スウェーデンが悪化中…EU失業率動向(2012年11月分)

2013/01/10 07:30

ヨーロッパ各国でも「先進国病」の状況の一つとされる「若年層の高失業率」。その中で特に高い失業率を見せるスペインの動向チェックをきっかけに、2011年12月分以降、【EU統計局(Eurostat)】で毎月発表している、失業率関連の統計データを用い、最新情報の確認を行っている。今回はその2013年1月9日発表・2012年11月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした(該当リリース:【Euro area unemployment rate at 11.8%(PDF)】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2012年11月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時最新月分のデータを代用している。

↑ 2012年11月時点での失業率(季節調整済)
↑ 2012年11月時点での失業率(季節調整済)

スペインは相変わらず2割強の値を示し、ギリシャもそれに続いている。両国とも2割の後半(四捨五入して3割)にまで達し、先月からさらに悪化の度合いを進めている(それぞれ0.4ポイント・0.7ポイントの悪化)のが気になるところ。そして、やはり債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置する状況を見ると、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあることが容易に推測できる。

今回も前回同様、該当月の前月(2012年10月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率については(次の若年層周りでも同様だが)、国によって細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年10月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。またリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する。

↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年10月→2012年11月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年10月→2012年11月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあり、正直なところプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と見て問題ない(概して小国の方が誤差が出やすい)。今回月で「も」ギリシャ、スペイン……はお馴染みとして、スウェーデンの動きが気になるところ。【スウェーデン中銀:政策金利1%に引き下げ-債務危機が響く(ブルームバーグ)】などの報道によれば、ユーロ圏全体の経済景況の悪化が同国経済にもマイナスの影響を与えており、景気が後退。家計消費の弱体化や失業の増加を招いているとのこと。

そして冒頭にあるように、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で24.4%・EU27か国でも23.7%を記録しており、5人に1人以上(間もなく「4人に」1人になりそうな勢い)が失業状態。中でもギリシャの57.6%(2012年9月)、スペインの56.5%を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国での高さ、急激に経済が冷え込んだ国の失業率増加が確認できる。

↑ 2012年11月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)
↑ 2012年11月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)

↑ 2012年11月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)
↑ 2012年11月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と判断すると、ギリシャ、スペイン、イタリア、スロバキア、ポーランド、ブルガリア、フランス、スウェーデン、チェコ、デンマークの悪化、ハンガリー、エストニア、アメリカの改善が確認できる。とりわけスウェーデンの前月比1.8%ポイントの上昇が目に留まるが、上記にある通り欧州債務危機の影響が若年層に色濃くにじみ出てしまっているのが分かる。

他方エストニアの下落(=状況改善)も目立つ動きだが、こちらは今回月の特異的な動きでは無く、中期的な動向であるのが確認できる。

↑ 2012年1-11月での25歳未満の失業率(季節調整済)(エストニア)
↑ 2012年1-11月での25歳未満の失業率(季節調整済)(エストニア)

同国の失業対策が上手くいっている理由について、特にニュースの類で報じられていることはないが、【外務省のデータ】によれば「(2011年以降は)経済が回復するにつれ失業率も改善し」との文言が確認でき、経済の発展が失業率を押し下げていることが分かる。なお一部には「地方分権の強化がプラスに働いた」との意見もあるが、エストニアのすぐそばにあり同じような立ち位置にあるリトアニアが、先月記事にある通り失業率の点でも悪化を示しており、その説は肯定するには難がある。

EU諸国に限ったことではないが、先進諸国で若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要人員数が減ったこと、さらに為替レート上で相対的賃金の安い新興国に割り振られる動きを見せているのが主要因。

そして債務問題で国レベルの財政の悪化に伴い、緊縮財政が取られていることも大きな悪化を後押しする大きな要素。一般的に緊縮財政をとればその国の国内産業が冷え込み、経済は低迷する。当然、労働市場も緊縮する。その上、ヨーロッパ諸国は他の先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇しており、必然的に「高齢者が就業場所に居座り、席が空かない」状態になり、若年層が割を食う事態に陥っている。その上すぐには利益が数字として表れない(それゆえに企業にとってはかけがえの無い財産を創生しうる)「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」とばかりに軽視されるため、若年層の立ち位置はますます悪化する。いわゆる負のスパイラル状態といえる。

もっとも昨今では【IMFが自らの方針としていた「緊縮財政で景気回復」への総括を始めたようです】【IMFの"「緊縮財政で景気回復」への総括"覚え書き・その2】などにもある通り、緊縮財政のリーダーシップをとっているIMFも、「過度の緊縮財政方策では景気回復はおぼつかず、財政再建自身も困難さを増す」とし、これまでの方針への自己批判を公的に行うと共に、方針転換を図る姿勢を見せている。

また【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、「高齢者優遇」「若者冷遇」の雇用対策の結果(「(既存)労働者」の権利を手厚く保護するため、業績が悪化しても容易に現行労働者の解雇はできず、必然的に若年層を雇う余裕はこれまで以上に無くなる)が、若年層の失業率増加の大きな原因の一つとして問題視されている。この状況は日本にも当てはまる。

労働市場の検証や失業対策では、単純に数字だけを比べて「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では無く、「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的かつ先行きが明るく見える政策が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。

上記にもある通り「雇用の長期化」は新規参入を阻む弊害もあるが、その弊害を無くすには、雇用そのものの拡大を推し量るのが一番手っ取り早い。上記のエストニアの事例にもある通り、「経済の適切な拡大」が雇用問題の解決にもつながる。

また、経済は多項目が連動するのが常であることから、単に雇用状況のみを改善しようとしても破綻してしまう(逆の事例がIMFのこれまでの方策だった次第)。社会福祉と雇用市場と経済すう勢、そして金融政策はお互いが密接に連動する。安定したインフラを提供して環境を作り上げ、金融政策で後押しをすることで産業を興し活性化させ、お金と商品を「回す」ことで、経済は育まれ、雇用も活性化し、社会福祉も充実していく。明るい先・見通しが見えてこそ、就業者は経済面での生活の上でも精神的にも安定する。そしてさまざまな面での個人、そして国全体としても飛躍が期待できる。経済と雇用、労働市場、金融政策は、連動する形で対策を打つ必要があることを忘れてはなるまい。


■関連記事:
【数十年にわたるEU諸国の失業率推移をグラフ化してみる】
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2011年版)】

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