円安株高が奏功…2013年1月景気ウォッチャー調査は現状・先行き共に上昇

2013/02/10 14:00

内閣府は2013年2月8日、2013年1月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて増加したが、水準値50は下回ったままだった。先行き判断DIも先月から続く形で増加し、50以上を維持している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は「景気は、持ち直しの動きがみられる」としている(【発表ページ】)。

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先月に続き現状・先行き共に全項目でプラス
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2013年1月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス3.7ポイントの49.5。
 →3か月連続の増加。「やや良くなっている」が大幅に増加、「やや悪くなっている」が大幅減少。「悪くなっている」も減っている。
 →家計では消費者の購買意欲の改善により上昇、企業動向は円安に伴い、一部業種で受注・採算の改善が見られたことで上昇。雇用関連は製造業での調整の動きがあったが、建設業などで求人が増加したことなどを受けて上昇。

・先行き判断DIは先月比でプラス5.5ポイントの56.5。
 →円安・株価上昇や、新政権の政策への期待感から全部門で上昇。
今月は先月から継続する形で、現状・先行き共にプラスとなった。冒頭の「景気の見方」のコメントも「このところ持ち直しの兆しがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に変わったことからも、具体的な挙動が認識できる。

上昇継続
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では先月に続き、すべての項目がプラス。先月と比べるとサービスの上げ幅が7.5ポイントから1.3ポイントと大幅に縮小し、ブレーキがかかっているのが気になるが、他項目は2-6ポイント台の上昇。基準値の50を住宅・非製造業・雇用関連で超え、他の項目もそれに追随する動きを見せている。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフからは一目瞭然だが、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向を見せていたものの、2008年後半の「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落してしまう。そして2008年12月前後でようやくその動きも落ち着く状態となった。その後2009年初頭以降に大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らなかった。回復するまでのエネルギー(実経済の状況、回答者の心理など)が足りなかったものと考えられる。そしてそれ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月まで)。

そして2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が、単月ではリーマンショックを超える勢い(ほぼ垂直)で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドによるもの。いわゆる「震災特需」の類は一部地域・セクター以外は確認できないため、心理的なものによるところが大きい。

そして「リバウンド」も長続きせず、2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。一時は戻しを見せる気配もあったが、この1年ほどは低迷を続けながら、さらなる下落を模索する形だった。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動か」の懸念がありつつも、回復の兆しが見受けられていた。そしてそれ以降は上昇速度を強め、明らかに景気の回復機運が把握できる動きを示している。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認済み。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
・社会や政治環境の変化で
上昇の動きを示す。
前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んだ。世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化したことにより、互いの数字の下落度合いがズレる余裕すら与えられなかった次第。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

2011年3月の東日本大地震・震災の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちた状況は、「墜落」という表現の方が適切といえる(この状況は「リーマンショック」直後、あるいは「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と同じ)。

地震直前までの流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし東日本大地震・震災がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

震災時の下落からの2011年夏のリバウンドによる「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、2012年に入ってからは円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが同年5月になると欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、半ば期待されていた「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」との観測が吹き飛んでしまった。

そしてこの数か月においては状況の大きな変化と共に、明らかに、実態に裏付けられる形での上昇が確認できる。冒頭の文言も「兆し」から「動き」へと変化しており、本格的なトレンド転換が来たと考えはじめても良いタイミングである。

景気の先行き判断DIも勢いこそブレーキがかかったものの、先月から続いて上昇している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

プラスの最高値は非製造業のプラス6.8。一方で最低の伸び率は住宅のプラス0.4。後者は、先月大きく伸びたことで伸び代が少なくなったのが原因だろう。基準値の50超えは前月の8項目からさらに増え、「合計」も含めて全項目となった。先行きの景況感という観点に限られるが、全項目で景況感にポジティブな心理状態にあることになる。

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすいのが「雇用関連」。金融危機以来に限れば、震災後の反動で大きく上昇したのも一因だが、2011年7月の58.7が天井だった。今回はそれすら上回る58.9を示している。2か月前まで下落基調が続いていたのがウソのようである。

次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば分かるように、「雇用関連」の指数の動きは他の指数に先行する場合が多く、特に「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な下落が起きている事例がある(2001年前半と2008年前半)。2か月前にその「合計値>>雇用関連」という状況が発生したが、今回は早くもその次の月(=先月)に切り返しを見せ、再び「合計値<<雇用関連」という形となった。今月もその状態は維持されており、特にアノマリー的な話を気にしていた人には良い傾向といえる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」先行指数の意味をも再確認させる)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状指数」とほぼ同じ)。そして2011年3月の震災による大幅な下落はリーマンショックの時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕し、針のようなグラフが形成されている。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてそれ以降はリバウンドも十分なものでなく、基準値50付近を迷走していた。現状指数と比べて50を突き抜けることが無かったのは、多分に明るい見通しが見いだせない、材料がない状況だったとも考えられる。

ところが2012年11月以降は、これまでの「50付近での迷走」「さらなる下値への模索」から転じ、大きな上昇を見せている。この点では現状指数をはるかに上回る勢いがあり、今後の動向・変化に期待をする人がどれほど多いか、あるいはこれまでどれだけの圧迫感にあったのか、その思いの強さが見て取れる。

政策方針の転換効果が随所に
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・宝飾時計などの高額品の需要も引き続き堅調であり、今月は特にその傾向が強く表れている。衣料品なども、若干ではあるが、回復感が見受けられる(百貨店)。
・年を越しても客足が衰えていない。接客していて、客の購買意欲を感じる(住関連専門店)。
・天候不順にもかかわらず、来客数が増加し、売上も微増している。春物商戦に期待できる(商店街)。
・1月に入り、急激な寒さと悪天候のため、来客数及び来街者数が減少している。前年は多かった観光客も減少に転じているので大変苦戦している(商店街)。
・消費における強い節約傾向は、年が明けても変わらない。ガソリンや灯油の値上げもあり、消耗品に対する節約意識はやや高まっている感もある(住関連専門店)。
・年始の福袋販売については、前年と同様に好調であった。ただし、クリアランスがスタート後の衣料品の売上は、伸び悩んでいる。景気が上向いていても、消費にはまだ結び付いていない(百貨店)。

■先行き
・政権交代以降は円高に歯止めが掛かり株価も上昇して、明るい兆しが見える。販売量や来客数も増えてきている(乗用車販売店)。
・円安で海外のブランド品が今後値上がりすることを見越して、高額品を中心に引き合いが増えてくる(百貨店)。
・政府の景気対策で客の意識が変化し、購買意欲が高くなり財布のひもが緩みつつある(コンビニ)。
・円安が企業業績に好影響を与える反面、食料品やガソリン価格、電気料金などの上昇による悪影響が懸念される。個人所得の増加は現状では期待できないことから、消費マインドの高まりは期待できない(百貨店)。
などとなっている。「為替レートが円高から是正されるために海外ブランド品の値上げが予想されるため、今のうちに買い込んでおく」という動きは正直想像もつかなかったが、確かに需要層からはそのような考えによる行動も不思議ではない。

全体的には先月同様、国内政治環境の変化に伴い、政策の転換で景気が動くことへの直接的期待と、動いたことによる波及効果を待ち望む間接的期待が見て取れる。全体的な理由一覧の表で「▲(やや悪)」「×(悪)」の項目が少なくなったこと、それらのマイナス項目にも現状維持的な内容のものが多いのが印象的。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
エコカー減税の反動や、
円高、増税懸念で
景況心理は下落。
この数か月は国内の
政治環境の変化で
政策転換に伴う期待が
景気を動かす流れに。
2007年夏に始まった直近の不景気は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力も確認されており、「2011年の”震災前”における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする下値圏、つまり不景気圏でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており、さらに継続する円高基調、国内政策の無策さなどの要素が、自然回復的な景気の上昇基調を打ち消す可能性を秘めていたからである。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震・震災の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、間接的な不安要素が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させ」てしまう。これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表することができる。特に一般社会の経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層にこの傾向は著しく表れており、小売セクターに大きな影響を与えている。

さらにそれらの動きを悪用する形で昨今の情勢を「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの利益を成す者も多数登場している。悪質なことに、山師やペテン師だけでなく、この流れに乗る政治家や「自称」専門家も多数見受けられる。これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因の一つにもつながっている。

「震災による中期的な不景気が発生し”うる”可能性」という言葉はすでに過去のもので、つい最近まではその真っただ中にあった。震災前から不景気の状態のため、気付きにくかっただけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高、そして致命的な政策ミスの連続による状況悪化はさらに進み、輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けて「いた」。

招き猫ここ数か月においては上記で触れている通り、日本国内の政治状況に大きな変化があり、現況の不透明感が払しょくされる可能性が各所で見受けられ、期待する動きが経済面でも表れ始めている。期待の強さは上昇幅の大きさと部門を問わずに起きていることに、そして「現況」よりも「先行き」の上昇幅が大きいことからも把握できる。すでに実体化している為替・株価動向や、次々に打ち出される具体的方策が、それらの期待を裏付け、さらに後押しする形となっている点にも注目したい。

震災経験を元にした災害対策においては、現在多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、感情的な論議とその煽動が行われていると断じて良い。今般の経験を有効に活かす手立てを論理的・数理的な面で講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りつつ、手を打つのが中長期的・全体的に見て最善なのだが、残念なことに直前まで打ち込まれていた「くさび」を主な要因とし、多方面でそれとは異なる方向へ歩みを見せている。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が跳梁跋扈している昨今においてこそ、理知的で常識的に「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が確認できるものならば、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感もさらに改善する。その流れに世の中が従い、勢いを増すのなら、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示す動きを見せるに違いない。


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