紙媒体は下げ幅を縮小するも減退傾向に変わりなし、オンラインは復調だが金額は微少…米新聞社広告費動向(2012年3Q)

2012/12/31 20:00

アメリカの新聞業界が厳しい状況に置かれているのはご承知の通りで、その実情を推し量るために部数や広告売上の推移を、アメリカの新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」が公開しているデータを基に、今サイトでは定期的に確認している。広告費動向に関しては最新データを基に年次分を【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年分まで)】で、四半期別のものを2012年2Qまで以前記事にした。先日、四半期単位のデータの更新が確認できたため、今回は2012年3Qまでのデータ更新と状況チェックを行うことにする。

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データの取得場所や広告の種類に関する説明はまとめ記事【定期更新記事:米新聞社広告費動向(Q単位)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

21世紀への突入以降、2009年までは米新聞の広告収入は右肩下がりだったものの、2010年にはさすがにリバウンドした。リーマンショックの影響もあり、大きく下げた前年の値との比較であることも一因。しかしそのリバウンドも2011年には早くも失速し、再び下降方向へ……という流れは、以前の年次分更新記事でお伝えした通り。

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率)
↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率、2011年分まで)(再録)

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)
↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)(2010年分まで)(再録)

「リバウンド」とはいえ、前年比プラスなのはオンライン(インターネット、以下同)だけで、紙媒体は総じて「マイナス度合いが改善された」に過ぎず、マイナス(前年と比べて減っている)であることに違いは無い。そしてそれらの復調への動きも2011年にはすべて失速している。つまり売上減退度が加速している。

そして今回取得した直近四半期こと2012年第3四半期のデータがこちら。良い機会でもあるので、もう四半期さかのぼった分(2012年第2四半期)のデータも併記しておいた。なおそれぞれは「前年同期比」であることに注意。直前期との比較では無い。つまり「第4四半期はよく広告が売れ、売り上げが伸びる」といった、季節特性などによる影響は受けない。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2012年2Q-3Q)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2012年2Q-3Q)

唯一プラスなのは「オンライン広告」だけだが、しばらくこの状態が続いている。そろそろ紙媒体でもプラスの局面を見たいものだが、現状ではそれは無理のようだ。他は全部前年同期比1割足らずの減少。総合計「紙媒体+オンライン合計」がマイナス5.10%とややひかえめなのは、オンライン広告の奮闘によるところが大きい。

今四半期は全部の項目で、前四半期と比べて状況が改善されている。ただしオンライン広告以外は「改善」とはいえ、前年同期比で額面上はさらに落ち込んでいることに違いは無い。下げ幅が緩やかになっただけの話で、増加してはいないことに注意。

ちなみに金額ベースの最新四半期分グラフは次の通り。伸び率ではオンラインが唯一プラスで奮闘しているものの、金額では新聞全体を支えるには程遠いのは、日本の状況とさほど変わらない。

↑ 米新聞の広告収入(四半期区分)(億ドル、2012年3Q)
↑ 米新聞の広告収入(四半期区分)(億ドル、2012年3Q)

米新聞広告関連の記事で繰り返している「オンラインは復調」「紙は低迷・縮小を続ける気配」は今期2012年第3四半期の広告費にも現れている。アメリカにおいてメディアの最適化、構造変化は確実に歩みを進めている(オンライン系ですら、適切な需要把握を行った上で展開が行われないと、市場競争に敗れることになるのは、【米The Daily、iPad版を廃刊...読者不足で赤字のため】などの実例にある通り)。さらにオンライン広告も昨今ではかつてのような急上昇ぶりが見られなくなり、「現状の」新聞における広告プラットフォームとしての価値の「これまで以上に辛辣な」再評価が行われている。

それがより確実に把握できるのが、次の「四半期単位の前年同期比推移」を金融危機が起きた2007年からグラフ化したもの。今回もリーマンショックによる広告需給の大幅悪化から立ち直りを見せ始めた、2009年からのものも併記し、直近5年間における動きを確認する。

金融危機以前から紙媒体の低迷とオンラインの堅調ぶりという動きがあり、それが不景気の波にもまれて両者とも低迷。そして上限を抑えられるような形になったものの2009年後期からは戻しを見せるが、紙媒体の戻りは限界を迎えて失速し、再び低迷を続け、さらにはオンラインも成長度合いが頭打ち状態なのが把握できる。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2007年-)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2007年-)

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2009年-)
↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2009年-)

2011年に入ってからオンラインですらも成長スピードが落ちている(成長そのものはしている)実態がイレギュラーなものではなく、継続的な流れなのが確認できる。インターネット内での囲い込み(具体的にはFacebookなどのソーシャルメディア)競争で、新聞がじりじりと有望分野ですら競り負けつつあるのが想像できる。ただし今回四半期では前回に続き、上昇率も持ち直しを見せており、底打ち・反転の兆しが見受けられる。額面上ではまだ少数勢力だが、成長さえ継続していれば、いつかは業界全体を支える大黒柱にまで成長するはず(何年かかるかは定かではない)。

他方紙媒体広告も下げ幅を縮小する動きを見せるが、それでもいまだにマイナス圏には違いない。今グラフは「前年同期比」であり、絶対額面ではないことに注意。つまりマイナス圏に居る以上、売り上げは落ち続けていることになる。

今後アメリカの新聞業界がどのような形で切り返しを図るのか、それとも状況に流されるまま、収入、そして規模そのものの縮小を続けるのか。日本の新聞業界の行く先を占う観点でも、定点観測による注視を続けたいところだ。

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