パーム油が豊作で油脂指数を押し下げる(2012年11月分世界食糧指数動向)

2012/12/07 11:55

以前の記事で、国連食糧農業機関(FAO)発表が毎月定期的に発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることをお知らせした。今値はFAOが1990年以降に、世界の食料価格の月ごとの変化を定期的に精査した上で発表している値で、これが高値をつけていることは、世界の食料市場が高値圏にあることを意味する。当然、昨今の各種商品市場の動向や政治情勢にも相関関係的な関係がある。そこで当サイトでも定期的にデータの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2012年11月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認を願いたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年11月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向を示している。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年2012年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。最近ではややもみあいの雰囲気が続く中、今回11月分では需給バランスの崩れ気味な油脂、そして砂糖は大きく下げたが、他の項目はもみ合いの中にある。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値が確認できる。これは干ばつによる砂糖の不作(産地として有名なブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、その後はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降にグラフ生成期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年11月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動の結果。しかし価格上昇の原因である「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返していた。昨今ではこの下値抵抗線を破る形で値を下げており、豊作による供給増加や、不景気による甘味需要の減退が見えてくる。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年11月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年11月)

昨年同月と比べれば穀物以外は低い水準ではあり、砂糖は特に前年同月比で2割も下げている。一方で穀物は上記折れ線グラフと合わせ見れば分かるように、この20年来における最高値圏に近づいており、今後の収穫・市場動向次第では最高値の更新も十分にありえる状況が続いている。

リリースでは今月の動きについて「穀物は天候不順などを起因とするトウモロコシの価格上昇以上に、供給増加による米や小麦価格が下落したことで、全体的には下落した」「油脂は先月同様に世界的な消費の減退、東南アジアでのパーム油の豊作などが要因で価格を下げる」「食肉は豚肉以外はほぼ前月から変わらず。価格がほぼ横ばいなのに対し、飼料価格が大きく上昇しているため、畜産業者の利益は減退している」「乳製品のわずかな増加は、供給の不安定さに起因するもの。ただし供給量が増加を見せており、需要をサポートするだけの量は確保できているため、全体的に価格は安定している」「砂糖は最大輸出国ブラジルで来年大きな輸出量が期待できることを反映して値下がり」などとある。

食料価格の上昇は一般市民の日常社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる(原文でも食肉や乳製品のコメントでそのあたりの話が出ている)。その観点から考えると、食料品の大幅な価格変動、特に価格上昇は好ましい話ではない。価格の不安定化、上昇の雰囲気が強く出ている昨今の動向は世界情勢との連動性も合わせ、頭の痛い話ではある。



食料価格の上昇要素は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で乗数的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は見つけにくい(科学技術の進歩による品種改良も、地力を下げるリスクが多分にある)。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと構造的には何ら変わりがない。

20年来高値間近となり、特に気になる穀物の動向だが、多くの作物地帯での干ばつによる影響が懸念されている。現時点では輸出大手国の「輸出制限をしない」との声明で価格上昇は抑えられているが、収穫時の取れ高が明らかになるにつれ、被害の実態が明確化され、場合によってはさらに各穀物の価格、そして穀物指数を押し上げることになるものと考えられる。【農林水産省の海外食料需給レポート(2012年11月分)】によると、”ウクライナでは10月24日に農相が「11月15日から小麦の輸出は禁止されるだろう」と発言したが実施はされなかった。他方、ロシアでは、農業相プレスリリースによると、11月7日の「穀物の国家備蓄在庫売却に関する作業部会」で穀物輸出の制限は不適と言明”とあり、規制の動きはあったものの、実働はされなかった。これも穀物価格の上昇に歯止めをかけた一因のようだ(それでも昨年と比べればまだまだ割高だが)。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係がある(もちろん個々の日常生活における食品群の価格にも影響が生じ得る)。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。


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