「ハイリスク・ハイリターン」な金融資産、欲しい? 要らない? (2015年)(最新)

2015/11/16 10:43

金融広報中央委員会の「知るぽると」は2015年11月6日、同会が毎年調査を行いその結果を定期的に発表している「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版、2015年分を公開した。今回はその公開値、さらには過去のデータとあわせ、「ハイリスク・ハイリターンの金融商品への願望」についてチェックを入れていくことにする。投資と投機の区別はおろか、期待値計算によるリスク勘案ですら浸透しているとは言い難い日本の現状で、高リスク・高リターンの金融商品に対するイメージはどのような実態を有しているのだろうか(【知るぽると:調査・アンケート公開ページ】)。

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金融商品には「絶対儲かる」ものは無い。リスク(マイナスの結果を生み出す可能性)の大小と、そのリスク込みの商品を選ぶことで得られるかもしれないリターン(利益、収益)のバランスを考え、購入者自身で選択することができる(「買わない」のも選択の一つ)。今件項目では「元本(投入した資産)割れを起こす可能性があるが、収益性が高いと見込まれる金融商品」、つまり「損をするかもしれないが大きく儲けられる可能性がある金融商品」について、今後1-2年間における購入・保有性向を尋ねている。例えば株式、投資信託が該当する(預貯金などは該当しない)。

直近の2015年のデータでは、購入そのものを希望しない人が単身者で63.8%、二人以上世帯で80.2%に達している。特に(世間一般では)「世帯持ち」で、リスクを極力避ける傾向が見受けられる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2015年)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2015年)

四半期ごとに日銀から発表される資料を元に記事化している「家計資産推移」(直近は【日米の家計資産推移をグラフ化してみる】)や OECDの公開データを元にした「主要国の家計資産の構成比率」動向(直近は【主要国の家計資産の構成比率をグラフ化してみる】)でも明らかだが、日本では諸外国と比べて(特に金融方面で)リスクを敬遠する傾向が強い。正確には冒頭でも触れている通り、「リスクとリターンの正しい関係」を習得していない感がある。あるいは強固な慎重さを持っている、と表現すべきか(その知識不足から逆に、自分が一度「儲かるかも」と思った・思わされた対象へは「絶対に儲かる」との信奉的な心情を抱きやすい傾向もある)。

また世帯種類別では二人以上世帯の方がリスクを強く避ける動きがある。これは自分自身以外の守るべきもの「家族」があることや、リスクが生じた時に自分以外に迷惑がかかる対象が多いとの気負いがあるからだと考えれば道理が通る。

今調査項目の結果は2007年以降の値が取得可能。それらをまとめてグラフ化したのが次の図。単身・二人以上双方の世帯で、少しずつ反動を経ながらリスク回避傾向が強まっていたが、この数年は少しずつ状況が変化している様子が確認できる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)

元々リスク性向へ立ち向かう勢いが強かった単身世帯の方が、リスク回避へと流れて行く動きも大きなものとなっている。2007年といえば直近の金融危機…サブプライムローンショックに始まりリーマンショックに続く、長きに渡る不景気時代…が体現化した年でもあり、「リスクを避けよう」との考えが支配的になるのも理解はできる。

単身・二人以上世帯ともリスク回避の動きはより強固なものとなっていたが、双方とも2012年を底値に、少しずつだが再びリスクを取りリターンを求める動きに転じている。これは株価動向や景況感の変化によるものと考えれば道理は通る。

もっとも単身世帯は積極的な保有性向が強まりを見せる中、購入希望派全体に変わりは無い。二人以上世帯は積極保有希望者に変化は無く、消極保有希望者が漸増している。景況感の回復の中でも、より積極姿勢を見せる単身世帯と、少しずつ、慎重に歩みを示す二人以上世帯。それぞれの根底にあるリスク金融商品への姿勢が表れており、非常に興味深い。



「家計資産推移」でも中期的な傾向として「現金・預金」比率の増加と、2012年以降の金額面における株式や投資信託の増加は確認されていたが、今回別の視点からも「全般的な日本の世帯におけるリスク回避の動きの強まり」「2012年以降の金融資産に対する姿勢の変化」が明らかになった。単身世帯ですら約2/3がハイリスク商品に手を出さないのは、以前大きな問題となり、厚生年金制度においても動きを生じさせるきっかけとなったAIJの問題(【消えた企業年金、2000億円の大半...AIJ投資顧問のどたばた】)に代表されるような、金融商品に絡んだ詐称事件が後を絶たない状況を合わせ見るに、元々本質的な面での「安全志向」の他に、本文中でも触れている「リスクとリターンとの正しい関係」に関する知識・経験が不足しているのが要因と考えられる。要は「分からないから手が出さない」。

ポケモンのカモネギ自分が理解できないものには手を出さない。これは正しい投資の大原則に他ならない。分からないものに手を出して利を求めるのは、投資ではなく単なるギャンブルでしかない。同時に自分自身へのより大きなリターンを、そして市場環境の改善、そしてそこから連なる景況感の回復を望むのであれば、「お金とは何なのか、どのような役割を果たしているのか」関連に始まる、経済や金融の基本的な、そして正しい知識のさらなる習得が必要(行政、市場側の視点では一層の啓蒙活動が欠かせない)。知識が無ければ魑魅魍魎、山師らによる「分かりやすい、けれど正しくない」偽り言に容易にだまされて、カモとされてしまいかねないからである。


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