見せるリスクと見せないリスクと…米教師が考える、学校内のデジタル規制と授業への影響

2012/12/17 07:30

子供とパソコンアメリカの調査機関【Pew Research Center】は2012年11月1日、インターネット検索が子供達にどのような影響を与えているのかについて、教師の立場から見た調査結果【How Teens Do Research in the Digital World】を発表した。教師の立場からではあるが、生徒とインターネット検索との関係が垣間見られる興味深い報告書となっている。今回はその中からアメリカにおいて、「学校内で取り決められているデジタル関連の規制で、インターネットに関する授業にどのような(マイナスの)影響が生じているか」について見ていくことにする。

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今調査は2012年3月7日から4月23日にかけて2462人のアメリカ在住の教師に対し、インターネット経由で行われている(2万2590人の教師に電子メールを用いてウェブ上で回答するよう依頼を行い、2462人が回答している)。全アメリカの教師の分布に即したウェイトバックは行われていないが、極力偏りなくデータを取得するよう、地域、教師自身の教鞭期間をはじめとした各種パラメータ、地理的状況、学校の種類などにおいて配慮がなされている。

先に【米教師が見た、デジタル技術の浸透で変わった生徒達の学習スタイル】でも伝えた通り、デジタル技術の普及浸透により、生徒達にはより多くの選択肢が与えられ、可能性が積み増しされたと認識している。それだけデジタル技術に対する、教師への期待も大きい。

↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解
↑ デジタル技術の浸透が生徒の学習に与えた影響に関する分析への見解(再録)

一方でデジタル、特にインターネット周りではリスクも小さくない。【米社会の子供達のネットとの付き合い方を箇条書きにしてみる】【ネット上でいじめを受けている子供の徴候】などにもある通り、インターネットは生徒間で悪質なトラブルを引き起こし、事態を悪化させる「ツール」にも成りえる。さらには【サイバー餌付け(cyber-baiting)ってなんぞや?】でも伝えているように、子供による攻撃の矛先が教師をはじめとした大人にすら向かうこともある。もちろんアダルト系をはじめとした「子供が触れてはいけないコンテンツ」に接し、生徒に害が及んでしまう可能性もある。これらのリスクを減らすため、学校ではさまざまな手立てを講じている。

今件ではその「手立て」のうち、もっともありそうな3つを挙げ、それらを実行しているか否か、実行していた場合、インターネット関連の授業にどの程度影響があるのかを尋ねている。なおAUPとは「Acceptable Use Policy」の略で、インターネットを使う際の制限規約を意味する。校内インターネット規約と考えれば良い。

↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか
↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか)

まず最初に目に留まるのは、オレンジ色の部分「制度やシステム非採用」の回答がほとんどないこと。97%の教師=学校で、フィルタや携帯電話利用のルール、ネット利用時のAUPが定められていることになる。

そしてインターネットアクセス時のフィルタで「影響が生じている」との意見は78%。生徒の携帯電話利用ルールでは64%、AUPでは49%が「影響あり」としている。AUPはさほど大きな影響はないものの、フィルタや携帯電話利用ルールではそれなりに教師側も難儀しているようだ。例えばフィルタも万能では無く、学習で使うサイトへアクセスできないことが多々ある。過度な安全対策が、通常使用にまで弊害を及ぼしてしまう可能性も否定できない。

この「トラブル対策が通常授業にまで悪影響を及ぼす状況」は、生徒の経済状態や学校の所在地によって、教師の回答率に大きな差がみられる。

↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか(生徒世帯の経済状態別、「大きな影響」回答率)
↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか(生徒世帯の経済状態別、「大きな影響」回答率)

↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか(学校所在地別、「大きな影響」回答率)
↑ 現在あなたの学校では次のような手立てを講じているか。また、しているのならインターネット周りの授業の際にどれ程の影響を与えているか(学校所在地別、「大きな影響」回答率)

特に生徒の経済状態別では、2倍以上もの差異が生じている。これは以前別項目でも触れているが、低所得層の生徒の場合、学校以外(特に自宅)でパソコン・インターネットに触れる機会が少なく、数少ないデジタル社会との接触機会においても、制限を加えられて満足な利用が出来なくなり、大きな影響を受けてしまうことを意味する。

一方で学校の所在地別では大都市圏の方が「影響は大きい」としているが、こちらの理由は残念ながら分からない。あるいは大都市圏の生徒の方がアグレッシブであり、だからこそ制限が邪魔になる機会が多く、影響を受けると認識しているのかもしれない。



全生徒の行動を常に教師が観察し続けることが難しい以上、学校内のパソコン・インターネット関連に各種規制を設けるのはごく普通の、当たり前の話。一方、その「当たり前の施策」により、授業そのものに影響が生じてしまうのも、現実として認めねばならない。世の中が常に無菌状態では無いことを考えれば、学校の学年にもよるが、規制などを一時的に解除し、世間一般と同じ環境下で「ルール」を教えることも必要だろう。

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