プラス11.0%・穀物の前年同月比の上げ方が気になる(2013年1月分世界食糧指数動向)

2013/02/12 08:45

2年ほど前の記事で、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が定期的に公式サイト上でオープンにしている【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】の値が、例年に無く高い水準を維持し続けていることを確認した。この「世界食料価格指数」は1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を定期的にまとめた上で発表しているもので、この値の高騰≒世界の食料市場の高値圏での推移は、各種商品市場や政治情勢にも影響を与えている。そこで今サイトでは元データの更新があるたびにそれを確認し、グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2013年1月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認を願いたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年1月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年1月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる(やや穀物がイレギュラーな動きを示しているが)。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに各値は大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向を示すようになった。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも2012年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。最近ではややもみあいの雰囲気が続く中、今回の2013年1月分では前月比という観点では、小幅な値動きにとどまっている。

続いて、2007年以降にグラフ生成期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちらの図。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年1月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年1月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動(反落)の結果。しかし価格上昇の原因「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するわけでは無く、再び上昇をはじめている。少し前までは高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。昨今ではこの下値抵抗線を破る形で値を下げているが、この動きに関しては豊作による供給増加や、不景気による甘味需要の減退が原因とされている。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年1月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年1月)

前年同月比で油脂や砂糖の下げ方、そして穀物の上げ方が気になるが、それ以外は前年同月比・前月比共に大きな動きは無し。その3項目の過去一年間における大きな変動、そしてこの数か月は大人しい状況が認識できる。なお穀物はこの20年来における最高値圏に近づいていたが、この数か月は値上がり傾向も沈静化し、むしろ値を下げる動きを示している。

リリースでは今月の動きについて「穀物指数は昨年の秋口以降、収穫高の向上を反映する形で下落している。特に小麦の供給量は大きく、トウモロコシ価格にまで影響を及ぼすこととなった」「油脂指数はこの数か月来の下落傾向から反発。東南アジアでの大雨が、パーム油の供給懸念を引き起こしたのが主要因。また南米での気象の悪化も大豆収穫高への不安要素となっている」「乳製品指数はほぼ横ばい。昨年夏に安値を付けた後に上昇を見せ、秋口以降は高値で安定している。EUでは市場統制による高値安定化が継続している一方、アメリカ発の脱脂粉乳の値下げが目立つようになってきた」「食肉指数はほぼ安定。鶏肉と豚肉がやや安値。一方で消費の減退や飼料価格の高騰により、業者は厳しい立場に置かれている」「砂糖指数は下落。供給過多などの理由で、この3か月ほど下落を続けている」などと言及している。

食料価格の上昇は一般市民の日常社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。エンゲル係数の高い新興国では、特にその影響が大きい。その観点から考えると、食料品の大幅な価格変動、特に価格上昇は好ましい話ではない。この数か月は比較的安定した動きを見せているが、中期的には上昇傾向に違いは無い。世界情勢との連動性も合わせ、注視すべき問題ではある。



小麦食料価格の上昇要素は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上、つまり一人あたりの消費量の増加で乗数的に大きくなる。1×1が2×2になるようなもの)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感(概して商品市場は株式市場などと比べて規模が小さく、資金流入により大きく値が跳ねる。金融危機以降の商品市場ではこの傾向が強い)と、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は景気後退による需要縮小以外に見つけにくい(科学技術の進歩による品種改良も、地力を下げるリスクが多分にある)。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと構造的には変わりがない。

20年来高値間近となり、特に気になる穀物の動向だが【農林水産省の海外食料需給レポート(2013年1月分)】によると、主要穀物品種のうち小麦・とうもろこし・大麦・米のすべてにおいて世界全体では生産量が消費量を上回り、期末の在庫率が低下する見込みを示している。大豆は供給増のため在庫率が上昇するが、気になる話ではある(もっとも大豆は今件では油脂扱いである)。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。見方を変えれば、社会・経済状況を多分に反映している値ともいえる。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。

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