アルゼンチンとキプロスが大幅上昇、後者は20%ポイントもの上げ(国債デフォルト確率動向:2013年1月)

2013/01/15 14:30

2010年12月17日に掲載した記事で説明している通り、経済動向を推し量るのを目的とし、債権リスクを示す指針の一つCPDを元に、主要国・地域の国公債のデフォルト確率上位国を2010年12月から1か月単位で確認している。今回は2013年1月分として、同月15日時点の数字についてグラフ化を試みることにした。

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国公債のデフォルト確率を表す言葉CPD(5年以内のデフォルト可能性)の細かい定義、データの取得場所、さらには各種概念の説明は一連の記事まとめ【定期更新記事:CPD(国公債デフォルト確率)動向】で行われている。そちらで確認してほしい。

今件のグラフは日本時間で2013年1月15日、つまり(日本時間で)本日取得したばかりの一番新しいデータで生成している。前回も掲載されていた国・地域については前回値を併記している。

↑ 国債・公債のCPD上位10位(市場が見なしている、今後5年間でのデフォルト確率)(2013年1月15日時点)
↑ 国債・公債のCPD上位10位(市場が見なしている、今後5年間でのデフォルト確率)(2013年1月15日時点)

3か月前の記事で解説したように、欧州中央銀行が財務危機対策・ユーロ防衛策の一環として、国債の無制限買取について合意したことを受けて、EU諸国のCPDは一端大きく後退した。また、ユーロ圏内では債務危機のピークを越えたであろうとの観測もちらほら見られ、それと共に「危機対応(の財政緊縮)」から「構造改革」「競争力向上」に移すべきだとの意見もある。一方アメリカでは連邦公開市場委員会においてFRB(アメリカ連邦準備理事会)による景気対策として、失業率ベースでの判定ラインを元にした金利対策を行うと発表。これもCPDの下落に貢献している。

ところが今月においては、再びCPDがいくつかの国で大きく上昇している。ギリシャが高いのは元々だが、先月減少を見せたアルゼンチン、キプロスでの上昇が目立つ(ポルトガルは先月に続き下落)。キプロスは以前説明しているように、ギリシャとの関係が深く、同国の経済状態の悪化に伴い、連鎖的な影響が生じている。特に昨年春からのEU全体における(ギリシャの)債務問題の状況改善のために行われたギリシャ国債の交換の影響で、大きな損失がキプロス国内の銀行で発生したのが大きな痛手となっている。先日も格付け会社のムーディーズが同国国債の格付けを3段階引き下げており(【キプロス債務のヘアカットの可能性ない─レーン欧州委員=独経済紙(ブルームバーグ)】)、この影響も小さくない。

一方アルゼンチンは2001年に起こしたデフォルトに絡む処理関連で、最近再び債務問題へのリスクが懸念されており([平等条約照会、申し立て却下 アルゼンチン債務返済訴訟(サンケイビズ)])、これがCPD上昇の大きな要因と考えられる(同国のインフレ率の悪化に関しては、すでに伝えた通り)。


↑ アルゼンチンを事例に国と債権者間のパワーバランス、それに伴う国側のデフォルトリスクに関する解説をしている、FinancialTimesの公式映像。
↑ アルゼンチンを事例に国と債権者間のパワーバランス、それに伴う国側のデフォルトリスクに関する解説をしている、FinancialTimesの公式映像。【直接リンクはこちら】

また先月同様、アメリカの州(公債)のうちイリノイ州が入っているのが目に留まる。同国の州レベルでの財務状態の厳しさが、改めて思い知らされる。

今回の上位陣グラフでは、矢印で示したようにアルゼンチンとキプロスの上昇具合が目立つ。他方、ポルトガルやスペインのような、数か月前まで上位常連組だったEU加盟国のCPDによる順位付けは低下の動きを示しており、「欧州債務危機」の風向きが変わってきた雰囲気が見受けられる。

視点を変えると、EU諸国の債務問題に対して、各国の合意や支援組織から援助対象となる国に対する支援条件、要請政策は概して緊縮財政の類だった。「無駄遣いに過ぎるから負債が増える」という考えに基づいたものだが、各国市民からは反発も強く、選挙絡みで債務問題解決の動きに大きな影響を与えている。そして経済そのものまで緊縮してしまっては意味が無いとの実情を認め、昨今では【IMFが自らの方針としていた「緊縮財政で景気回復」への総括を始めたようです】などで触れている通り、公的文書で「緊縮一辺倒の方針が過ちである」ことを認める姿勢を見せ、施策そのものを成長戦略を多分に絡めたものに移行すべきだとの意見も勢いを増している。

なお日本の国債に対する値は4半期ごとに更新されるCMD Visionのリスクレポートの最新版【2012年第3四半期リスクレポート(CMA Release Global Sovereign Credit Risk Report Q3 2012、PDF)】で確認できる。それによると、CPDは6.9%で順位は17位。前四半期の2012年第2四半期の7.5%・9位と比較すると、状況自身は改善、相対順位は悪化。CPDの算出上では、日本の財務状況回復の歩みは上位他国と比べて緩やかだと判断されている。

日本の企業動向、株式市場にも大きな影響を与えている、そしてCPDの動きにも(間接的に)影響を及ぼしている(ユーロ安はユーロ圏の財政が不安定化しているのが最大要因。そして財政不安状態はそのままCPDの上昇につながる)ユーロ動向だが、ここしばらくは欧州中央銀行の動きを受け、そして上記にあるように楽観論の拡大化、さらには日本の政治状況の変化に伴う財政・金融施策の大規模な動きに呼応し、大きくユーロが戻し、1ユーロ120円を付ける状況にある。

↑ ユーロ変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年1月14日)
↑ ユーロ変移(対円、終値、2012年1月2日-2013年1月14日)

大きく経済・政治動向が動くこのような状況だからこそ、失業率の動向と合わせ、債券リスクに絡むCPDの値は、各国、特にEU諸国の経済情勢をかいま見る有効な指標の一つとなる。今後も失業率同様、CPD値には注意深く監視の目を向けねばなるまい。


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