子育て世代=若年層の所得伸び悩み具合をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/08/02 05:19

内閣府では多様なプロジェクトチームのもとに多方面から社会の現状の分析と、状況の改善のための施策提案を行っているが、その一つが2016年6月6日に最新版となる2016年分の先行報告版ともいえるPDF版を発表した「少子化社会対策白書(旧「子ども・子育て白書」「少子化社会白書」)」。これは結婚関係や育児の観点から各種統計資料を収録、対応政策などをまとめた白書である。今回はこの白書に記述されている案件を基に、一次データを直に抽出検証することで、所得分布を介して、子育て世代=若年層における所得の伸び悩み具合について見ていくことにする(【発表リリース:平成28年版少子化社会対策白書を公表しました】)。

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今白書内で少子化傾向の一因として取り上げられている、「子育て世代=若年層における所得の伸び悩み具合」に関する記述は、総務省による【就業構造基本調査】から抽出されたもの。これは5年おきに行われている調査であり、現時点ではすでに2012年の調査結果が公開されている。白書でもその直近分の値も含めて精査が行われているが、現時点ではPDF版のみの公開で詳しい数字は明らかにされていない。そこで今回、就業構造基本調査そのもののデータをあたり、独自で同概念のもとに集計・精査を行い、グラフを作成し状況を確認することとした(すでに詳細データが出ている過去の分も精査し直し、正しい手法であることは確認済み)。

抽出したのは2002年・2007年・2012年の3回分。就業構造基本調査そのものは1997年以前のものも調査結果が収録されているが、収入階級の区切りが2002年以降のものと異なり、双方を一致する形で再集計すると、区切りが非常に大雑把、かつ不揃いなものとなってしまう。そこで1997年以前のものは省略し、2002年以降のものに限り精査を行うことにする。

次に示すのは子育て世代にあたる20代・30代を世帯主とする世帯(有業者のうち雇用者)における、収入階級別の雇用者構成を示したもの。例えば世帯主年齢が20代・2012年における300万円台の比率は24.4%なので、2012年の20歳代における、雇用者(雇われ人)のうち1/4ほどは年収が300万円台となる。

↑ 収入階級別雇用者構成(20代)(就業構造基本調査より)
↑ 収入階級別雇用者構成(20代)(就業構造基本調査より)

↑ 収入階級別雇用者構成(30代)(就業構造基本調査より)
↑ 収入階級別雇用者構成(30代)(就業構造基本調査より)

20代ではいずれの年も最大該当層は200万台で変わりはないが、その層は漸増、100万円台はやや減っているものの、100万円未満は大幅増。また300万円台はイレギュラーな動きを示しているが、それ以上の収入層では概して減少しており、全体的な平均が下がっていることがうかがえる。ただし600万円台以上を見ると、800万円台から900万円台で、2007年から2012年にかけて0.1%ポイントの上昇が起きており、誤差の範囲ではあるが、わずかな希望も見られる。

30代になると世帯・個人間格差が大きくなり、年収にもばらつきがみられる(縦軸の区切りで上限が、20代は30%だが、30代は25%で済んでいることに注意)。最大回答層も400万円台となり、20代の200万円台よりは上昇している。またその他の回答率も合わせ、全体的に偏りの度合いが弱まり、平たん化している状況がうかがえる。もっとも1000万円以上の層がグンと抜きでている点は、20代よりも格差が拡大していることになるのだが。

そして30代においては20代よりもはっきりと、2002年より2012年の方が、低収入層の比率は増加し、高収入層の比率が減少しているのが分かる(最多回答率の400万円台を境に、それより低い層では増加、高い層では減少傾向にある)。つまり収入構造の低額シフト化が生じている次第である

今件はあくまでも金額ベースの話。物価が下がっていれば、生活水準においては多少ながらも救われるのだが(もちろんその分高収入層はさらに裕福感を実感できる)、【過去60年余にわたる消費者物価の推移をグラフ化してみる】にある通り、20世紀末以降ほとんど物価に変動はない。

↑ 消費者物価指数推移(1991年-2016年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2016年は5月までの平均値)(再録)
↑ 消費者物価指数推移(1991年-2016年)(1991年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(東京都区部)(2016年は5月までの平均値)(再録)

消費税率引き上げ後はいくぶん物価が上昇し、今世紀初頭の基準にまで戻っているが、「就業構造基本調査」を元にした今件年収動向は直近でも2012年分で、まだ税率引き上げ後の動向は反映されていない。どのような影響が生じているかは、2017年以降まで待たねばならない。

これらのデータからは、子育て世代の所得分布は今世紀に入ってからは、明らかに低所得層にシフトしていることが分かる。そして今件では上記説明の通り区分の都合上データ化を略したが、白書の指摘にあるように、この動きは前世紀から継続するものである。



他の複数記事でも繰り返し触れていることではあるが、子育てにおいて金銭の問題ですべてが解決されるわけでは無い。それと同時に、金銭はさまざまな物品・サービスを代替可能な存在なので、子育て問題においては最重要の案件・要素であることも否定できない。

今件データは雇用者における収入構造である事を考えれば、若年層の収入、さらにはそれを押し下げる要因となる非正規雇用問題の状況改善が強く求められる。それと同時に今件データでは反映されていない、若年層における失業問題、言い換えれば就労問題にも注力が求められよう。


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