交通事故による2018年の死者、前年比マイナス4.4%の3532人に(最新)

2019/01/04 15:34

2019-0104警察庁は2019年1月4日、2018年における全国の交通事故死者(事故発生から24時間以内に死亡)の数が3532人となり、昨年の3694人から162人減少(4.4%減少)したことを発表した。死者の前年比減少は3年連続。過去最悪だった「第一次交通戦争」と呼ばれた1970年の1万6765人と比較すれば、2割強にまで減少している。また警察庁が保有する1946年分以降の統計値としては最少の値となった(【e-Statから「道路の交通に関する統計」で検索】)。

スポンサードリンク


減少を続ける交通事故死者


交通事故による死者の状況を確認するため、まずは以前の統計値や今回発表された値(過去にさかのぼって一部修正が行われている)を照らし併せ、過去20年間における年間交通事故死者数の推移を確認する。冒頭でも説明したが、今統計値における「死者」は、事故発生から24時間以内に死亡した人数を指す。統計ではその他に30日以内の場合の「30日以内死者数」、さらには厚生労働省の公開値として「1年以内死者」も存在する(後述)。

↑ 交通事故死者(年間、人)(直近20年間)
↑ 交通事故死者(年間、人)(直近20年間)

多少の凸凹はあれど、確実に減少の一途をたどる状況が把握できる。2000年はイレギュラー的にわずかに前年比で増加したが、それ以外は過去20年間、交通事故による死者はおおよそ年々減少していた。

3年前の2015年分はわずか4人ではあるが増加に転じている。これは当時の報告書の解説文に「交通事故における致死率の高い高齢者の人口の増加が近年の交通事故死者数を押し上げる要因の一つとなっており、昨年の交通事故死者に占める65歳以上の高齢者の比率は過去最も高くなっております」「交通事故死者数が増加した要因としては、事故に遭った際の致死率が高い高齢者の人口が増加していることなどが挙げられる」と説明があり、高齢者の交通事故死者が増加したのが主要因であることが確認できる。過去にさかのぼって確認しても、若年層・中年層と比べて高齢者の死者数の減少度合いはゆるやかで、増加する年もしばしば確認でき、これが2008年ぐらいからの年間交通事故死者数の減少度合いのゆるやかさ、2015年の増加の原因と見て大体間違いは無い。

↑ 交通事故死者とそのうち高齢者(65歳以上)(人)
↑ 交通事故死者とそのうち高齢者(65歳以上)(人)

もっとも2018年においてはその高齢者の死者数も人数の上でも減少を示し、全体数も減少している。

元々高齢者は人数、全人口比率ともに上昇中であることから、若年層・中年層と比べて減少度合いがゆるやかであることは仕方が無いとする面もある。一方で、事故発生リスクそのものや、事故に遭遇した際の致死率は高齢者の方が高いのも事実。単に人口の増加だけでは説明できない要因もあることは否定できない。むしろその要因の方が、全体の交通事故死者数の減少率のゆるやかさや、全死者に対する比率増加傾向の原因としてウェイトが大きい。

今件発表値を用い、年間死者数の前年比(減少率)を算出したのが次の図。数字のプラスが大きいほど、死者数が減少している割合も大きいことを意味する。

↑ 交通事故死者前年比「減少」率(年間、プラスが大きいほど死者数の減少割合も大きい)(直近20年間)
↑ 交通事故死者前年比「減少」率(年間、プラスが大きいほど死者数の減少割合も大きい)(直近20年間)

前世紀末、2000年ごろまでは多少のぶり返し(死者数の前年比増加)もあった。しかし今世紀に入ってから、特に2005年以降は数年にわたり、減少率が上乗せされ、死者数が加速度的に減少している様子が実感できる。2008年以降は減少幅が落ち着きを見せ(高齢者の死者数減少度合いがゆるやかになってきた時期と一致する)、2015年では今世紀に入って初めて減少率がマイナス、つまり死者数の増加を示す結果となった。今回発表分となる2018年は2017年に続きプラスを示した、つまり死者数が減少したのは幸いではある。

別の視点・定義で変化を確認


先の定義解説にもある通り、今件における交通事故死者数はあくまでも「事故発生から24時間以内」のもの。発表を見聞きした人の中には「望みが無くとも24時間は延命させて、都合の悪い数字減らしをしているのでは。実際は事故状況は悪化しているかもしれない」と陰謀説を巡らせる人もいる。しかしその考えは間違いである。

次に示すのは事故発生から24時間に限定した今件報告書による死者数以外に、警察庁が別途集計している「30日以内」、さらには厚生労働省の統計(人口動態統計)に基づいた交通事故死者数などの動向を示したもの。今世紀に入ってからはすべての値が減少しているのが把握できる。

↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数
↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数

1960-1970年における「第一次交通戦争」は経済発展の中で自動車、特に商用車の急速な普及とともに、立ち遅れた交通行政と自動車社会に対する啓蒙不足、法整備不足を原因としている。そして平成元年からの数年間における「第二次交通戦争」は自動車交通の加速化に対して行政の対応が間に合わなかった(環境整備予算、人員数、若年層への啓蒙)とする意見が有力。

しかし第二次交通戦争以降は

・車両台数は増加、その後十年強の間は横ばい

・事故発生件数、負傷者数は上昇、その後横ばいから減少の傾向へ

・死者数(24時間以内、30日以内、1年以内)は一環して減少

の様相を見せている。特に事故発生件数と負傷者数は2004年から2005年にかけて減少したのを皮切りに、ようやく減少傾向に転じたのに対し、各種死者はそれ以前から一様に急速に減少しているのは注目に値する。

これら一連の減少傾向について警察庁のレポートなどによればその理由として、

・シートベルト着用者率の向上(【シートベルトとエアバッグのデータをグラフ化してみる-「戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる」後日談】なども参照)

・事故直前の車両速度の低下(安全運転の徹底化や取り締まり・法令強化、警告装置の充実)

・悪質・危険性の高い事故の減少(∴死亡事故が減る)

・歩行者の法令遵守

・自動車技術の進歩(エアーバック、ABS、車体構造、シートベルト)

・シートベルト着用、飲酒運転などに関する交通ルールの規制強化

・医学、生存技術の進歩による事故死の減少(事故数と負傷者数が比例していることも裏づけ)

などの複合効果による成果としている。一つ一つだけでは決定打となるものでは無いが、これらの対策が積み重なり、確実に交通事故による悲劇を減らしている。それは上記の各種データが語っている。

なお、やや蛇足ではあるが、交通事故全体の死者数は減少傾向にあるものの、自転車におけるそれは全体の減少と比べて減少率が緩やかな時期が最近まで続いていた。結果として交通事故全体に占める自転車事故の事故件数・死傷者率は横ばいから増加傾向にあった。昨今ではようやく比率の上でも減少を示し始めているが、事故率で2割近く、死者率で1割強と高い値には違いない(【自転車事故の交通事故全体比は2割を切る(最新)】)。自転車は自動車と比べて利用ハードルが低く、安全装置の類も自動車と比べて設置しにくいため、「万が一」の時の対応が難しい。さらに【警察庁、自転車の歩道通行への対応見直しを通知】でも指摘しているように、震災後は自転車利用者が急増して、多様な問題が発生している。「自転車だから」と油断せず、くれぐれもご注意されたい。

また繰り返しになるが、高齢者数の増加に伴い、高齢者が引き起こす交通事故、そしてその事故による死者数のさらなる増加は容易に想像できる。交通事故は当事者だけで無く周囲の人も巻き込む可能性が多分にあることを考慮すれば、早急に法令の改正も併せ対応が求められるに違いない。


■関連記事:
【60-70代の自動車運転者、4割は毎日運転・地方居住者は5割近くも】
【年齢で一律規制派23%、個人の能力次第で規制63%…高齢運転者への対応要望】
【40代男性の過半数が「居眠り運転事故」を起しそうになったと自覚】
【警察庁、自転車の歩道通行への対応見直しを通知】
【視界に留まると自車の速度計を再確認したくなる自動車】

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2019 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー