エジプトは「革命」後の混乱に拍車がかかり…(国債デフォルト確率動向:2012年12月)

2012/12/15 16:00

以前2010年12月17日の記事で説明したように、経済動向を推し量るのを目的とし、債権リスクを示す指針の一つCPDを元に、主要国・地域の国公債のデフォルト確率上位国を2010年12月から1か月単位で確認している。今回は2012年12月分として、同月15日時点の数字についてグラフ化を試みることにした。

スポンサードリンク


国公債のデフォルト確率を意味するCPD(5年以内のデフォルト可能性)の細かい定義、データの取得場所、各種概念は一連の記事まとめ【定期更新記事:CPD(国公債デフォルト確率)動向】で解説しているので、そちらで確認してほしい。

今件のグラフは日本時間で2012年12月15日、つまり(日本時間で)本日取得したばかりの一番新しいデータで生成している。前回も掲載されていた国・地域については前回値を併記している。

↑ 国債・公債のCPD上位10位(市場が見なしている、今後5年間でのデフォルト確率)(2012年12月15日時点)
↑ 国債・公債のCPD上位10位(市場が見なしている、今後5年間でのデフォルト確率)(2012年12月15日時点)

二か月前の記事でも触れているが、欧州中央銀行が財務危機対策・ユーロ防衛策の一環として、国債の無制限買取について合意したことを受けて、EU諸国のCPDは一端大きく後退した。また、ユーロ圏内では債務危機のピークを越えたであろうとの観測も一部で見られ、それと共に「危機対応(の財政緊縮)」から「構造改革」「競争力向上」に移すべきだとの意見もある。

一方アメリカでは先日、連邦公開市場委員会においてFRB(アメリカ連邦準備理事会)による景気対策として、失業率ベースでの判定ラインを元にした金利対策を行うと発表。これもCPDの下落に貢献している。

これらの動向を反映してか、今月のCPDは押し並べて下落傾向にある。ギリシャはともかく、アルゼンチン、ポルトガルなどでの大きな減少幅が目に留まる。

また先月同様、アメリカの州(公債)が2つも入っているのが目に留まる。同国の州レベルでの財務状態の厳しさが、改めて思い知らされる。両州は財政上の負債額が極めて大きく、今リストに顔を連ねるのも当然といえる。そして先月比を見ると、ヨーロッパ諸国などの下げ方と比べ、減少幅が小さいのが気になるところ。

今回の上位陣グラフでは、矢印で示したようにポルトガルの下げ幅とエジプトの相対的順位上昇が目に留まる。ポルトガルの減少理由は上記にある通りだが、エジプトは昨年起きた「革命」後の勢力争い的な混乱に拍車がかかっており、社会的秩序を期待するのが難しい状況にある。これがCPDそのものは減少しても、順位上昇となった(つまり他国と比べて状況収拾度合いが小さい)原因かもしれない。


↑ 混乱が続きデモが相次ぐエジプトの状況を報じたニュース映像(RT 公式)
↑ 混乱が続きデモが相次ぐエジプトの状況を報じたニュース映像(RT 公式)。【直接リンクはこちら】

また、EU諸国の債務問題に対して、各国の合意や支援組織から援助対象となる国に対する支援条件、要請政策は概して緊縮財政の類。「無駄遣いに過ぎるから負債が増える」という考えに基づいたものだが、各国市民からは反発も強く、選挙絡みで債務問題解決の動きに大きな影響を与えている。昨今ではIMF自身も【焦点:IMFが緊縮一辺倒の過ち認める、遅すぎた方向転換(ロイター)】にある通り、緊縮一辺倒の方針が過ちであることを認める姿勢を見せており、また上記の通り、施策そのものを足固めから成長戦略に移行すべきだとの意見も増えている。上がり続ける失業率と経済の困窮化が限界に近づきつつあることが、背景にあるようだ。

↑ スペインの困窮を伝えるニュース映像(RT 公式)。
↑ スペインの困窮を伝えるニュース映像(RT 公式)。タイトルは「失業で希望無し」。

なお日本の国債に対する値は4半期ごとに更新されるCMD Visionのリスクレポートの最新版【2012年第3四半期リスクレポート(CMA Release Global Sovereign Credit Risk Report Q3 2012、PDF)】で確認できる。それによると、CPDは6.9%で順位は17位。前四半期の2012年第2四半期の7.5%・9位と比較すると、状況自身は改善、相対順位は悪化。CPDの算出上では、日本の財務状況回復の歩みは上位他国と比べて緩やかだと判断されているようだ。

日本の企業動向、株式市場にも大きな影響を与えている、そしてCPDの動きにも(間接的に)影響を及ぼしている(ユーロ安はユーロ圏の財政が不安定化しているのが最大要因。そして財政不安状態はそのままCPDの上昇につながる)ユーロ動向だが、ここしばらくは欧州中央銀行の動きを受け、そして上記にあるように楽観論の拡大化や、衆議院解散後は日本の政局への期待などもあり、大きくユーロが戻し、1ユーロ105円-110円の領域にある。

↑ ユーロ変移(対円、終値、2011年1月3日-2012年12月13日)
↑ ユーロ変移(対円、終値、2011年1月3日-2012年12月13日)

大きく経済・政治動向が動くこのような状況だからこそ、失業率の動向と合わせ、債券リスクに絡むCPDの値は、各国の、特にEU諸国の経済情勢をかいま見る有効な指標の一つとなりえる。今後も失業率同様、CPD値には注意深く監視の目を向けたいところだ。


■関連記事:
【若年層の失業率、スペイン55.9%・ギリシャ57.0%…ヨーロッパの失業率をグラフ化してみる(2012年10月分)】
【最近よく聞くキーワード「CDS」とは?】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー