主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移をグラフ化してみる(最新)

2020/11/15 05:39

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2020-1114先行する記事で主要キー局における直近の視聴率動向の確認を行った。今回はそれら最新のデータを基に、過去複数年間にわたるキー局(+α)視聴率の移り変わりをグラフ化し、状況の精査を行うことにする。単独番組の、あるいは1年単独での視聴率は語られる、耳にすることはあるが、複数年の移り変わりを確認できる機会はさほど設けられていない。テレビ市場、テレビ業界動向を推し量るには、貴重なデータであることは間違いない。

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HUTは漸減傾向


テレビ視聴率は日本国内では、現時点ではビデオリサーチ社のみが計測を行っている。しかし同社ではデータの大部分は非公開としている。そこで主要テレビ局の中から【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】にある各種短信資料などをチェックし、「決算説明会の補足資料として」掲載されている主要局の視聴率を逐次抽出。グラフの作成を行うことにした(他局の短信資料で補足・確認の精査も併せて行っている)。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの(総)世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯(台数ではない)がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値である(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

一方、数字上は反映されているものの「ながら視聴」については、反映の是非も含めて考慮されるべきではあるが(極論としてテレビのスイッチは入っているものの、テレビの画面そのものはほとんど観られていない、ラジオのように使っている状況もあり得るので、それを「視聴」と呼ぶか否かの定義レベルでの話となる)、区分は不可能であることから従来の定義に従う。

なお先行記事でも触れている通り、2020年11月発表の各局の決算報告書以降において、HUTではなくPUT(個人視聴率、Persons Using Television)が掲載されるようになったが、今記事では連続性を鑑み引き続きHUTを用いる。以後の記事内表記・グラフ内表記も断りがない限り「視聴率」は「世帯視聴率」を意味する。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19-22時)、全日(6-24時)、プライムタイム(19-23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も併せて)変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、都合2つを併記し、状況を確認する。

↑ HUT(ゴールデンタイム)
↑ HUT(ゴールデンタイム)

↑ HUT(全日)
↑ HUT(全日)

今件中長期の視聴率推移の記事を立ち上げた時に、「HUT」の語彙(ごい)を確認するために用いた文献では「HUTはゴールデンタイムで70%前後が普通」と解説されていた。しかし直近データでは60%強にまで落ち込んでいるのが分かる(縦軸の最下方が54%になっていることに注意)。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっている。また、年末年始は特番が多く放映される、正月休みで自宅待機率が高まることを受けてテレビ視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。無論年度ベース、つまり通期の値は、上期と下期の平均値となる。

中期的には全日・ゴールデンタイムともにHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じていた。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に電通・博報堂や経済産業省による月次の記事を展開している広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。ところが2014年度上期以降、再び下落基調に転じてしまう。

一方で【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】などで解説している通り、携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの普及で「ながら視聴率」が上昇を続けている現状を留意しておく必要がある。つまりテレビ視聴における質の変化が起きていることから、単純に昔のHUTと現在のHUTを密度的に同列と見るのは無理があるとする考え方だ。勉強の際に「雑音が一切無い環境で集中した1時間」と、「テレビを見たり漫画を読みながらの1時間」では、時間の長さは同じでも、密度・効果は大いに異なる。それと同じようなものだと考えればよい。

もっともこの「ながら視聴」でも最近はスマートフォンなどを使い、LINEやTwitterなどでチャットをし「ながら視聴」することで、テレビ番組内容との連動性が発生し、より番組そのものを楽しめる、あるいは口コミを瞬時に広げるとの効果も指摘されている(いわゆる「実況」)。当然テレビへの注力度は高いものとなる。「ながら視聴」をひとくくりにしてテレビ視聴の質の低下と結びつけるのには、困難さが見えて始めている。テレビは単にテレビ受像機のみに注視する時代に、終わりを告げようとしているのかもしれない。

さらに先行する記事でも言及しているが、2016年10月からは視聴率動向にタイムシフトの調査が行われ、タイムシフト視聴率や統合視聴率が試験的に一部ではあるが公開されている。しかしながら各報告書の言及や他の公開状況の限りでは、HUTはリアルタイム視聴率のままだと考えられる。HUTの下落もあるいは、タイムシフト視聴をしている人が増えているのが一因かもしれない。

なお直近の2020年度上期ではゴールデンタイムも全日もHUTは大きな増加を見せ、イレギュラー的な動きとなっているのが確認できる。これは先行記事でも言及の通り、巣ごもり化によるテレビ観賞の機会増加によるものと考えて間違いあるまい。新型コロナウイルスの流行が継続している以上、2020年度下期もまた、似たような動きを示すことだろう。

主要キー局の視聴率動向


次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2009年度から2020年度(2020年4月-2021年3月。「2021年3月度」と同じ期間だが表記が異なることに注意)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして作成した。なお類似データとして全日・プライムタイムのものもあるが、大局的に違いは無いので、別途作成はしない。また併記している折れ線グラフは取得可能な全期の動向を対象としている。

↑ 主要局年度世帯視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)
↑ 主要局年度世帯視聴率(ゴールデンタイム、年度ベース)

↑ 主要局年度世帯視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2003年度以降)
↑ 主要局年度世帯視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2003年度以降)

この数年の動向として、「テレビ東京の下落」「フジテレビの凋落と底打ち」「NHKの下落と底打ち」「TBSの不調から横ばい、復調へ」「テレビ朝日の復調から失速、底打ち」が確認できる。TBSは10年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行し、その後はじわりと復調中(直近年度は大きく落ちているが)。

NHK・フジテレビは双方とも10年近くの間、ほぼ継続して下落。特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示した。NHKは2016年度で回復に転じたが、その直後に再び下落。「真田丸」などによる底上げはイレギュラー的な動きでしかなかったようだ(直近年度では回復の動きがあるが)。フジテレビの下げはようやく底打ちから反転への気配を見せているが、まだ確定した動きなのか、安心できる状況にはない。

なお直近分となる2020年度は上期のデータしか存在しないので、それをそのままグラフ上に反映させるが、上記説明の通り上期は下期と比べて視聴率では低い値が出る傾向がある。従って本来ならば2019年度までと比べると低めの結果が出てしまうのだが、今回は新型コロナウイルスの流行による巣ごもり化の影響と思われる視聴率の大幅な底上げが生じているため、上期のみでも2019年度までとそん色ないどころかむしろ大きな増加を示している局も生じている。その点でもフジテレビの不調ぶりが改めて認識できる結果ではある。



各局の視聴率動向、主に下方基調がこの1、2年の短期的なものの動きではなく、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは把握できる。単発的に勢いをつけるコンテンツもこの時期には多数輩出されたはずだが、それでもなお、下落の流れを変えるまでには至らなかったことになる。

もちろん、かつて社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気を変える可能性も秘めている。この「スターコンテンツが複数、定期的に登場すれば、全体の流れは容易に変わりうる」状況は、かつてのテレビ局の状況そのもの。また媒体は異なるものの昨今の雑誌業界、具体的には「進撃の巨人」や「妖怪ウォッチ」「おそ松さん」で大きく飛躍した雑誌が複数存在している状況にも当てはまることであり、興味深い(し、よく考えてみれば当たり前の話でもある)。

直上で示した各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにもかかわる話なだけに、大いに気になるところではある。また、新型コロナウイルスの流行で生じた生活様式の変化が、テレビ観賞にいかなる影響を与えるのか、視聴率の観点でも注目したいところだ。


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