博報堂の「新聞」のみプラス、4マスの弱さが際立つ状況(電通・博報堂売上:2012年11月分)

2012/12/12 07:30

【博報堂DYホールディグス(2433)】は2012年12月11日、同社グループ主要3社の2012年11月における売上高速報を発表した。これで【電通(4324)】が同年12月7日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2012年11月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めることにする。

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電通と博報堂では毎月最新の種目別売上高・速報を発表している。種目の呼び名には多少の違いがあるが、区分としては共通のものを利用しており、並べて比較することが可能。電通は【こちら(PDF)】にあるように単独会社のデータが公開されているが、博報堂は子会社の主要3社の単体月次売り上げがそれぞれ併記された形。そこで後者では3社の合計を最新データと1年前のデータそれぞれ当方で計算し、その上で前年同月比を改めて当方で算出。その結果を反映させたグラフが次の図。

二大広告代理店の2012年11月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2012年11月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではほぼ終息。そして昨今では震災以前からの広告業界・メディアのトレンドを継続する形が続いている。中期的な概況としては「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っているが、テレビがやや戻しの動きを見せる」「デジタル系、そして屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」というもの。

今回月・2012年11月分の特徴としては、一言でまとめると「4マスの弱さが際立つ状況」。全18項目(2社9項目ずつ)のうちプラスは10項目に達するが、そのうち4マス以外が9つを占めている。4マスのプラスは博報堂の「新聞」しかない。比較対象となる1年前の記事を見ると、インターネットやマーケティング・プロモーションは大きく下げており、今回月はその反動によるところも少なくない。一方4マスの多くも下げており、本来なら反動によるプラスが期待できるのだが、今回月もまたマイナスが続いている。状況は総じて悪化していると見て良い。

現状をさらに把握するため、参考値として電通・博報堂それぞれにおける「一昨年前の値」との比較を算出し、グラフを生成しておく。基準値を設定してその値に「前年における前年同月比」「今件の前年同月比」を順番に掛けただけだが、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2012年11月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2012年11月度単体売上(前々年同月比)

博報堂2012年11月度単体売上(前々年同月比)
↑ 博報堂2012年11月度単体売上(前々年同月比)

今回計測週での試算では、両社共に4マス中「その他」が大きなプラスを見せている(奇しくも同じ比率。記述ミスではない)。額面も博報堂はともかく電通はそれなりに大きな額で、気になるところだが、この項目については以前触れた通り、

●「その他」
電通……衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメントその他コンテンツなどの業務が含まれます
博報堂……スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツ等に関する取引が含まれております。

とだけあり、具体的内容・詳細は不明。マネジメントやアイディア出しなど、広告周りの細々とした作業の集約(、そして対象メディアを区分・特定せずに集計されたもの)と見るべきか。また、昨年の同月も同様の傾向を見せているところから、この時期には事業が集中する傾向があり、かつこの一、二年はさらに成長を続けている可能性が高い。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値について説明しておくが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、額面の絶対額を意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。

電通・博報堂HDの2012年11月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2012年11月における部門別売上高(億円、一部部門)

電力需給のひっ迫感は相変わらずどころか政治的要因などで昨年よりも悪化し、今夏は半ば強制的な節電により多くの経済的・機会的・健康面などで被害が生じた(【IEEJ発「今夏電力需給」と「震災後の電力需給分析」】【続く節電要請・逃げる企業…関電管轄内企業の「今後も節電継続」の場合の対応は?】など参考)。そして今冬も主に北日本、とりわけ北海道電力管轄において、同様の逼迫的な状況が進行中であり、さらに国富の膨大な浪費が進行中である(【冬の「ようせい」】)。

そのような電力事情下の中、自動販売機や電灯など、電力を常用する公的あるいはそれに準じる施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、搭載され、実働を果たしている。

つり革広告新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」もまた、地震直後のような「全面電源オフ」という状況からは復帰しているものの、積極的な節電の「強要感」は深く浸透し、以前ほどの活力・積極性は見られない。「全国規模で」電力浪費(「に見えるので叩かれやすい」)による非難リスクを自然に避ける、自主規制をする傾向がある。デジタルサイネージが撤去される、各小売店でも昨年以上・過剰とも見えるまでの、身を削る形での節電状況が随所で確認されている(例えば照明一つにしても、明るさが落ちればマーケティングの上では確実に売上にマイナスの影響が出る)。

そのような状況なら電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告に注目が集まるのは自然の流れ。昨今の「4マスとネット以外の堅調さ」も、社会的状況が影響しているものと考えられる。これからは従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用・併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、慣習にとらわれることなく、費用対効果の高い、そして同時に効果が把握しやすい広告手法が求められる。その動きはすでに見え始めている。

他方、今回2012年11月の4マスの下げ方は、先月覚えた違和感はないものの、景気そのものの後退感の香りがする。経済産業省の広告費データを見ても、それを否定することはできない。震災の影響はもちろんだが、その前後も合わせた経済的な方策への無策、そしてそれを後押しする形で短期的な利益を得ようとしていた4マス自身の行動の「成果」が出始めているのかもしれない。今後も広告費動向を注意深く見守りたいところだ。

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