ギリシャ、キプロスが大幅な悪化、リトアニアが改善…EU失業率動向(2012年12月分)

2013/02/05 08:00

以前スペインにおける(当時の)直近2011年12月分の失業率の値を、【EU統計局(Eurostat)】で毎月発表している、失業率関連のデータを基に確認した。以降毎月、同局の発表資料を元に最新情報の取りまとめと精査を行っている。今回はその2013年2月1日発表・2012年12月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を図ることにした(該当リリース:【Unemployment statistics】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2012年12月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時で公開されている最新月分のデータを代用している。

↑ 2012年12月時点での失業率(季節調整済)
↑ 2012年12月時点での失業率(季節調整済)

今回は常に最上位の位置を見せるスペインを超え、先月まで第2位にあったギリシャがもっとも高い失業率を示してしまった。同国の状況悪化が懸念される。

もっともスペインの場合、今回発表分で過去数か月分に渡り、ゼロカンマ数%ポイントの修正が行われ、その結果ギリシャに抜かれたまでの話。就業問題で何らかの改善が見られたわけではない。もちろん全体的には債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置しており、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあるのも先月通り。

今回も前回同様、該当月の前月(2012年11月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率は(次の若年層周りでも同様だが)、国毎に細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない(今回のスペインが好例)。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年11月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。また直近分のリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する。

↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年11月→2012年12月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年11月→2012年12月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあり、正直なところプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と見て問題ない(概して小国の方が誤差が出やすい)。今回月ではギリシャ、キプロスが大幅な悪化、リトアニアが改善の動きを示している。ギリシャの悪化はいつものことであるが、キプロスは以前【国債・公債のデフォルト確率上位国をグラフ化してみる(2012年8月15日版)】で解説した通り、ギリシャと経済的に深い関係にあることから、同国の状況悪化に引きずられる形が継続しているものと考えられる。

そして冒頭にあるように、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で24.0%・EU27か国でも23.4%を記録しており(こちらも上記スペイン同様、今回の発表で過去分からも含め修正が入っている)、5人に1人以上(間もなく「4人に」1人になりそうな勢い)が失業状態。中でもギリシャの57.6%(2012年10月)、スペインの55.6%を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国、急激に経済が冷え込んだ国の若年層失業率の高さが確認できる。

↑ 2012年12月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(12月データが無い国は直近分)
↑ 2012年12月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(12月データが無い国は直近分)

↑ 2012年12月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(12月データが無い国は直近分)
↑ 2012年12月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(12月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と判断すると、エストニア、デンマーク、アメリカが悪化、ハンガリー、スウェーデン、マルタの改善が確認できる。特にハンガリーの1.2%ポイントの改善が気になるが、同国では周辺他国同様に経済は低迷。政策金利の連続引き下げを断行するなどの施策を打ち出しているものの(【ハンガリー中銀、追加利下げで政策金利5.5%に(ロイター)】)、状況の改善は思わしくなく、ここしばらくの間若年層失業率は上昇中。ただしこの数か月は減少(改善)傾向にあり、あるいは対策に効果が表れ始めているのかもしれない。

他方エストニアの上昇(=状況悪化)も目立つ動きだが、こちらは先月伝えた通り同国では中期的に若年層の失業問題は改善方向に向かっている。今回の動きは特異的なものと考えられ、もう少し様子を見る必要がある。

↑ 2012年1-12月での25歳未満の失業率(季節調整済)(エストニア/ハンガリー)
↑ 2012年1-12月での25歳未満の失業率(季節調整済)(エストニア/ハンガリー)

EU諸国も合わせ先進諸国で若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要人員数が減ったこと、その上為替レート上で相対的賃金の安い新興国に、それらの作業が割り振られる動きを見せているのが主要因。

そして債務問題で国レベルの財政の悪化に伴い、緊縮財政が取られていることも悪化を後押しする大きな要素。緊縮財政をとればその国の国内産業が冷え込み、経済は低迷し、労働市場も緊縮する。その上、ヨーロッパ諸国は他の先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇しており、「高齢者が就業場所に居座り、席が空か」ず、若年層が割を食う事態に陥っている。また、すぐには利益が数字として表れない(だからこそ企業にとっては「財産」となる)「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」とのマイナス評価を受け、若年層の立ち位置はさらに悪化する。いわゆる負のスパイラル状態に陥っている。

もっとも昨今では【IMFが自らの方針としていた「緊縮財政で景気回復」への総括を始めたようです】【IMFの"「緊縮財政で景気回復」への総括"覚え書き・その2】などにもある通り、特に欧州方面での緊縮財政のリーダーシップをとっていたIMFも、「過度の緊縮財政方策では景気回復はおぼつかず、財政再建自身も困難さを増す」と判断し、これまでの自らの方針を修正、方針転換を図る姿勢を見せている。

また【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、既存労働者の権益を守るあまりに新規雇用が難しくなり、若年層の雇用窓口が狭まり、結果として若年層の失業率増加につながっている。この問題は日本でも当てはまるものであり、先進国共通の労働市場問題として憂慮すべき懸念事項といえる。

労働市場の検証や失業対策では、単純に数字だけを比べて「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では無く、「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的かつ先行きが明るく見える政策の実行が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。

レストラン無論、上記にもある通り「雇用の長期化」は「他の状況に変化が無ければ」新規参入を阻む弊害。そこが労働問題の最大の問題点でもあり、一見矛盾するポイントでもある。その弊害を無くすには、雇用そのものの拡大を推し量るのが一番手っ取り早く分かりやすい。常連ばかりが陣取りいつも満員のレストランに新規客が入りやすくするためには、レストランを拡張して店員を増やし、対応できる客数を増やせばよい、というわけだ。

また、経済は多項目が連動するのが常であることから、単に雇用状況のみを改善しようとしても破綻する(逆の事例がIMFのこれまでの方策)。社会福祉と雇用市場と経済すう勢、そして金融政策はお互いが密接に連動する。安定したインフラを提供して環境を作り上げ、金融政策で後押しをすることで産業を興し活性化させ、お金と商品を「社会全体に循環させる」ことで、経済は育まれ、雇用も活性化し、社会福祉も充実していく。

明るい見通しがあってこそ、就業者は経済面での生活の上でも精神的にも安定する。そしてさまざまな面での個人、そして国全体としても飛躍が期待できる。経済と雇用、労働市場、金融政策は、連動する形で対策を打つ必要があることを忘れてはならない。

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