「とびだせ どうぶつの森」で「ファミ通DS+Wii」部数も飛び出す…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2012年7月-9月)

2012/11/07 06:50

【社団法人日本雑誌協会】は2012年11月2日、2012年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さの観点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値である。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それでは早速、まずは2012年の7-9月期とその直前期2012年4-6月期における印刷実績を見ることにする。

2012年の4-6月期と2012年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2012年の4-6月期と2012年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

この一年で「刊行中にも関わらず」印刷証明付き平均印刷部数の公開を止めてしまった雑誌が出てしまったが、今期は幸いにもその動きは無し。一方で追加の雑誌も無い。とはいえ、以前と比べると多少ながらも寂しい感は否めない。

印刷部数そのものの絶対値としては、やはり「Vジャンプがずば抜けた売上」「アニメ系ではニュータイプがトップ」の二つが印象的。そして前期と比べると、一部を除いて前期比ではマイナスが多い雰囲気。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年7-9月期、前期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2012年7-9月期、前期比)

今期は前期から一転……というほどでもないが、赤着色(前期比で5%以上の下げ)の棒グラフを形成する雑誌が多く、スリリングな状況にある。一方で前回唯一赤着色だった「ファミ通DS+Wii」は、その下げの反動もあるが、唯一の2ケタ台のプラスを示している。

これは【画面の面積比で1.9倍…任天堂、3DSの画面大型化版「ニンテンドー3DS LL」を7月28日から発売】でも示したように、任天堂が2012年7月28日から発売を開始した携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS LL」関連の情報によるところが大きい。また、同年11月8日に発売予定の3DS用ソフト『とびだせ どうぶつの森』の記事の影響も無視できない。

一方で以前から何度となく伝えている「PASH!」の堅調ぶりも相変わらず。前期で11.0%の伸びを記録し、そこからさらに今期では0.6%のプラスを示している。内容の充実性や付録を売りにした、女性アニメファン向け隔月刊雑誌で印刷部数は3万冊台だが勢いは強く、注目に値する。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2012年7-9月期、前年同期比)

プラス誌は4誌、マイナス誌は7誌。誤差範囲のプラスマイナス5%内を除けば、プラスは0誌、マイナスは7誌となる。前期比で見れば「少々は悪いかな?」的な雰囲気もあったが、前年同期比で見ると「かなり悪いな……」的な感想を抱かざるを得ない。

以前【「ゾッ」とするかな...? 三大アニメ誌の動向】で紹介した三大アニメ誌「ニュータイプ」「アニメージュ」「アニメディア」では、印刷部数そのものでは「ニュータイプ」「アニメディア」に及ばないものの、「アニメージュ」が奮闘しているのが確認できる。このまま状況に変化が無ければ、数年で「アニメージュ」と「アニメディア」の印刷部数上の順位が入れ替わる可能性も否定できない。

「アニメージュ」や「PASH!」など、コア層色が強いものは、今回も上位に多く位置しているか、下げ率を最小限(誤差の範囲)のものに留めている。これらは読者として設定している層への積極的かつニーズに応えた雑誌構成や付録提供が、現状維持・堅調化に表れていると見てよい。特に「PASH!」は印刷証明部数の絶対値としては他誌に比べると小さめ(直近では3.2万部)だが、上でも触れている通り前期にて隔月刊から月刊への飛躍を遂げており、数少ない事例(昨今では大抵セールスが思わしくなく、逆の事例として月刊から隔月刊のパターンとなる)として注目できる。



今期における「前年同期比」の比較対象となる2011年7-9月は、震災の直接的な影響も薄れはじめている。比較する場合の「反動」的な修正はほとんどなく、純粋に業界全体の動向を示していると見なしてよい。夏期節電の影響に関しては、2012年も「要請」という形ではあったが同様の節電が業界全体で行われており、値を修正する事象にはならない。そのような状況で前年同期比マイナス10%超の悪化が5誌という結果は、業界全体の調子が悪化していることを意味している。

一方で「PASH!」に代表されるような、上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動した読者層のニーズを適切につかみ、そのニーズに応えるコンテンツの提供」「自社、自雑誌の『資産』の有効活用」が際立つ傾向がある。それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている(「ファミ通DS+Wii」の場合は「特需」的傾向が強く、普遍的な流れを見出しにくい)。

不景気で可処分所得が減り、さらにスマートフォン・携帯電話のようなモバイル情報端末や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間と可処分所得を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、情報発信のスピード感では劣る、紙媒体としての雑誌の必要性も薄れている。とりわけスマートフォン、さらには今後本格化するであろう電子書籍リーダー(現状ではタブレット機が主力)の登場と普及は、「機動性の高い娯楽」(例えば雑誌、携帯ゲーム機)に大きな打撃を与えている。スマートフォンの浸透が主に若年層から進んでいることを考えれば、エンタメ市場に与える影響は、加速度的といえる。

かつてのゲーム誌(個性派)限られたお金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「八百屋でざるに乗せられたナスやキュウリ」のような同じようなものでは無く、「他には無い特別な一品」「紙媒体として手元に残しておきたい魅力あるもの」に見える個性的な雑誌を創らねばならない。

もちろん「読者の需要を適切に、深く追求する」だけを求め、同人誌やサークル誌のノリで猛進することを求めているわけではない。一定数量を販売する(=一定数の不特定多数から成る人達に支持される)商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない(その「ノリ」が通じる「市場」が、雑誌を支えるのに十分な力を持っているのなら話は別だが)。

印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、前進し続けている。上位陣の雑誌をくまなく読み解くことで、不調著しい雑誌業界における状況改善策のヒントが見いだせるに違いない。


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【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年・完全版)】

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