「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」は「はやぶさ」周りで底上げか…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2012年7月-9月)

2012/11/09 06:50

【社団法人日本雑誌協会】は2012年11月2日、2012年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2012年の7-9月期とその前期、2012年4-6月期における印刷実績を確認する。

2012年4-6月期と2012年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2012年4-6月期と2012年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今回は該当雑誌では今グラフの上位につくことが多かった「Yes SPA!」がデータから消えてしまった。【「Yes SPA!」の公式サイト】は現在でも更新中だが、本来今誌は季刊誌にも関わらず、最新号が『6月21日売り号』のままで、9月に最新刊が発売された気配がない。公式サイト上での公知も無く、一時的な停止状態なのか休刊したまでは判断ができないが、印刷実績データから消えたことに違いは無い。

残っているお馴染みのメンバーの中においては、【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2012年7月-9月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「PRESIDENT(プレジデント)」が断トツで印刷部数が多い状況も変化はない。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化が生じたのかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られない。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年7-9月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年7-9月、前期比)

前回)と比べればやや勢いは衰えている状態なのは否めない。誤差範囲のプラスマイナス5%を除外して考えると、プラス誌ゼロ誌、マイナス誌1誌。5%以上の伸びを見せた雑誌が皆無なのは痛いところ。

やや大きめな伸びを見せる「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」だが、該当期で「大いに売れた」と確定できる号は見当たらない。[バックナンバー一覧]から該当期間に発売された号のうち、「これが伸びの原因ではないか」という推測が成り立つ号としては『2012年9月号(2012年8月10日発売)』が該当するだろうか。この号には小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクト・マネージャー 川口淳一郎氏のインタビューが掲載されており、興味関心を持つ人も多そうだ。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2012年7-9月、前年同期比)

前期では全誌がマイナスだったものの、今期では3誌がプラス。やや健全化の動きといえるかもしれない。下位2位の常連組のうち「\en SPA!」はデータ公開そのものがなくなったので「THE21」のみとなったが、軟調さには変わりがない。

唯一気を吐く「プレジデント」だが、該当期間で値の底上げに貢献した号を探してみると、『2012年 9/3号』や『2012年 8/13号』が該当しそうな気がする。それぞれ「医療、介護」「大金持ちの勉強法」という、お金周りでダイレクトに響く言葉が並ぶ、そして身近に関係しうるかもしれない問題を取り上げており、気になる人も少なくない内容となっている。



2008年秋のいわゆる「リーマンショック」で多くの人が経済情報に注目した時期がこの数年間(多分に「今世紀に入ってから」と表現できるかも)における天井となる形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトへの(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加はゆるやかなものとなり、あるいは減少に転じている。しかしパソコン、そして携帯電話やスマートフォン、タブレット機など各種モバイル情報端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速の真っただ中にある。

ウォール街特に時間・分単位で情勢が変化する経済系のジャンルでは、記事の作成と読者への公知の間に大きな時間差が生じる雑誌の不利さは、他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)とは比べ物にならないくらい大きい。スピード感で例えれば、インターネット系媒体は紙媒体における「号外」(しかも読み手が希望すれば、すぐにでも手元に届く)を逐次配信しているようなもの。昨今では、即時対応ができる今ジャンルのインターネット上での情報展開は、ますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持するのでは無く、現状を正しく認識・分析し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みはどのようにすれば構築できるか」という雑誌作りの原則に立ち返り、同時に「躍動する新メディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いか」との模索をすること。その際に固定概念や既得権益にとらわれることなく、先を見据えて柔軟な発想を行うこと。さらに答えを見つけ出したら、躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が早急に求められている。そしてその進化は対象や環境こそ違えど、昔から常に、あらゆる場面で求められていたことに過ぎない。

環境の変化に対応・進化できない生物が、種としてどのような結末を迎えるか。それはこれまでの歴史が十分すぎるほどに語っている。そしてその動きにもっとも敏感な、今記事で対象となる雑誌達自身こそ、その事実は一番よく知っているはずである。


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