医師数の変化をグラフ化してみる(2015年)(最新)

2015/12/21 05:20

高齢化の進行や医療技術の発達による各種疾病の早期発見化に伴い、これまで以上に注目が集まるようになりつつある医療環境。そして各地域の医療環境を支える要となるのは病院施設と、その中で働く医師や看護師の方々。そこで今回は、それらの要素のうち医師数の動向について、厚生労働省の公開資料を基に現状の確認をしていくことにする。

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増え続ける精神科医、減る外科・産婦人科・小児科医


元データとして用いたのは厚生労働省の【医師・歯科医師・薬剤師調査】。これは2年おきに行われている調査で、現時点では2014年分のものが最新のデータとして公開されている(2015年12月17日付)。まずは入手可能なもっとも古い値である1994年のデータを基準とし(糖尿病内科(代謝内科)のみ公開値でもっとも古い2008年分が基準値)、主要診療科別医師の推移をグラフ化する。各診療科別の医師の増減動向が把握しやすい図となっている。また合わせて直近2014年時点における主要診療科の医師数(重複カウント)も掲載しておく。なお医療施設従事医師総数は重複計算では無い。

↑ 医療施設従事医師数の年次推移(診療科名)(複数回答、各科の1994年を1.0とした時の推移)(糖尿病内科のみ2008年が1.0)
↑ 医療施設従事医師数の年次推移(診療科名)(複数回答、各科の1994年を1.0とした時の推移)(糖尿病内科のみ2008年が1.0)

↑ 医療施設従事医師数(主な診療科)(診療科は複数回答)(2014年)
↑ 医療施設従事医師数(主な診療科)(診療科は複数回答)(2014年)

一見して把握できるのは、総数もあわせ多くの科の医師数が増加している一方で、外科と産婦人科・小児科が減少を続けている実態。ただし産婦人科については社会問題化したこともあり、やや持ち直しの機運が見られる。また内科も少しずつ数を回復しつつある。

またグラフ中にも記しているが、2008年に診療科名の定義が細分化されたこともあり、調査項目も変更されている。それによる差異が2006年までと2008年以降には生じている。内科は2004年から減少しているとはいえ、2008年の急落はこの調査項目の変更によるところが大きいと見て良い。

糖尿病内科は基準値が唯一2008年分のものであるにも関わらず、その上昇度合いは今回取り上げた診療科の中では精神科に続き高い値を示している。元々数が少なかったのも要因だが、同時に需要が急増した結果にも違いない。、

とりわけ下落が著しい外科・産婦人科・小児科の減少が再確認できるのが次のグラフ。1994年から2014年における変移を計算したものだが、産婦人科は1割近く、小児科は1割以上、外科は2割近くも減少している。

↑ 医療施設従事医師数推移(1994年→2014年)
↑ 医療施設従事医師数推移(1994年→2014年)

ただしこちらも上記にある通り、診療科名の定義変更による誤差が(特に外科で)生じている可能性に留意しておく必要がある。精神科が需要に応える形で増加しているのをはじめ、ほとんどの科で増加している。それゆえに外科と産婦人科、小児科の減り具合が目立つ。また、内科が減少に転じているのは意外なところか。医療の発達で治療内容が専門化しているのが一因かもしれない。

ちなみに「複数回答」ではなく「主たる診療科」で答えてもらった場合の医師「数」は、次の通りとなる。

↑ 医療施設従事医師数(主たる診療科名)(2014年)
↑ 医療施設従事医師数(主たる診療科名)(2014年)

圧倒的な内科の多さ、整形外科の意外な多さが見て取れる。直上で「内科医師が減少傾向」としたが、需給上のバランスも考えられよう。

都道府県別産婦人科医の密度を探る


昨今では特に問題視されている産婦人科・産科及び小児科について、その資格を有する主たる医師数(その診療科のみの医師と、複数の診療科に従事しているが主には対象となる診療科に従事している)を、それぞれの都道府県別で、産婦人科・産科は「15-49歳女性人口10万人比で」・小児科は「15歳未満人口10万人比で」算出したのが次のグラフ。例えば産婦人科・産科では東京都は48.9人なので、産婦人科を利用する可能性が高い15-49歳女性10万人あたり、該当医師は48.9人いることになる。逆算すれば該当人口2045人あたり産婦人科医師が1人。

↑ 15-49歳女性人口10万人対「産婦人科・産科」資格取得医療施設従事医者数(2014年末)
↑ 15-49歳女性人口10万人対「産婦人科・産科」資格取得医療施設従事医者数(2014年末)

↑ 15歳未満人口10万人対「小児科」資格取得医療施設従事医者数(2014年末)
↑ 15歳未満人口10万人対「小児科」資格取得医療施設従事医者数(2014年末)

該当人口数比率で産婦人科・産科医が一番多い都道府県は長崎県。次いで徳島県、島根県、和歌山県が続く。少ないのは埼玉県で28.4人となり、2倍強の開きがある。とはいえ、その長崎県でも人数は57.0人。産婦人科医1人あたりで逆算すると1754人にもなる。

また小児科は東京都がもっとも多く153.4人、次いで鳥取の152.0人。一番少ないのは茨城県の75.3人で次いで埼玉県の77.1人。鳥取県は産婦人科・産科でも50人を超え上位にあり、埼玉県は産婦人科・産科では一番少ない都道府県。多様な事情がありそうな雰囲気ではある。



たびたび報道されることで、あるいは自分自身や周辺の人が実感して状況を把握している人も多いだろうが、特に産婦人科の医師数の少なさは社会問題化している。その産婦人科や外科では、一部の過剰・偏向報道がきっかけで風当たりが強くなり、訴訟リスクが急増し、いくら医師(予備軍)本人の志が高くとも「現状では続けることはかなわない」と医学の道を断念したり別の診療科へシフトする人が相次いでいる。

もっとも尊い「生命の誕生」にたずさわる者たちが、半ば「いらぬ茶々」、さらには加害側の名誉欲のために仕事を追われ、あるいは志を断念させられる状況は健全とは言えない。一部の声高な人のため、ではなく出来る限り多くの人のため、そして正しい選択をしている人のため、しかるべき人が働き、動ねばならない。


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