砂糖は特に前年同月比で2割と大きな下げ(2012年10月分世界食糧指数動向)

2012/11/12 12:10

国連食糧農業機関(FAO)発表による【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることは、すでにご承知の通り。この値は1990年以降、FAOが世界の食料価格の月ごとの変化を精査した上で食料価格指数として公開しているもの。つまりこの値が高値を維持していることは、世界の食料相場が高値圏にあることを意味する。そこで当サイトでは定期的、具体的には毎月、データの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2012年10月分の反映版となる。

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世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)や各項目の名前の定義については一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】を参考のこと。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年10月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが確認できる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。最近ではややもみあいの雰囲気が続く中、今回10月分では需給バランスの崩れ気味な油脂は大きく下げたが、他の項目はもみ合いの中にある。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値が確認できる。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、その後はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降にグラフ生成期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年10月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動の結果。しかし価格上昇の原因である「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年10月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年10月)

昨年同月と比べれば多くの項目でまだ低い水準ではあり、砂糖は特に前年同月比で2割も下げている。一方で穀物は上記折れ線グラフと合わせ見れば分かるように、この20年来における最高値圏に近づいており、今後の収穫・市場動向次第では最高値の更新も十分にありえる。

リリースでは今月の動きについて「食肉は欧州とブラジルの生産増加が、アメリカでの減少を支えた。羊と鶏肉はやや価格を落とした」「乳製品は季節変動と在庫の減少で価格を上げたが、今年に入ってからの急落をまかなうほどの上げ幅では無い」「穀物は小麦とトウモロコシの価格下落のために下落。トウモロコシは家畜用などの需要減、小麦は世界貿易そのものの減退が原因」「油脂は世界的な消費の減退、東南アジアでのパーム油の豊作などが要因で価格を下げる」「砂糖…最大輸出国ブラジルでの短期的な輸出量減退を反映して値上がり」などとある。

食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。その観点から考えると、食料品の価格上昇は好ましい話ではない。価格の不安定化、上昇の雰囲気が強く出ている昨今の動向は世界情勢との連動性も合わせ、頭の痛い話ではある。



食料価格の上昇要素は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で乗数的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は見つけにくい(科学技術の進歩による品種改良も、地力を下げるリスクが多分にある)。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと構造的には何ら変わりがない。

20年来高値間近となり、特に気になる穀物の動向だが、多くの作物地帯での干ばつによる影響が懸念されている。現時点では輸出大手国の「輸出制限をしない」との声明で価格上昇は抑えられているが、収穫時の取れ高が明らかになるにつれ、被害の実態が明確化され、場合によってはさらに各穀物の価格、そして穀物指数を押し上げることになるものと考えられる。【農林水産省の海外食料需給レポート(2012年10月分)】でも「ウクライナでは10月24日に農相が「11月15日から小麦の輸出は禁止されるだろう」と発言」という言及があり、一部の生産・輸出国で輸出制限が現実のものとなる可能性が出てきた。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係がある(もちろん個々の日常生活における食品群の価格にも影響が生じ得る)。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。


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【米農務省発・米国内干ばつ状況マップ】
【干ばつの影響による穀物事情・注意喚起】

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