP広告(Sales Promotion広告。主要4マスと衛星メディア、インターネット広告「以外」の広告。DMや屋外、交通など)/プロモーションメディア広告」では変更年前後に大きな差異が生じている。突然、該当広告部門に大規模な変化が生じたわけではないので注意を要する。

中長期の動向をグラフ化すると、(連続性を欠いた部分は別にしても)オーソドックスな「SP広告/プロモーションメディア広告」はそれなりに順調な伸びを示していたが、2007年の「金融危機」勃発以降は下降傾向にあったこと、今世紀に入ってから順調に成長を見せているのは「インターネット広告」、そしてここ数年に限れば「テレビメディア」「SP広告/プロモーションメディア広告」が加わることが分かる(ただしテレビは21世紀初頭の水準には今なお戻していない)。

「雑誌」はそれでも2005年に少々ふくらんだようにも見えるが、これは上記で触れたように「連続性の寸断」によるもので、むしろその差分が生じたあとは下げ幅を拡大している。ここ数年は2500億円内外を推移し、ようやく底を打ったところかと思いきや、2015年では再び大きく下げてしまう。「新聞」は多少の起伏はあるが1990年代前半にピークを迎えた以降は横ばい、震災でイレギュラーな下げ方を見せたあとやや戻したが、2000年以降は概して継続した減少のさなかにある。「テレビ」は1990年代後半にピークを迎えたあとに横ばい、ここ10年ほどは落ち込みを継続、2009年から2010年にようやく底打ち感があり、直上にある通りこの数年では少しずつ復調機運にある。2015年ではやや後戻りをしてしまったが、高齢層の増加に伴う後支えがあることを考慮すると、2007年来の2兆円台への回復も夢ではない。

「伸び悩んでいる媒体」に共通しているのは、1990年代後半(媒体によっては前半)にピークを迎えたあと(広告費の)成長が止まっており、 2002年から2003年辺りから下げ基調を見せていること。この「下げ基調」の時期は携帯電話やインターネットの普及など、新メディアが世間一般に浸透し始めた時期と一致する。利用者のメディア移行に伴い、広告出稿側も注力・広告費配分のバランス調整を行い、その結果が出たと見るのが無難ではある。

前年比を算出し勢いを確認する


次の図は、各メディア毎の広告費「前年比」。最初に示したのは全項目を対象としたもの、あまりにも起伏が激しい「インターネット広告」のために、他の項目がほとんど確認できなくなってしまったため、それを除いたのが2枚目のグラフ。後者には名目GDPの動向も追加している。さらに計測基準の変更に関する影響が及ばない2006年分以降も合わせて掲載する。

↑ 媒体別広告費の移り変わり(1985-2015年)(前年比)(電通推定)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(1985-2015年)(前年比)(電通推定)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(1985-2015年)(前年比)(電通推定)(インターネット除く)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(1985-2015年)(前年比)(電通推定)(インターネット除く)

↑ 媒体別広告費の移り変わり(2006-2015年)(前年比)(電通推定)(インターネット除く)
↑ 媒体別広告費の移り変わり(2006-2015年)(前年比)(電通推定)(インターネット除く)

2004-2005年の間で連続性を欠いているため、その部分の起伏がイレギュラーな形(突出する形で大きなプラス)をしているが、それをのぞけば前世紀(20世紀、-2000年)までは各広告費は名目GDPの変化とほぼ連動する形をとっていたのが分かる。

しかし21世紀に入ってからは主要4マスにおいては「上昇時期における」連動性を失い、一貫して下げ基調にあることが分かる。これは民放連側が指摘していたのと同じ結果・動向である。しかもその一方、2007年に始まる直近の金融危機に伴う名目GDP下落傾向時には共に落ちており、主要4マスの広告費は「上げる時には伴わず、下げる時には一緒に下がる」状況にある。

この数年ではかろうじて「テレビ(メディア)」がGDPとの連動性の回復の兆しが見える程度。しかもそれも直近の2015年ではくつがえされてしまう。他の3メディアは一層辛い状況に変わりがない。



「広告費全体が削られているから4マス、既存メディアの広告費も減っている」との主張がある。しかしそれはさほど筋が通らない。元データには総広告費も掲載されており、それによれば総広告費は名目GDPの伸びにほぼ連動する形(起伏率は名目GDPより総広告費の方が大きい)で上昇。1985年と比べると2015年のそれは8割近い増加を示している。

↑ 総広告費とGDPの移り変わり(1985-2015年)(単位:億円)(左軸:名目GDP、右軸:総広告費)(電通推定)
↑ 総広告費とGDPの移り変わり(1985-2015年)(単位:億円)(左軸:名目GDP、右軸:総広告費)(電通推定)

また、この数年の動きを良く見直すと、不況に伴う広告費そのものの削減を良い機会ととらえ、各企業による広告メディアに対するバランス調整が行われているのが確認できる。詳しくは別の機会に譲ることにするが、新たなメディアとして成長を続ける媒体と、相対的・絶対的広告力が漸減する媒体との間で、各企業による広告費のウエイトが明らかに変化しつつある(経産省の特定サービス産業動態統計調査からもその動きは確認できる)。昨今の金融危機や震災もまた、それらの動きを加速する一つの出来事に過ぎないと考えれば、この動きも容易に理解できるよう。


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