4マス軟調、テレビは例外的にプラスとなりよい動き(電通・博報堂売上:2013年1月分)

2013/02/13 11:30

博報堂DYホールディングス(2433)は2013年2月12日、同社グループ主要3社の2013年1月における売上高速報を発表した。これで電通(4324)が同年2月8日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2013年1月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、両社それぞれの広告売上動向を検証すると共に、広告業界全体の動きを推測する。

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グラフを作るために取得したデータに関する解説、各項目の留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で記述している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2013年1月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年1月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではすでに終息。そして昨今では震災以前からの広告業界・メディアのトレンドを継続する形が続いている。中期的な概況としては「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っているものの、テレビがやや復調の兆しあり(対象層高齢化が一因か)」「デジタル系、そして屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」というもの。特にこの数か月においては「その他」項目が強い動きを示している。

今回月・2013年1月分の特徴としては、「4マス軟調、テレビは例外的によい動き」「インターネットが好調」「従来型はそれなり」の3項目を呈することができる。比較対象となる1年前の状況を示す記事を見ると、インターネットは2011年1月の反動で大きく下げており、その再反動が少なからぬ影響を及ぼしている可能性がある。他方OHH(Out Of Home、屋外広告)は電通プラス・博報堂マイナスの動きで、2013年1月時点で双方マイナスの流れを「昨年の反動」と説明するのは難しい。さらにラジオは2年越しのマイナス継続で、厳しい現実が見て取れる。

現状をさらに把握するため、参考値として電通・博報堂それぞれにおける「一昨年前の値」との比較を算出し、グラフを生成しておく。大きく振れた時の年を越えた「反動」をある程度考えなくても済む、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2013年1月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2013年1月度単体売上(前々年同月比)

博報堂2013年1月度単体売上(前々年同月比)
↑ 博報堂2013年1月度単体売上(前々年同月比)

やはり今回も「その他」のプラスが目に留まる(特に博報堂は昨年同月における50.4%が大きく影響している)。額面も博報堂はともかく電通はそれなりに大きな額で気になるところ。この項目については以前触れた通り、

●「その他」
電通……衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメントその他コンテンツなどの業務が含まれます
博報堂……スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツ等に関する取引が含まれております。

とだけあり、具体的内容・詳細は不明。他項目に特定分類された細々とした案件の集積と考えれば良いが、昨年の同月も同じような傾向を見せていることも合わせて考えると、年末にかけては事業が集中するパターンと見て良い。とはいえ、具体的内容が分からないのはもどかしい面もある。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値だが、これは「個々の会社の前年同月比」。取引額を意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。以前、単純に%の値だけを見て企業規模・各項目の額面を連想する方がいたので、念のために書き加えておく。またこのグラフからは「その他」案件のかなりの大きさがあらためて認識できる。

電通・博報堂HDの2013年1月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2013年1月における部門別売上高(億円、一部部門)

2012年の夏の電力需給におけるひっ迫感はまだ記憶に新しいところだが、今冬もまた、場所によってはそれ以上の「被害」が生じている。「被害」には直接事件事故性のあるものに加え、経済面・雇用面・リスク面における「被害」も多分に含まれる(【続く節電要請・逃げる企業…関電管轄内企業の「今後も節電継続」の場合の対応は?】など参考)。そして現在もなお前政権党の政策による日本経済への傷跡は大きく、電力需給問題は傷を深めながらも、今なお進行中であり、経済に痛手を与え続けている(【火力発電所の燃料消費と調達実態レポート】)。

そのような電力事情下においては、「無駄」と烙印を押されかねない派手な電力消費の動きは自然と自粛され、電力を常用する公的・準公的施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、導入され、稼働率を高めつつある。

新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」も、地震直後のような「電力需給を考慮し全面電源オフ」という状況からは復帰しているものの、積極的な節電の「強要感」は深く浸透し、以前ほどの活力・積極性は見られない。「全国規模で」電力浪費(に見えるのでバッシングを受けやすい)による非難リスクを自然に避ける動きは継続中。デジタルサイネージが撤去されたり、各小売店でも過剰とも見えるまでの、身を削る形での節電状況が随所で確認されている。一方でこのような動きは、売上にマイナスの影響が出かねない。消費者心理の観点では、暗い場面での意思決定は積極性が欠けかねないからだ。

そのような状況においては当然のごとく、電力消費をほとんど伴わない、立て看板をはじめとした従来型野外広告に注目が集まっていく。ここ数か月続いている「従来型広告の堅調さ」も、これら電力事情を主にする社会情勢が影響しているものと見て良い。これからは従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用さらには併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、慣習にとらわれることなく、費用対効果が高く、同時に効果が広告主にも把握しやすい広告手法が求められる。

震災による影響が収まり、各項目が再び本来の力量による動きを見せ始める中、4マス中「テレビ」以外の3項目における軟調さは、それらの媒体における「メディア力」の低下を示している。その低下が「絶対的なもの」か、他メディアと比較しての「相対的なもの」かまでは広告費の動向だけでは断定できないが、少なくとも広告主の視点から厳しい取捨選択が行われていることは間違いない。

経済産業省が毎月提示している広告費データ、こちらは今件電通・博報堂と比べて1か月遅れのものとなるが、それと共に、今後も広告費動向を注意深く見守ることで、メディアそのもののパワーバランスの変化を感じ取りたいものだ。

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