会話や近所付き合いから見る高齢者の「ぼっち」状態(高齢社会白書:2016年)(最新)

2016/06/25 10:58

2016年5月20日内閣府は同府公式ウェブサイト上において、日本の高齢化の現状や今後の予想、それらに対応するための各種施策をまとめた白書「高齢社会白書」の最新版(2016年版)を公開した。今回はその白書に記載された公開値を中心に関連する調査の結果も合わせ、「一人暮らしの高齢者と周辺環境動向」に関して確認をしていくことにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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会話頻度が圧倒的に少ない高齢一人暮らし


以前【高齢者世帯数の推移をグラフ化してみる】などで解説した通り、現時点で高齢者世帯のうち約半数は単独(一人身)世帯。しかも女性世帯の数は男性の2倍以上の差異を示している。女性が多いのは平均寿命の違いによるもの。

↑ 世帯構造別にみた高齢者世帯数の年次推移(×千世帯)(-2014年)(再録)
↑ 世帯構造別にみた高齢者世帯数の年次推移(×千世帯)(-2014年)(再録)

高齢化社会の進展につれて、今後ますます「高齢者一人だけの世帯」の増加が予想されるが、特にそのような世帯(=高齢者本人)におけるコミュニケーションはいかなる状況なのだろうか、それが今回スポットライトをあてるポイントである。

まずは会話の頻度。2016年の白書では該当言及部分が無く、前年の物を流用することになるが、今グラフでは「毎日」「分からない」以外の回答のみを積み重ねている。つまりグラフ上の値が大きいほど、会話をあまりしていないことになる。口頭以外に電話や電子メールも含むことに注意。「会話」よりも「コミュニケーション」の表記の方が適切かもしれない。

↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2015年版))
↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2015年版))

夫婦のみ、その他の世帯も合わせ、全般的に男性の方が値が大きい、つまり他人との会話頻度は男性の方が低いことが分かる。高齢者全体では「毎日他人と言葉を交わしてはいない」人は1割にも満たないが、男性一人暮らしに限るとその割合は3割近くにまで増える。しかも7.5%は一週間に一度も会話をしていない。今後の調査では今件該当項目に電子メールに限らずソーシャルメディアをはじめとしたインターネットによるサービスも追加すべきではあるが、行動性向・意欲、さらにはデジタル系アイテムとの相性の点で考えると、仮にそれらの選択肢が加わったとしても大きな違いは生じないだろう。

近所づきあいと、困った時に頼れる人


無人島や過疎地帯に住んでいるのならいざ知らず、住宅地帯などなら近所づきあいもあるだろう、そう考える人も多いはず。その近所づきあいについては、次の通りとなる。

↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象、2014年)(高齢社会白書(2016年版))
↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象、2014年)(高齢社会白書(2016年版))

↑ 近所付き合いの程度(居住形態別)(60歳以上対象、2014年)(高齢社会白書(2016年版))
↑ 近所付き合いの程度(居住形態別)(60歳以上対象、2014年)(高齢社会白書(2016年版))

やはり一人暮らし、男性世帯における「近所付き合いの希薄さ」が目に留まる。男女では「親しく付き合っている」の回答率が約10%ポイントも異なる。さらに「親しく付き合う」の認識は個々で異なることを合わせ考えれば、男女の差異はさらに開いているのが現実かもしれない。

年齢階層別では70代後半までは歳と共に近所付き合いが良好化している。世代による付き合いの考えの違いか、あるいは60代では定年退職を経て生活様式が変わったばかりで、新たな世界観における近所づきあいに慣れていないのか。今件調査だけでは断定が難しい。

居住形態別では世帯構成員・世代数が多いほど、近所づきあいも良好なものとなる。一人暮らしでは1/4程度しかない「親しく付き合っている」も、子供に孫もいる世帯では5割近くにまで増加する。高齢者本人だけでなく、配偶者や子供、孫を介しての近所づきあいの機会が得られるのが理由だろう。

さらに高齢者世帯において、何かのトラブルで困った際に、頼りになる人がいるか居ないかについても確認をする(こちらも2016年版の白書では該当部分が無いので前年の物を流用する)。これは普段の近所づきあいなどとも深く関係のある項目である。こちらも男性一人暮らしの希薄感は強い。「居ない」との人は全体では2.4%でしかないが、男性一人暮らしでは20.0%に達する。5人に1人は「自分が困っても誰も頼れない」状態。

↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2015年版))
↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2015年版))

直上の近所づきあいの差異が、一人暮らし世帯における男女の差にそのまま現れる結果が出ている。女性の一人暮らしも高めではあるが、男性の2割と比べれば、まだ低い方ではある。



白書ではこれらの「独り暮らし」の現状に関し、デジタル系ツールの利用も合わせ、他人との接点を中心に解説を行っているが、それに加えて「孤独死」も増加の一途をたどるとの解説をしている。元々高齢者は増加中である以上、確率論的に「数」が増えるのは道理だが、単なる高齢者全体の増加以上に、「一人暮らし世帯」の増加が大きな拍車をかけている。

次のグラフは東京23区内における、自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者の数を示した図だが、確実に人数は増加している。また65歳以上の一人暮らし死亡者総数のうち、自宅での死亡者数割合は3/4前後を維持している。孤独死のリスクは大きな変化は無く、高齢者そのものの増加で、孤独死を迎える人の数が増えている状況も確認できる。

↑ 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者(人)(高齢社会白書(2016年版))
↑ 東京23区内で自宅で死亡した65歳以上一人暮らしの者(人)(高齢社会白書(2016年版))

実際、今調査の別項目によれば、一人暮らしの高齢者の多く(5割近く)は、「孤独死(孤立死)」を身近な問題だと感じている。

↑ 孤独死を身近な問題と感じている(60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))
↑ 孤独死を身近な問題と感じている(60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))

夫婦世帯などと比べれば大きな違いであるのは一目瞭然。

今後はこのような「一人暮らしの高齢者」に対する社会の対応も、切実な問題として認識されると共に、対応が求められよう。


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