先月に続き惨憺(さんさん)たる有様、従来型広告も今月は弱い(電通・博報堂売上:2012年10月分)

2012/11/12 06:50

【博報堂DYホールディグス(2433)】は2012年11月9日、同社グループ主要3社の2012年10月における売上高速報を発表した。これで【電通(4324)】が同年11月8日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2012年10月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めることにする。

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グラフ生成のために用いたデータの取得元に関する解説、各項目に関する留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で記述している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2012年10月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2012年10月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費(額面)のへの影響は、数字の上ではほぼ終息。そして昨今では震災以前からの広告業界・メディアの流れにそった動きを見せている。中期的な概況としては「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っているが、テレビがやや戻しの動きを見せる」「デジタル系、そして屋外広告などの非4マス系の一部が堅調」というもの。

今回月・2012年10月分の特徴としては、一言でまとめると「先月に続き惨憺(さんさん)たる有様」。プラスの値の項目は4つしかない。昨年の震災後、大きなマイナス面での影響が出た2011年5月-8月あたりまでの状況が再現されたようですらある。比較対象となる1年前の記事を見ると、一部で比較的良く伸びていた項目があり、それの反動と見るべき面もあるが(例えば「その他」の項目)、多くは次年(つまり今回の対象月)に大きな反動をもたらすほどのものでは無い。

状況をさらに把握するため、参考値として電通・博報堂それぞれにおける「一昨年前の値」との比較を算出し、グラフを生成しておく。基準値を設定してその値に「前年における前年同月比」「今件の前年同月比」を順番に掛けただけだが、各項目の実情が良く分かる結果となっている。

電通2012年10月度単体売上(前々年同月比)
↑ 電通2012年10月度単体売上(前々年同月比)

博報堂2012年10月度単体売上(前々年同月比)
↑ 博報堂2012年10月度単体売上(前々年同月比)

今回計測週での試算では、両社共に4マス中「雑誌」が唯一プラスを見せている。少々奇妙な感もあるが、データとして出ていることは間違いない。一方、普段は良い動きを見せる4マス・インターネット以外の屋外広告も、軟調な項目が複数確認でき、やや気になるところではある。多分に今回月である10月の調子が悪かったということだろう。

なお今件記事中最上位にあるグラフに記された値について説明しておくが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、額面の絶対額を意味しない。例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。

電通・博報堂HDの2012年10月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2012年10月における部門別売上高(億円、一部部門)

電力需給のひっ迫感は相変わらずどころか政治的要因などで昨年よりも悪化し、今夏は半ば強制的な節電により多くの経済的・機会的・健康面などで被害が生じたことは認識せねばなるまい(【IEEJ発「今夏電力需給」と「震災後の電力需給分析」】【続く節電要請・逃げる企業…関電管轄内企業の「今後も節電継続」の場合の対応は?】)。そして今冬も主に北日本、とりわけ北海道電力管轄において、同様の逼迫的な状況・国富の膨大な浪費が発生することは回避できない状態となった(【冬の「ようせい」】)。

そのような電力事情下の中、自動販売機や電灯など、電力を常用する公的あるいはそれに準じる施設・機器では、加速度的に節電機能が開発、搭載され、実働を果たしている。

新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」もまた、地震直後のような「全面電源オフ」という状況からは復帰しているものの、積極的な節電の「強要感」は深く浸透し、以前ほどの活力・積極性は見られない。「全国規模で」電力浪費(「に見えるので叩かれやすい」)による非難リスクを自然に避ける、自主規制をする傾向がある。デジタルサイネージが撤去される、各小売店でも昨年以上・過剰とも見えるまでの、身を削る形での節電状況が随所で確認されている(例えば照明一つにしても、明るさが落ちればマーケティングの上では確実に売上にマイナスの影響が出る)。

そのような状況なら電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告に注目が集まるのは自然の流れ。昨今の「4マスとネット以外の堅調さ」も、社会的状況が影響しているものと考えられる。これからは従来型・4マス・ネットそれぞれの長所を上手く流用・活用・併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、慣習にとらわれることなく、費用対効果の高い、そして同時に効果が把握しやすい広告手法が求められる。その動きはすでに見え始めている。

他方、今回2012年10月の下げ方は、この数か月来同様に、やや違和感を覚える。本来堅調なはずの従来型広告ですら怪しい動きを見せている。ここ数か月来、そして経済産業省の広告費データを見ても、本格的な、そしてさらなる景気後退感の雰囲気が感じられる。この推定が確かなものか否か、今後も広告費動向を注意深く見守りたい。

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