「めしばな刑事タチバナ」特需は続く、「初めてのたまごクラブ」も堅調…諸種雑誌部数動向(2012年7-9月)

2012/11/10 07:15

先に【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年7月-9月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2012年11月2日に発表した、2012年7月から9月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、いくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は、当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移のグラフ化を試みることにした。雑誌不況はどの程度、どのジャンルに浸透しているのか、それなりにつかみとれるハズだ。

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まずは一般週刊誌。状況を端的に表現するのなら「一部は踏みとどまり、他は減退」。

一般週刊誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)

一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年7-9月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2012年7-9月)(万部)

今回計測分では前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は6誌。前回の5誌よりは状況が改善されている。一方前年同期比ではプラス誌は4誌だが、5%超は皆無。マイナス誌は9誌で、誤差の許容量を超えたのは4誌。業界全体の縮退傾向が強めに出ている感は否めない。

マイナス10%超えを示している「SPA!」「AERA」などは、紙媒体による「写真週刊誌」という存在において、供給過多のイメージは否めない。数字の減退ぶりがそれを裏付けている(前四半期も同様に、2誌ともマイナス10%超を記録している)。あるいはデジタル系をメインとし、本誌はそのデジタル系のプラットフォームとして割り切り、出版形態・構成を変えるぐらいの変革も切り口の一つとしてはアリかもしれない。電子書籍リーダーの爆発的な浸透普及が進めば、その実現可能性は増える。

また、前回記事同様今回も「週刊アサヒ芸能」の堅調な伸びぶりが目に留まる。いくつかの要因が考えられるが、その一つとして挙げられるのが『めしばな刑事タチバナ』。いわゆるB級、さらにはC級グルメが熱く語られる漫画だが、飲食物がすべて実名で登場することもあわせ、読者の「あるある感」が非常に強く、多くの人の共感を集めている。2010年末から連載を開始し、口コミなどで昨年中旬から注目を集め始めているが、週刊アサヒ芸能の印刷部数の堅調動向とほぼ一致する。すべてというわけではないが、間違いなく貢献はしているはず。

一方今期では「週刊プレイボーイ」の手堅さも目に留まる。例えば2012年9月10日発売の『2012/09/24日号』の特集「もし、突然死したとき残っているとヤバいもの、恥ずかしいものの隠し方教えます!!」にあるような、面白ネタが受けているのかもしれない。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期も状況は変わらずあまり良くない。その中で大きくプラスを見せたのは「初めてのたまごクラブ」。今誌は季刊誌で該当期間に発売されたのは1誌のみ。「妊娠がわかったら最初に読む本」をコンセプトに掲げ、毎回役立つ小物や小冊子などの付録が魅力的。また【「初めてのたまごクラブ」公式サイト】を見ると、同社類似他誌との巧みな連動性(「子育て」をテーマにするという雑誌の性質上、連動するのは当然の話)や関連商品の情報提供など、さまざまな切り口で相乗効果を測っている工夫が見て取れる。現時点では数少ない成功事例として評することができる。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる一方の昨今、需要は強まるはずなのだが、全般的に軟調なのは前期と変わらず。インターネット、とりわけモバイル系端末経由の情報提供サイトに読者を奪われている可能性は高い。なお「レタスクラブ」はデータ掲載再開後5四半期を経過したため、今回から当グラフ内に再登場している。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)

レタスクラブ印刷実績
↑ (参考)レタスクラブ印刷実績

今四半期では前年同月比でマイナス5%を超えたのが3誌。特に「オレンジページ」のマイナス14.8%が辛い。部数はまだ30万部台後半だが、早急に何らのテコ入れが必要であることは間違いない。一方で「栗原はるみ haru mi」は前回同様今回も堅調な動き。「栗原はるみ」というカリスマ的存在が、雑誌の最大の魅力として生き続け、読書を引きつけているに違いない。

エリア情報誌。こちらも苦境は続く。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)

今回唯一マイナスとならなかった「北海道ウォーカー」だが、【北海道ウォーカー、季刊誌へ】で記したように、3月売り号から季刊誌に販売スタイルが変更されている。この際の部数増加効果がまだ生きているようだ。ただし前四半期比で見ると大きな落ち込みが確認されており、このままでは次四半期において、他誌と同じような動きを見せることになる。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、しばしば対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2011年7-9月、前年同期比)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数(万部)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)

今回は前年同期比では「ねこのきもち」の勝利(とはいえ両誌ともマイナス)。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」13.3万部・「ねこのきもち」9.9万部で、こちらは「いぬ」の勝ち。「ねこ」は一連の記事での把握範囲期間内では初めて10万部を切ってしまった。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。前回解説したように、「小学●年生」シリーズそのものはすでに2誌しか残っていないので、幼稚園関連の雑誌3誌を追加した上でグラフ化している(今グラフに限り、雑誌の並びは変化率では無く雑誌特性に沿う形にしてある)。

「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2012年7-9月、前年同期比)

今回も前回同様、「小学一年生」「小学二年生」共に大きくマイナスを示している。今年の頭に「持ち直しの気配を感じさせる」としたが、その雰囲気は見事に吹き飛んでいる。今件は「前年同期比」によるもので、季節属性に伴う影響は無く、純粋に「勢いの減退」を感じざるを得ない。

一方幼稚園系3誌のうち「たのしい幼稚園」は今回も他誌と比べれば大人しい状況にあるが、「幼稚園」「入学準備学習幼稚園」は苦しい値が出ている。この動きはなかなか止められないのだろう。



以上ざっとではあるが、いつものように各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移のグラフ化を行った。ごく一部の例外をのぞき、ほとんどが前年同期で大きな下げ幅でのマイナス基調が確認できる。

また、今回取り上げた業界専門誌の領域(料理や育児など比較的ハードルが低い、一般向けの業界)は、デジタル系ツールとの組合せで、逆に紙媒体としての魅力を活かしつつ、多くの人から注目を集められる可能性を十分に秘めている。例えばAR(Augmented Reality(拡張現実・強化現実))の常用活用を模索するなど、今だからこそ出来る挑戦もある。急速に普及率が上昇しているスマートフォンやタブレット機との連動は、工夫次第で雑誌の魅力を何倍にも引き立てるはず。

市場を取り巻く環境が複数要因で大きく変化している以上、これまで通りの切り口は通用しない。その事実をあらためて認識し、その上で行動してほしいものである。

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