「景気は、さらに弱まっている」…2012年10月景気ウォッチャー調査は現状・先行き共に低下

2012/11/10 07:00

内閣府は2012年11月8日、2012年10月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは先月から続いて減少し、水準値50は下回ったままだった。先行き判断DIも先月から継続する形で減少し、相変わらず50を切っている。結果として、現状低下・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気は、さらに弱まっている」とし、先月の表現「景気は、このところ弱まっている」から後退する形となったのが確認できる(【発表ページ】)。

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景気低迷からさらに後退へ
調査要件や文中のDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

2012年10月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス2.2ポイントの39.0。
 →3か月連続の減少。「やや良くなっている」「変わらない」が減り、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増えている。
 →家計では秋物商戦の不振、尖閣諸島周りなどの情勢変化で旅行への悪影響から低下。企業動向も尖閣諸島周りなどの情勢変化による受注減で低下。雇用関連は製造業で雇用調整の動きがあり、低下。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.8ポイントの41.7。
 →消費税引き上げの駆け込み需要への期待がある一方、消費税引き上げ絡みでのマインド低下、尖閣諸島問題などで発生しうる経済活動などへのマイナス影響懸念が作用し、全部門で低下。
今月は先月から続き、現状・先行き共にマイナスとなった。また今回の概要では前回に続き、キーワード「尖閣諸島」が目に留まる。

低迷期に突入
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分では前回に続き見事に全項目でマイナス。かろうじて基準値50を超えていた「雇用関連」だが、今回は最大の下げ幅を見せ、ついに50を下回ってしまう。現状判断DIでは基準値超えの項目は皆無となってしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2007年夏以降の「金融危機」ですでに下落傾向が見られたが、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやくその動きも落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が、単月ではリーマンショックを超える勢い(ほぼ垂直)で下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、同年7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強い。

そして「リバウンド」が長続きしない世の常の通り、2011年8月以降は失速し、再び50を割り込んでいた。一時は戻しを見せる雰囲気もあったが、今月もこの数か月にわたる下落基調を払しょくすることはできず、明らかな低迷が続いている。ここ数か月の動き、そして冒頭の判断文言から察するに、明らかに景気低迷期に突入した感は否めない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復をしたが、
間もなく失速。
そして明らかな景気低迷期へ。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

昨年の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」の方が適切な表現といえる(この状況は「本震」後に何度か発生した、東京株式市場における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前までの流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じような動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。

2011年夏のリバウンドによる「合計値50超」後の動きを見る限り、リバウンドで力尽きた後は低迷を継続するように見えたものの、今年に入ってからは円安などを背景に再び伸びの気配があった。ところが5月になると欧州債務危機の懸念再来に伴う円高・景気の後退、そして夏に向けた電力不足の具象化というマイナス要因が積み重なり、半ば期待されていた「2003-2004年の動きに近い形」「50超の状態で安定」が吹き飛んでしまったのが分かる。そして今回月の動きを見ると、この数か月示していた「景気低迷感」から後退し、「さらなる悪化」への流れが確認できる。

景気の先行き判断DIも先月から継続して下落している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「サービス関連」がかろうじてプラスを示しているが、0.2ポイントと誤差の範ちゅうでしかない。その他の項目はすべてマイナス。「製造業」のように0.1ポイントとやはり誤差レベルの下げもあるが、「飲食関連」の5.9ポイントのようにダイナミックな下げを示すものもみられる。「住宅関連」は先月に続き今月も下げ幅が大きく、家計部門でけん引役を果たしていた項目なだけに、その挙動が気になる。

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい「雇用関連」だが、震災後の反動で大きく上昇したものの2011年7月の58.7が天井。今月も先月から続いて下落し、基準値50を下回る状況が継続中。次の折れ線グラフ上の過去の動きを見れば分かるように、「雇用関連」の指数の動きは他の指数に先行する場合が多く、特に「合計値」を下回った場合、過去二回において大規模な下落が起きている事例があり(2001年前半と2008年前半)、同項目の動向には留意する必要がある。両者の差異は1.5ポイントしかなく、警戒領域に達している。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

先行きの合計DIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数の意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる(一時期は「各DI値が1ケタ台に突入するのでは」とすら思われたほど)。

その後は底辺から立ち直ったものの、不安な心理状況・不安定な経済状態を反映するかのように、合計DIは基準値50を上回ることなく、50を天井とする動きを続けていた(この状況も「現状指数」とほぼ変わらない)。そして昨年の震災による大幅な下落はリーマンショックの時と同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。そしてそれ以降はリバウンドも十分なものでなく、基準値50付近を迷走している。今月は「50付近での迷走」から「さらなる下値」を示しており、ダブルミーニングで「先行きを懸念させる」状態といえる。

すでに雇用関連指数は50を切り、「合計値」までは1.5ポイントしか無い。十分以上の留意が必要となる。

景気後退感
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・10月中旬頃まで暖かかったせいか秋物商材の動きが遅い。必要な物だけ購入する傾向は変わっていない(百貨店)。
・季節は秋から冬の時期となっているが、気温が下がらず秋物の動きが活発化していない(スーパー)。
・日中、日韓関係の悪化で、海外旅行は急激に落ち込んでいる(旅行代理店)。
・宿泊では、尖閣問題により10月に千人が見込まれていた中国人観光客が激減した(都市型ホテル)。
・台風の影響や尖閣諸島をめぐる状況の影響等で予約数が減少している(観光名所)。
・ここ2-3か月も車両販売は厳しかったが、9月にエコカー補助金が終了し、さらに追い討ちをかけて販売台数が減少している(乗用車販売店)。
・エコカー補助金終了後、来店客数・販売台数とも激減し、10月の受注高は前年比42%まで激減している(乗用車販売店)。

■先行き
・消費税増税の駆け込み需要が、そろそろ始まりそうである(住宅販売会社)。
・大きく景気を左右する要因はないが、年末年始へ向けて帰省客を中心に前年ベースで推移する(百貨店)。
・消費税増税や復興増税など家計負担増大の話題が多く、消費マインドをさらに低下させると思われる(スーパー)。
・韓国や中国からの観光客がかなり減っており、こういう状況がしばらく続き、景気はかなり悪くなる(タクシー運転手)。
などとなっている。国内外共に景気悪化の材料しか上がって来ず、ポジティブな話といえば「駆け込み需要」という間接的・消極的な要因ばかり。「近隣の困ったちゃん」的な国の話以外でも、エコカー補助金の終了や政府の政策遅延行動による地方交付税支払の延期に伴う公共事業の発注遅れ、円高、各種増税など、両手の指を使っても数えきれないほどである。実際雇用関連に限っても、「雇用調整助成金の相談が増加」「大量解雇が始まっている」「正規雇用の高校生求人数は減っている」など、具体的な景気後退に伴う動きが多数確認される。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
エコカー減税の反動や、
円高、増税懸念、
さらに隣国の「実情」露呈で
マイナス要因が積み増し状態。
2007年夏に始まった今回の不景気(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力も確認されており、「2011年の”震災前”における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を(中心では無く)天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車の利用コストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流経費のアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、円高基調も続き、国内政策の無策さも合わせ、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていたからである。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震・震災の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、それを起因として生じる間接的な不安要素(流通不安や生産力の低下、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安など)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させ」てしまう(不安が高まれば殻に閉じこもるのは生物の摂理である)。

これは端的な表現をすれば「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表することができる。特に一般社会の経済行動において中心的な存在となる、中堅女性層にこの傾向は著しく表れている。さらにそれを悪用する形で昨今の情勢を「機会」ととらえ、煽動などを繰り返して自らの懐を温める者も多数登場しており(悪質なことに、この流れに乗る「現行」閣僚もいる始末)、これが社会全体の不安を一層募らせ、経済活動を委縮させる要因の一つにもつながっている。

「震災による中期的な不景気が発生し”うる”可能性」という言葉はすでに過去のもので、もはや確定形となり、さらに悪化の動きを見せる。震災前から不景気状態のため、気付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、円高、そして致命的な政策ミスの連続による状況悪化はさらに進み、輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。

直近で年頭から続いていた一時的な回復基調は、多分に「行き過ぎた円高がいくぶん戻した」ことによる、リバウンド効果でしかなった。実際には4月下旬から欧州債務危機の再燃に伴う円高が大きく進行。さらに夏の電力不足の実体化による経済・行動・人々の意思の委縮(とそれに対応すべき国や自治体の迷走、無策への不信感)が急速に強まり、人心の不安定化とそれに伴う低迷感を裏付けている感はある。そして電力不足に限っても、舵をとるべき人たちは我関せずを決め込み、責を放棄し、むしろ煽動家と共にインフラ叩きに回る一群まで出る始末。

震災経験を元にした災害対策に関しては、多分に確率統計論、期待値の計算とはかけ離れた、感情的な論議とその煽動が行われている。今般の経験を有効に活かす手立てを講じ(可能な限り二重三重の副次的効用を生み出すようなもので)、そして状況の鎮静化を祈りつつ、手を打つのが中長期的・全体的に見て最善なのだが、残念なことに多方面でそれとは異なる方向へ歩みを見せている。

社会的不安定な状況下ではありがちな、「魑魅魍魎」的な話(を語る人達)が上から下まで跳梁跋扈している昨今においてこそ、論理的にも数理的にも常識的にも「正しい道筋」が求められる。その道筋が正しければ、明日に確かな希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善する。その流れに世の中が従えば、回答者一人ひとりのマインドの集積による結果である「景気ウォッチャー」もまた、良い値を示す動きを見せるに違いない。

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