主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/05/17 10:27

2016-0517先行する記事で主要キー局における直近視聴率動向の確認をした。今回はそれら最新のデータを基に、過去複数年間に渡るキー局(+α)視聴率の移り変わりをグラフ化し、状況の精査を行うことにする。単独番組の、あるいは1年単独での視聴率は語られる、耳にすることはあるが、複数年の移り変わりを確認できる機会はさほど設けられていない。テレビ市場、テレビ業界動向を推し量るには、貴重なデータであることは間違いない。

スポンサードリンク


HUTは漸減傾向、そして底値もみあいから再び低迷へ


テレビ視聴率は日本国内では、現時点ではビデオリサーチ社のみが計測を行っている。しかし同社ではデータの大部分は非公開としている。そこで主要テレビ局の中から【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】にある各種短信資料をチェックし、「決算説明会の補足資料として」掲載されている主要局の視聴率を逐次抽出。グラフの生成を行うことにした(他局の短信資料で補足・確認の精査も合わせて行っている)。

まずはHUTの推移を確認する。この「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値である(チャンネル別の区分は無い)。

これには録画した番組の再生、家庭用ゲーム機でテレビ画面を使っている場合は該当しない。またパソコンやスマートフォンなどによるワンセグの放送視聴も当てはまらない。ただしインターネットテレビによるテレビ番組の視聴は該当する。

一方、数字上は反映されているものの「ながら視聴」については、反映の是非も含めて考慮されるべきではあるが(極論としてテレビのスイッチは入っているものの、テレビの画面そのものはほとんど観られていない、ラジオのように使っている状況もあり得るので、それを「視聴」と呼ぶか否かの定義レベルでの話となる)、区分は不可能であることから従来の定義に従う。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19時-22時)、全日(6時-24時)、プライムタイム(19時-23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も合わせて)変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記し、状況を確認する。

↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(ゴールデンタイム)

↑ HUT推移(全日)
↑ HUT推移(全日)

今件中長期の視聴率推移の記事を立ち上げた時に、「HUT」の語彙(ごい)を確認するために用いた文献では「HUTはゴールデンタイムで70%前後が普通」と解説されていた。しかし直近データでは60%強にまで落ち込んでいるのが分かる(縦軸の最下方が56%になっていることに注意)。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっていた。また、年末年始は特番が多く放映される、正月休みで自宅待機率が高まることを受けてテレビ視聴率が上昇するため、毎年「上期より下期の方が高い」傾向があり、結果としてギサギザの形を示す。無論年度ベース、つまり通期の値は、上期と下期の平均値となる。

中期的には全日・ゴールデンタイム共にHUTは落ちているが、2010年前後からは(特にゴールデンタイムでは)横ばいの動きに転じていた。さらに2013年度に入ると、明らかに底打ち感から反転の兆し、トレンド転換の動きが明確化した。同時期に電通・博報堂や経済産業省による月次の記事を展開している広告費動向において、テレビ広告費の動向も似たような動きを示していたことから、テレビの復調感を覚えさせる流れではあった。

ところが2014年度上期以降、再び下落基調に転じている。直近となる2015年度下期ではゴールデンタイム・全日共に、上期からは上昇をしているもののその勢いは今一つ。前年同期比ではゴールデンタイムでマイナス1.5%ポイント、全日でマイナス0.5%ポイントとなり、明らかに失速の動きを示している。

一方で【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】などで解説している通り、携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの普及で「ながら視聴率」が上昇を続けている現状を留意しておく必要がある。つまりテレビ視聴における質の変化が起きていることから、単純に昔のHUTと現在のHUTを密度的に同列と見るのは無理があるとする考え方だ。勉強の際に「雑音が一切無い環境で集中した1時間」と、「テレビを見たり漫画を読みながらの1時間」では、時間の長さは同じでも、密度・効果は大いに異なる。それと同じようなものだと考えれば良い。

もっともこの「ながら視聴」でも最近はスマートフォンなどを使い、LINEやツイッターなどでチャットをし「ながら視聴」することで、テレビ番組内容との連動性が発生し、より番組そのものを楽しめる、あるいは口コミを瞬時に広げるとの効果も指摘されている(いわゆる「実況」なるもの)。当然テレビへの注力度は高いものとなる。「ながら視聴」をひとくくりにしてテレビ視聴の質の低下と結びつけるのには、困難さが見えて始めている。テレビは単にテレビ機材のみに注視する時代に、終わりを告げようとしているのかもしれない。

主要キー局の視聴率動向


次に各局の視聴率について。年度ベースにおける2005年度から2015年度(2015年4月-2016年3月。「2016年3月度」と同じ期間だが表記が異なることに注意)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移をグラフとして生成した。なお類似データとして全日・プライムタイムのものもあるが、大局的に違いは無いので、別途生成はしない。

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(2004年度以降、折れ線グラフ)

この数年の動向として、「テレビ東京の持ち直しから再び下落」「NHK・フジテレビの凋落」「TBSの不調から横ばい」「テレ朝の復調から失速、転落」が確認できる。TBSは6年ほど前に急落を見せた後に横ばい傾向へと移行したので、今後先行きに可能性はある(直近での持ち直しは中長期で見ると誤差の範囲の動きであるのが分かる)。

NHK・フジテレビは双方とも6、7年間ほぼ継続して下落を継続、特にフジテレビでは2012年度に1.6%ポイントもの大きな下落を示している(直近の2015年度はマイナス0.9%ポイントと、やはり小さからぬ下落度合い)。一方でテレビ朝日はこの数年、少しずつだが着実に視聴率は回復傾向にあった。しかし2013年度においてトレンドが転換、その後は下落を継続しており、2013年度の下げが一時的な、イレギュラーなものではないことを裏付けてしまった。

↑ 2016年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)(再録)
↑ 2016年3月期通期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)(再録)

直近通期ではTBSが唯一プラスの動きを見せているが、現時点ではボックス圏内の動きとも読み取れる。日本テレビは前記事でも言及の通り、前年における急上昇の反動的な要素が大きく、2年前と比べればまだプラスの領域。他方、フジテレビの下げ方はダイナミックなまでのもので、中長期的には4年に渡りフリーフォール状態にあることが分かる。



各局の視聴率動向、主に下方基調がこの1、2年の短期的なものの動きでは無く、中期的な流れに沿ったものであることが、今件データからは把握できる。単発的に勢いをつけるコンテンツもこの時期には多数輩出されたはずだが、それでもなお、下落の流れを変えるまでには至らなかったことになる。

もちろん、かつて社会現象化するほどの好評を博した、TBSの「半沢直樹」のようなスター的存在が局全体の雰囲気を変える可能性も秘められている。この「スターコンテンツが複数、定期的に登場すれば、全体の流れは容易に変わりうる」状況は、かつてのテレビ局の状況そのもの。また媒体は異なるものの昨今の雑誌業界、具体的には「進撃の巨人」や「妖怪ウォッチ」「おそ松さん」で大きく飛躍した雑誌が複数存在している状況にも当てはまることであり、興味深い(し、よく考えてみれば当たり前の話でもある)。

直上で示した各局の中期的な視聴率動向が、今後どのような動きを示していくのか。テレビ全体の視聴動向、HUTにも関わる話なだけに、大いに気になるところではある。


■関連記事:
【テレビやインターネット、新聞やラジオはいつ使われているのか…時間帯別利用状況をグラフ化してみる(2015年)(最新)】
【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】
【テレビアニメを観ている人は49.7%…40代と50代にまたがる大きな世代間格差の「壁」】
【お年寄りは夕食前からずっと、30-40代は午後10時以降…世代・性別で異なる平日夜間のテレビ視聴スタイル】
【有料動画配信サービスの利用者の内情をグラフしてみる(2014年)(最新)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー