政府への要望、社会保障に景気対策、高齢社会対策(最新)

2017/09/01 05:14

2017-0831内閣府は2017年8月28日、定点観測的に調査を行っている「国民生活に関する世論調査」の最新版となる2017年版の結果を発表した。それによると、日本国民が今後政府に力を入れてほしい政策の最上位には「医療・年金などの社会保障の整備」がついた。6割強の人が同意を示している。前回2016年6月時点における調査から順位は変わらず、高齢化社会への対応の重視を要望する声が全体として大きい状況が把握できる。それに続く高回答率項目は「景気対策」「高齢社会対策」だった(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。

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今調査は2017年6月15日から7月2日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する者の中から層化2段階無作為抽出法で1万人を選んだ上で、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は6319人。男女比は2945対3374、世代構成比は18-19歳が74人・20代467人・30代712人・40代1046人・50代981人・60代1395人・70歳以上1644人。

調査時点において、今後日本国政府はどのようなことに力を入れるべきか、複数回答形式で尋ねたところ、最上位の回答率を示したのは「医療・年金などの社会保障の整備」だった。全体では65.1%の人が望んでいる。

↑ 政府に対する要望(上位のみ)
↑ 政府に対する要望(上位のみ)

↑ 政府に対する要望(2017年6月、上位のみ、前回調査比、ppt)
↑ 政府に対する要望(2017年6月、上位のみ、前回調査比、ppt)

最上位の「医療・年金などの社会保障の整備」は前回調査と比べると0.7%ポイントの増加。他方、第2位の「景気対策」は値を5.1%ポイントも値を減らしており、見方を変えれば景況感は回復に向かっている一方で、社会保障への不安は積み増しされていると見るべきだろう。第3位の「高齢社会対策」が前年から順位を繰り上げたのも合わせ考えると、高齢者向けの社会保障への要望意志が強まっているのだろうか。

他の動きとして注目できるのは、「防衛・安全保障」の大幅な増加。4.3%ポイントも増えている。類似項目の「外交・国際協力」が2.0%ポイントのプラス、国内に限定した視点「治安」が2.2%ポイントのプラスの値動きを示しているのも合わせ、日本周辺地域のきな臭さへの反応の結果と見て問題の無い傾向ではある。

これを男女別に見たのが次のグラフ。

↑ 政府に対する要望(上位のみ)(男女別、2017年6月)
↑ 政府に対する要望(上位のみ)(男女別、2017年6月)

少なくとも上位陣では女性の方が要望率が高い項目が多い。「防衛・安全保障」「外交・国際協力」「税制改革」は男性の方が高い値だが、確かに男性の方が興味関心を引きそうな内容ではある。一方で「景気対策」「少子化対策」でも男性の方が上の値が出ており、やや意外感を覚えさせる。

女性が男性比で大きく伸びているのは「医療・年金等の社会保障の整備」「高齢社会対策」「雇用・労働問題への対応」「物価対策」「教育の振興・青少年の育成」であり、男女ともに値が高くほぼ同列に並んでいる「景気対策」を除き、上位陣のすべてで男性以上に強い要望(見方を変えれば現状への不満)を抱いているのが分かる。

これを年齢階層別に見ると、各項目の年齢別関心事項が透けて見える。

↑ 政府に対する要望(上位のみ)(年齢階層別、2017年6月)
↑ 政府に対する要望(上位のみ)(年齢階層別、2017年6月)

「景気対策」「雇用・労働問題への対応」は50代までに高い関心が寄せられているが、60代を超えると急速に低下する。一方で「医療・年金等の社会保障の整備」「高齢社会対策」は60代から70歳以上まで上昇をみせている。以前【失業対策が第一、少子化対策が次点…現在不十分で今後力を入れるべき社会福祉とは】でも触れたが、回答者自身にとって何が一番望まれるのかを第一に考えてしまい、それがそのまま値に反映されているのが分かる(「我が身恋しや」である)。全体的に要望への関心が低い高齢層でも、「高齢社会対策」以外に「物価対策」において他年齢階層とさほど変わらない、むしろ若年層より高い値を見せているのが好例といえる。

また、「少子化対策」「税制改革」など、一見若年層が無関心な姿勢を見せているように伝えられている問題も、概して若い年齢階層ほど要望への回答率が高い。「若者は政治や社会に無関心だ」との印象は実情とは異なることを把握できる次第である。無論「雇用・労働問題への対応」は若年層ほど高い値を示し、18歳から39歳では「高齢社会対策」よりも上位についている。切実な問題であることをうかがわせる。

なお今件はそれぞれ独立した項目で「要望のある・無し」を尋ねているが、本来政策は多数項目が連動して行われる(べき)もの。どれか一つの政策のみに焦点を絞って注力しても、他の項目が足を引っ張られることになり(リソースは有限)、結局マイナスの影響を受けた項目が注力した部分にも悪影響を及ぼし、全体的な環境も悪化してしまう。それぞれの項目の連鎖性・波及効果を思慮深く考慮した上で、政策方針が決定され、具体的施策が打たれるべきであることは言うまでもない。



やや余談ではあるが、「国民生活に関する世論調査」は2016年調査分から調査対象をこれまでの20歳以上から18歳以上とし、対象年齢を引き下げている。リリースでは特に説明は無いが、公職選挙法の改正に伴い、2016年の参議院議員選挙以降、選挙権がこれまでの20歳以上から18歳以上に引き下げられたものに合わせての変更と考えられる。この点からも「国民生活に関する世論調査」をはじめとした内閣府の調査が、多分に選挙などで具体的に声を挙げる、意思表示をする人を意識していることがうかがいしれよう(時折未成年者を対象とした調査も行われるが)。

他方、今調査では層化2段階無作為抽出法によって回答対象者を選択しているため、実質的に現状の年齢階層別人口区分に近い年齢構成比での調査アプローチが行われる。しかしながら前世紀終り頃から若年層の回答率は減少し続けており、ただでさえ人口比率の少ない若年層の声が、全体の値に反映されにくい状態となっている。

↑ 回答者年齢階層別構成比率試算結果
↑ 回答者年齢階層別構成比率試算結果

↑ 「国民生活に関する世論調査」の年齢階層別回答率(2017年6月実施分)
↑ 「国民生活に関する世論調査」の年齢階層別回答率(2017年6月実施分)

選挙の投票率同様に、20代などの若年層は政治への関心度が低いのに加え、独身就業者が多く回答に応じにくい事情が大きな要因と考えられる(回答不能者数3681人のうち一時不在は1338人、拒否は1399人。年齢階層別の動向は非公開)。

一つ一つの声が積み重なり世論を形成し、各種判断に用いられることを考えれば、若年層には積極的に調査への参加が望まれる。それと共に、多忙でも回答が可能な代替案の提示(インターネット経由も選択肢として用意するなど)を調査側にも模索してほしいところではある。


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