救急車の病院収容時間などをグラフ化してみる(最新)

2019/01/31 10:34

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2019-0131総務省消防庁は2019年1月11日、2018年版「救急・救助の現状」を発表した。それによると119番通報を受けてから対象患者を病院に搬送するまでの全国平均時間は、2017年(中)においては39.3分であったことが明らかになった。これは2016年(中)の39.3分と同じ時間となる。また通報を受けてから現場に到着する時間は8.6分となり、こちらは2016年の8.5分から0.1分延びる結果となった。救急搬送時間の長さが問題視される昨今だが、高齢化の進行や軽症あるいは不必要な状況での緊急出動要請の増加による、救急体制のオーバーフロー的な状況や、病院数そのものの不足などで、搬送先の病院がすぐには見つからない状況にあるのが原因と推測される。

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増加する需要に伴い遅延化する救急搬送体制


「救急・救助の現状」は現在【救急・救助の現状(消防庁)】にて閲覧が可能。まずここから、2019年1月11日に発表された「2018年版(2017年分が最新値)」のものを含む、さかのぼれる1998年中以降における「救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均」をグラフ化する。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均

「現場到着時間」とは通報を受けてから現場に着くまで、「病院収容時間」とは通報を受けてから現場に到着し、対象患者を収容して病院に収容するまでの時間を意味する。いずれの時間も年々おおよそ延びているのが分かる。他方、ここ5年ほどの間はほぼ横ばいでの推移となっており、救急側の対策と搬送人員数の増加がほぼ均衡している状況にあることがうかがえる。

「病院収容時間」には「現場到着時間」も含まれるため、今グラフでは違いが今一つ分かりにくい。そこで「現場到着時間」と、「現場到着後の病院収容までの時間」を当方で逆算して積み上げグラフにしたのが次の図。各年の赤と青によって構成された棒全体の長さが「病院収容時間」となる。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均

現場に到着するまでの時間も、そしてその後病院に収容されるまでの時間双方とも少しずつ延びている。そして直近5年ほどの間は0.1分=6秒ほどの振れが生じている程度で大きな変化が無い状態が続いている。ちなみに「現場到着後病院収容までの時間」は「現場到着時間平均」の何倍かを算出したが、大きな変化は無い。

↑ 「現場到着後病院収容までの時間平均」は「現場到着時間平均」の何倍か
↑ 「現場到着後病院収容までの時間平均」は「現場到着時間平均」の何倍か

「現場に到着するまで」「現場に到着してから」のどちらか一方だけに、収容されるまでの時間が延びている原因があるわけでは無い実態が確認できる。

進む高齢化、不必要案件の呼び出し、そしてオーバーフロー


「病院収容時間」などの時間が延びている原因はいくつか推測でき、「救急・救助の現状」を基に毎年消防庁が分析の上で提供している消防白書でも、問題点として指摘している。そのうちの大きなものが「軽症患者、あるいは救急搬送が不必要な事例による出動が増え、救急活動がオーバーフロー気味となっている」と「高齢者の呼び出しによる出動回数の増加」。その実情を過去のデータも含めて確認する。

まずは傷病程度別運搬人員の状況。もっとも古い1998年から直近の2017年までのデータを用いて算出して比較したもの。軽症者比率はほぼ横ばいで、中等症者(3週間未満の入院が必要な病症な者)比率が増加、重症者以上が減少している。

↑ 救急自動車による搬送人員数(傷病程度別、比率)
↑ 救急自動車による搬送人員数(傷病程度別、比率)

ただしこれは全搬送者数に対する比率。1998年当時は約354万人だった搬送者も10年後の2008年には約468万人、そして直近の2017年では約573万人にまで増加している。その上で比率に変化があまり無いことから、軽症の搬送者数は増加していることが分かる。もっともここ数年ではそれ以上に、中等症者が増加しているが。なお中等症搬送者の49.5%は高齢者(65歳以上)で占められている(2017年)。

↑ 救急自動車による搬送人員数(傷病程度別、人)
↑ 救急自動車による搬送人員数(傷病程度別、人)

ケガにしても病気にしても本人自身ではその重度が判断しにくい。「軽症に思えるのなら救急車は呼ぶな」との意見に正当性は無い(当方(不破)がかつて入院した際には自分の足で病院までたどり着いたが、後に「無理をせずに救急車を呼べ」と主治医から叱られた経験がある。入院日数から勘案するに重症判定だったので当然ではあるが)。しかし同時に、数字の上ではこのようなデータが出ている事実を認識しておく必要はある。

もう一つは年齢階層別区分。消防庁でも年齢階層別構成に係わる問題については近年注視しており、2008年以降からデータを用意している。

↑ 救急自動車による搬送人員数(年齢階層別、比率)
↑ 救急自動車による搬送人員数(年齢階層別、比率)

今回の記事で都合10年分の値が蓄積されたことになるが、明らかに高齢者の比率が上昇しているのが確認できる。また確定値が出ている直近の国勢調査(2015年実施)の人口比も併記したが、高齢者の搬送比率が人口比よりはるかに多いのも一目瞭然。

病状の悪化やケガの発生比率を考えれば、高齢者搬送比率が人口比率より高いのは当然の話。しかし一方で、【高齢者人口3557万人で過去最多、総人口比は28.1%に(2018年・敬老の日)】などにもあるように、人口比率の変移と比べても非常に高い上昇率を示しているのが気になるところだ。あるいは「高齢者」(65歳以上)区分の中でもよりリスクの高い年齢層の比率・絶対数の増加によって、必然的に搬送人数が増えていると見た方が妥当かもしれない。

ちなみに直近年における、高齢者に区分される年齢階層をさらに細分化した搬送人員状況は次の通り。

↑ 救急自動車による搬送人員数(65歳以上の内訳、年齢階層別)(2017年)
↑ 救急自動車による搬送人員数(65歳以上の内訳、年齢階層別)(2017年)

年を取れば取るほど傷病リスクは高まるのだから当然ではあるが、単純な人口比と比べて、年が上の方が搬送人員数の比率は高いものとなっている。単純試算だが2017年においては、85歳以上の23.0%は救急自動車で搬送されたことになる(65-71歳は5.3%、75-84歳は11.8%)。無論、1年間で複数回搬送された事例もありうることから、実際にはもう少し低い比率になるのだろうが。

消防庁でも限られたリソースの中で、できる限りの効率運用を成して状況の改善を図るべく、さまざまな施策を打ちだしている。消防本部の拡大(広域化)により管轄区分に伴う問題点(距離的には近いが管轄外のため出動対象とならず、現場に車両が到着する時間が遅れること)、人員配置の効率化と充実、体制の基盤強化などを推し量ったり、複数の消防司令本部の業務を1か所の消防指令センターで共同運用する「消防指令業務の共同運用」などがよい例である。しかし急増する対応事例には応じきれず、病院収容時間などが延びてしまっているのが現状。状況の改善のためには救急体制の抜本的な改革(例えば論議に挙がっている、救急搬送の一部有料化による、実際には救急車の利用が必要の無い病症者の利用減少模索)や、投入リソースの増強が求められよう。


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