景気回復感強まる…2012年12月景気ウォッチャー調査は現状・先行き共に上昇

2013/01/13 10:00

内閣府は2013年1月10日、2012年12月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて増加したが、水準値50は下回ったままだった。先行き判断DIも先月から続く形で増加し、50を上回った。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は「景気は、このところ持ち直しの兆しがみられる」としている(【発表ページ】)。

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現状・先行き共に全項目でプラス
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年12月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス5.8ポイントの45.8。
 →2か月連続の増加。「やや良くなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」が大幅減少。「悪くなっている」も減っている。
 →家計では気温の低下による冬物商材の活性化で上昇。企業動向は円安の動きに加え、一部業種で受注・採算の改善が見られたことで上昇。雇用関連は製造業での調整の動きがあったが、年末・年度末向けの求人増加で上昇。

・先行き判断DIは先月比でプラス9.1ポイントの51.0。
 →円安・株価上昇や、新政権の政策への期待感から全部門で上昇。
今月は先月から加速する形で、現状・先行き共にプラスとなった。冒頭の「景気の見方」のコメントも「引き続き弱い」から「このところ持ち直しの兆しがみられる」に変わったことからも分かるように、動きを見せ始めているのが分かる。

大きく持ち直し
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分ではすべての項目がプラス。上げ幅ももっとも小さなもので3.0ポイント、大きなものでは7.5ポイントとなり、一様に上げているのが分かる。基準値の50を超えたのは住宅関連だけだが、サービス・雇用が続く気配を見せている。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフからは一目瞭然だが、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向を見せていたものの、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落してしまう。そして2008年12月前後でようやくその動きも落ち着く状態となった。その後2009年初頭以降に大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らなかった。回復するまでのエネルギー(実経済の状況、回答者の心理など)が足りなかったようだ。そしてそれ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が、単月ではリーマンショックを超える勢い(ほぼ垂直)で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドによるもの。いわゆる「震災特需」の類は一部地域・セクター以外は確認できないため、心理的なものによるところが大きい。

そして「リバウンド」が長続きしない世の常の通り、2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。一時は戻しを見せる気配もあったが、この1年ほどは低迷を続けながら、さらなる下落を模索する形だった。ところが2012年11月には「弱い上昇でしかなく、単なる反動か」の懸念がありつつも、回復の兆しが見受けられていた。そして今回の12月分では、明らかな形で上昇機運を確認できたことになる。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認済み。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
社会環境の変化で上昇の兆し。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

昨年の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」の方が適切な表現といえる(この状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と同じ)。

地震直前までの流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じような動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

2011年夏のリバウンドによる「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、2012年に入ってからは円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが5月になると欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、半ば期待されていた「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」が吹き飛んでしまったのが分かる。

ところが今回は明らかに、実態に裏付けられる形での上昇(全項目がそれなりの幅を持った上での上昇を見せる)が確認できる。この動きが来月以降も続けば、本格的なトレンド転換と見なすことができよう。

景気の先行き判断DIも先月から続いて上昇し、その動きはダイナミックなまでの強さとなっている。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

プラスの最高値は雇用関連のプラス11.6。最低の伸び率でも飲食関連のプラス6.5。基準値の50超えは前月のゼロから一挙に8項目に増加し、残りの2項目も次月には到達しそうな勢い。これほどまでの上昇ぶりは、震災直後のリバウンド以来であり、しかも全項目に渡っているところが注目に値する。

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月の58.7が天井。先月まで下落基調が続いていたが、今回大きく跳ね、基準値を久方ぶりに上回る形となった。次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば分かるように、「雇用関連」の指数の動きは他の指数に先行する場合が多く、特に「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な下落が起きている事例がある(2001年前半と2008年前半)。前月その「合計値>>雇用関連」という状況が発生したが、今回は早くも切り返しを見せ、再び「合計値<<雇用関連」という形となった。特にアノマリー的な話を気にしていた人には、吉報に違いない。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状指数」とほぼ変わらない)。そして昨年の震災による大幅な下落はリーマンショックの時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてそれ以降はリバウンドも十分なものでなく、基準値50付近を迷走していた。

今月は「50付近での迷走」から「さらなる下値」を示していた先月から転じ、大きな上昇を見せている(この点では現状指数をはるかに上回る)。これからの動向・変化に期待をする人がいかに多いかが見て取れる。

冬将軍と政策方針の転換と
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・気温や天候の影響もあるが、鍋物商材といった冬物商材の動きが良い(スーパー)。
・鍋物野菜を中心に、牛肉などの販売量も、初秋に比べるとやや増加傾向にある。総選挙の結果、政権交代することになり、客の話題にも明るさが見える(スーパー)。
・11月末から12月にかけての忘年会シーズンで、売上が昨年より大幅に増加した。これは円安や株高などのように、期待感の表れではないかと考えている(観光型旅館)。
・急激な気温の冷え込みで冬物衣料品が順調に推移している。12月も先月に引き続き好調な売上が続いている(商店街)。
・大寒波の到来で、コート関連がよく売れたほか、暖房用品も好調であり、どの部門も前年比で2けたアップの勢いである(百貨店)。
・12月は総選挙で客足がかなり悪くなり、そのまま年末に入り、客が増えない状況が続く(高級レストラン)。

■先行き
・新政権の金融政策によって、株価の上昇や円安が継続する見通しがあるなか、製造業を中心に東海地域の景況感の回復も見込まれる。また、年明け後も寒さが継続する予報があり、冬物商戦は好調に推移する(百貨店)。
・消費増税の動きのなか、来月ぐらいから増税前の駆け込み需要が見込まれるが、まだまだ慎重な消費者も多く、若干需要が高まる程度にとどまる(その他住宅[展示場])。
・総選挙後の円安、株高の影響で気分的に景気が戻りつつある。また、当館の売上も少し戻ってきているので、この状況が続くことを期待している(百貨店)。
・政権交代等により、円安、株高等で雰囲気は上向いているようであるが、中小企業、小売業、飲食店は厳しい状況が続いている。今の状況が当面続くのではないか(スーパー)。
・消費税の増税も次第に近づくなど、先行きの不安が払しょくできない(百貨店)。
などとなっている。冒頭でも触れたが、寒さの到来により冬物商品が動きだし、これが景気感の後押しをしたことが確認できる言及が、そこかしこに見られる。そして国内政治環境の変化に伴い、政策の転換で景気が動くことへの直接的期待と、動いたことによる波及効果を待ち望む間接的期待が見て取れる。すでに先読みをした動きが株価上昇・円安という実態となって現れ、その恩恵を受けるセクターも目に留まる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
エコカー減税の反動や、
円高、増税懸念、
国内政治環境の変化で
政策転換に伴う期待が
景気を動かす流れに。
2007年夏に始まった直近の不景気は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力も確認されており、「2011年の”震災前”における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)鉄板天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費の積み増し、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、円高基調も続き、国内政策の無策さも合わせ、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていたからである。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震・震災の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させ」てしまう(不安が高まれば殻に閉じこもるのは生物の摂理)。

これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表することができる。特に一般社会の経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層にこの傾向は著しく表れており、小売セクターに大きな影響を与えている。さらにそれらの動きを悪用する形で昨今の情勢を「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの利益を成す者も多数登場しており(悪質なことに、山師やペテン師だけでなく、この流れに乗る政治家や「自称」専門家もいる)、これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因の一つにもつながっている。

「震災による中期的な不景気が発生し”うる”可能性」という言葉はすでに過去のもので、現在はその真っただ中にある。震災前から不景気状態のため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高、そして致命的な政策ミスの連続による状況悪化はさらに進み、輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けて「いた」。

ところが上記で触れている通り、日本国内の政治状況に大きな変化があり、現況の不透明感が払しょくされる可能性が各所で見受けられ、それに期待する動きが経済面でも表れ始めている。期待の強さは上昇幅の大きさと部門を問わずに起きていることに、そして「現況」よりも「先行き」の上昇幅が大きいことからも把握できる(すでに実体化している為替・株価動向や、次々に打ち出される具体的方策が、それらの期待を後押しする形となっている点にも注目したい)。

震災経験を元にした災害対策に関しては、現在多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、感情的な論議とその煽動が行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りつつ、手を打つのが中長期的・全体的に見て最善なのだが、残念なことに直前まで打ち込まれた「くさび」を主な要因とし、多方面でそれとは異なる方向へ歩みを見せている。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が跳梁跋扈している昨今においてこそ、論理的にも数理的にも常識的にも「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善する。その流れに世の中が従えば、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示す動きを見せるに違いない。

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