救急車の病院収容時間などをグラフ化してみる(2015年)(最新)

2015/12/23 16:28

総務省消防庁は2015年12月22日、2015年版の消防白書を発表した。それによると119番通報を受けてから対象患者を病院に搬送するまでの全国平均時間は、2014年中においては39.4分であったことが明らかになった。これは2013年の39.3分より0.1分遅い計算になる。また通報を受けてから現場に到着する時間は8.6分となり、これは2013年の8.5分より0.1分遅い。高齢化の進行や軽傷あるいは不必要な状況での緊急出動要請の増加による、救急体制のオーバーフロー的な状況や、病院数そのものの不足などで、搬送先の病院がすぐには見つからない状況にあるのが原因と推測される。

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増加する需要に伴い遅延化する救急搬送体制


消防白書は現在【消防庁内の収録ページ(刊行物、映像データ等)】にて閲覧が可能。まずここから、2015年12月22日に発表された「2015年版(2014年分が対象)」のものを含む、さかのぼれる1998年中以降における「救急自動車による現場到着時間平均と病院収納時間平均」をグラフ化する。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均

「現場到着時間」とは通報を受けてから現場に着くまで、「病院収容時間」とは通報を受けてから現場に到着し、対象患者を収容して病院に収容するまでの時間を意味する。いずれの時間も年々増加の傾向を見せているのが分かる。

ただし「病院収容時間」には「現場到着時間」も含まれるため、今グラフでは違いが今一つ分かりにくい。そこで「現場到着時間」と、「現場到着後・病院収容までの時間」を当方で逆算して積み上げグラフにしたのが次の図。各年の赤と青によって構成された棒全体の長さが「病院収容時間」となる。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間

現場に到着するまでの時間も、そしてその後病院に収容されるまでの時間双方とも少しずつ、だが確実に伸びている(ただし直近2014年に限れば、「現場到着後病院収容までの時間」は前年比で変わらすの結果が出ている)。ちなみに「現場到着後病院収容までの時間」は「現場到着時間平均」の何倍かを算出したが、大きな変化はない。

↑ 「現場到着後病院収容までの時間」は「現場到着時間平均」の何倍か
↑ 「現場到着後病院収容までの時間」は「現場到着時間平均」の何倍か

「現場に到着するまで」「現場に到着してから」のどちらか一方だけに、収容されるまでの時間が伸びている原因があるわけでは無い事が分かる。

進む高齢化、不必要案件の呼び出し、そしてオーバーフロー


「病院収容時間」などの時間が伸びている原因はいくつか推測でき、白書でも問題点として指摘している。そのうちの大きなものが「軽症患者、あるいは救急搬送が不必要な事例による出動が増え、救急活動がオーバーフロー気味となっている」と「高齢者の呼び出しによる出動回数の増加」。それを裏付けるデータを、過去の消防白書のものも含めたデータを元にグラフ化する。

まずは傷病程度別運搬人員の状況。もっとも古い1998年から直近の2014年までのデータをもとに算出して比較したもの。軽傷者比率はほぼ横ばいで、中等症者(3週間未満の入院が必要な病症な者)比率が増加、重症者以上が減少している。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)

ただしこれは全搬送者数に対する比率。1998年当時は約354万人だった搬送者も10年後の2008年には約468万人、そして直近の2014年では約541万人にまで増加している。その上で比率に変化がないことから、軽傷の搬送者数は大幅に増加していることが分かる。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)

ケガにしても病気にしても本人自身ではその重度が判断しにくい。「軽傷に思えるのなら救急車は呼ぶな」との意見に正当性は無い(当方(不破)がかつて入院した際には自分の足で病院までたどり着いたが、後に「無理をせずに救急車を呼べ」と主治医から叱られた経験がある)。しかし同時に、数字の上ではこのようなデータが出ている事実を認識しておく必要はある。

もう一つは年齢階層別区分。消防庁でも年齢階層別構成に係わる問題については近年注視しており、2008年以降からデータを用意している。

↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送
↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送

今回の記事で都合7年分の値が蓄積されたことになるが、明らかに高齢者の比率が上昇しているのが確認できる。また確定値が出ている直近の国勢調査(2010年実施)の人口比も併記したが、高齢者の搬送比率が人口比よりはるかに多いのも一目瞭然。

病状の悪化やケガの発生比率を考えれば、高齢者搬送比率が人口比率より高いのは当然の話。しかし一方で、【高齢者人口3384万人で過去最多、総人口比は26.7%に(2015年・敬老の日)】などにもあるように、人口比率の変移と比べても非常に高い上昇率を示しているのが気になるところだ。あるいは「高齢者」(65歳以上)区分の中でもよりリスクの高い年齢層の比率・絶対数の増加によって、必然的に搬送人数が増えていると見た方が妥当かもしれない。

消防庁でも限られたリソースの中で、できる限りの効率運用を成して状況の改善を図るべく、さまざまな施策を打ちだしている。消防本部の拡大(広域化)により管轄区分に伴う問題点(距離的には近いが管轄外のため出動対象とならず、現場に車両が到着する時間が遅れること)、人員配置の効率化と充実、体制の基盤強化などを推し量ったり、複数の消防司令本部の業務を1か所の消防指令センターで共同運用する「消防指令業務の共同運用」などが良い例である。しかし急増する対応事例には応じきれず、病院収容時間などが伸びてしまっているのが現状。状況の改善のためには救急体制の抜本的な改革(例えば論議に挙がっている、救急搬送の一部有料化による、実際には救急車の利用が必要ない病症者の利用減少模索)や、投入リソースの増強が求められよう。


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