【更新】「ゲッサン」「少年サンデースーパー」が強烈連載陣でプラス…少年・男性向けコミック誌部数動向(2012年7月-9月)

2012/11/05 06:45

【社団法人日本雑誌協会】は2012年11月2日、2012年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向・実情を示すものとしては、各紙・各出版社が発表している「公称」部数より精度が高く、検証素材としても有益なものである。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者諸氏が興味をそそるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めることにする。

スポンサードリンク


データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

登場する冊子数はいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明付きで、雑誌社側の「公称部数」ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載の終了・開始、折り込み付録、経営戦略の転換etc.)のため、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」がトップにあることに違いはない。

2012年4-6月期と最新データ(2012年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年4-6月期と最新データ(2012年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで283万8334部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後と考えられる。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は実績のもとに今なお維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも、また事実。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由から「退場」した雑誌は無い。また、新規参入組も無し。小学館の【コロコロイチバン!】は、前期で見せた「奮闘」分がごっそりと抜け落ちてしまった。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2012年4-6月期と最新データ(2012年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2012年4-6月期と最新データ(2012年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

「ビックコミックオリジナル」「ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」の三強状態は継続中。また、【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたものの、今期でも両誌とも今期に至ってもデータの登録は無し。この時期になっても新規登録していない状況から察するに、両誌とも登録する意向は無いようだ。

一方、【隔週刊誌「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」の統合月2回刊誌、「グランドジャンプ(GRAND JUMP)」に決定】で以前お伝えしたように、「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」両誌は休刊となったため、今件印刷部数追跡記事で長年継続掲載していた両誌は、データ掲載誌としては除外されている。代わりに両誌の再構築誌的な立ち位置で登場した雑誌「グランドジャンプ」と「グランドジャンププレミアム」のうち、前者のみが参入。「-プレミアム」は月刊誌だが、非公開の方針は継続。統合・再分割のパターンは比較的稀有なため、その後の両誌の動向は何かと参考になることもあり、強く公開が望まれる。

その「グランドジャンプ」の今期印刷数は21.9万部。「ビジネスジャンプ」の最後期データ23.9万部を下回る状況には違いない。

前期・前年同期比の比較をしてみよう
さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化を試みることにする。季節変動「など」を無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

今件は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかの割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない(が、両方とも該当する雑誌は無い)。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2012年7-9月期、前期比)

前期記事の勢いほどではないが「ゲッサン」そして「少年サンデースーパー」の躍進ぶりが目に留まる。「ゲッサン」は「漫画力絶対主義」をキャッチコピーとする月刊の漫画誌で、積極的な【サイト展開(ゲッサンWEB)】も特徴の一つ。今期は前期で連載を開始した、あだち充先生の作品「MIX」に加え、9月号から連載を開始した大須賀めぐみ先生の「VANILLA FICTION」がプラス要因と考えられる。また「少年サンデースーパー」は前期の反動(前期はマイナス13.8%)に加え、「銀の匙-Silver Spoon-」の堅調さ、そして「マギ」のアニメ化直前による勢いが数字となって表れたのだろう。

他方、前期で大きく伸びを見せた「別冊コロコロコミックスペシャル」「コロコロイチバン!」などのコロコロ勢は軟調。一部には前期の反動によるものだが、留意はしておいた方が良かろう。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2012年7-9月期、前期比)

今回はプラス誌が2誌のみ、マイナス値を示す雑誌がほとんど。少年向け雑誌と異なり、状況は思わしくない。前期でマイナスを出した雑誌の反動すら見られない(あるいは反動の影響があってなお、この状況なのかもしれない)。また、かねてからの傾向にある通り、「コミック乱三兄弟」(「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」「コミック乱」「コミック乱ツインズ」)の底力が改めて認識される。

一方で今四半期で4回目となる「スーパーダッシュ&ゴー!」は、今回も前期比でもっとも大きな下げ率となってしまった。元々印刷証明部数がさほど多くないのも一因だが(今回は2.5万部)、不安を覚えざるを得ない。

以上、前四半期比についてチェックを入れたが、前期(4-6月)は長期休暇が無く、今期(7-9月)は夏季休暇があることから、多少のマイナスは仕方ないかもしれない。とはいえ、その季節属性による変動だけでは説明できない動き(特にマイナス側)なのも事実。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出できるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2012年7-9月と、その1年前の2011年7-9月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2012年7-9月期、前年同期比)

上記で取り上げた「少年サンデーS(スーパー)」が、前年同期比でも大きな伸びであったことが分かる。これは前期の記事でも解説した通り、新創刊によるもの。そして「ゲッサン」も、前期比だけでなく前年同期比でも大きな値が示されている。「ジャンプスクエア」は伸び率こそ1.9%ではあるが、部数は35.3万部と大きめなため、大いに評価できる値といえる。

「少年サンデーS(スーパー)」の100%超のプラスに半ば隠れてしまったが、他の各誌は押し並べて軟調。マイナス10%超が5誌という値は決して「見て見ぬふり」ができる状況とはいえない。特にこの5誌は前年同期比でマイナス10%を何度となく計上しており、そろそろ「少年サンデーS(スーパー)」のリニューアルのような、何らかの活性化策を打ち出さねばならない状況下にあることは否めない。

また週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」だが、今期では前者がマイナス5.2%、後者がマイナス9.9%と、双方ともあまり好ましくない値を示している。部数そのものはそれぞれ141.3万部・52.6万部と、他誌と比べればまだまだ大きな数字ではあるが、それゆえに「減少比率」でこの値を示していることには注意を払う必要がある。また、前期まで何度となく繰り返しているが、「週刊少年マガジン」との差異が3倍近くにまで開いてしまっている「週刊少年サンデー」は、早急な対策を講じねばなるまい。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2012年7-9月期、前年同期比)

前期記事の前年同期比項目で触れた「コミック乱三兄弟」が、順位も変わらずそのまま上位・プラス陣に陣取っており、他はおしなべてマイナス。やはり特異にして、同時に男性向けコミック誌の現状を顕著に語る結果が出てしまっている。しかも状況は前期よりも悪いように見える。

以前の記事で触れた、特殊事情を持つ「モーニング2」はともかく、「ビックコミックスペリオール」「ビックコミックスピリッツ」などの軟調さが気になる。特に「スペリオール」は太田垣康男先生による「機動戦士ガンダム サンダーボルト」の掲載が継続中の上でこの値であることを考えると、状況回復を果たすためには何をしなければならないのか、色々と考えさせられてしまう。



今四半期データは東日本大地震・震災の影響(直接の購入性向の減退に加え、インクや紙、付録用素材の不足)はほぼ払しょくされており、通常の出版業界動向を反映したもの(夏期の節電「要請」による部数減退の可能性はあるが、それでは前年同期のマイナスの説明が出来ない)。多くの雑誌でマイナス値を計上している状況からは、全体として売上の減少傾向、業界縮小の動きが継続している事実が再確認される。

特に「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返す雑誌が複数存在している状況は、雑誌そのものの休刊・デジタル化への移行、「グランドジャンプ」として新生を果たした「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」両誌の統合のような雑誌の再編、そして「少年サンデーS(スーパー)」のようなダイナミックなリニューアルが起きる可能性を多分に示唆している。

【1か月の購入金額は143円!? 週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(2011年12月版)】【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年・完全版)】などで触れている通り、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」事態が進行している。雑誌販売の一番の窓口といえるコンビニでも【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2012年「出版物販売額の実態」版)】で示した通り、出版物販売額は減少のさなかにあり、「雑誌離れ」が進んでいる。コンビニの雑誌コーナーを見ても、付録つきの雑誌が増えると共に、一誌で複数の平積みの山を形成することが少なくなっているのを実感している人も多いはず。

もちろん堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者からの「声」をとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽は残されている。読者の声に応える作品を展開すれば、素直に部数は増える事例もある(今回なら「ゲッサン」「少年サンデーS(スーパー)」が良い例だ)。

さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開、電子出版による「雑誌」の展開も検証課題として挙げられる。

先日【アマゾン、日本向けKindle各種の予約受付開始】でも伝えたように、いよいよ11月19日からは日本国内向けのKindle端末の発売が開始され、それに先立つ形で『Kindleストア』もオープンしている。電子書籍・電子雑誌の日本国内市場は、今後大きく動く可能性が高い。

また【Jコミ】のような過去の需要の掘り起こしで具体的・数字的な実績を次々と挙げ、新作への需要との連鎖反応を生じさせるサービスの堅調さも注目に値する。昨今では新たなスタイル「JコミFANディング」で読者が作家を直接後押しする仕組みも提案しており、国内電子書籍市場の風雲児としての立ち位置を確かなものとしている。

携帯情報端末の浸透が、一般携帯電話からスマートフォン、そしてさらにはタブレット機などにも移行することで、雑誌の立ち位置はますます不安定・不確定なものとなっていく。紙媒体としての雑誌のスタイルを維持するにせよ、他メディアとの連動性を高めるにせよ、大胆なかじ取りが求められている。【米国で進む「本離れ」に歯止めをかけるのが電子書籍? 米書籍購読傾向をグラフ化してみる】などでも触れているが、海外ではすでに電子書籍リーダーなどを介したデジタルメディアでの書籍を読み説くことも、一般の紙媒体経由によるもの同様「読書」として取り扱う流れが主流となっている。この状況に目をそむけてはならない。

紙には紙の、デジタルメディアにはデジタルメディアの利点があることを認めた上で、一歩前に進む時はすでに来ている。すでに嵐の中に突入してしまっている感は強いが、それでもまだ適切なかじ取りをすることで、嵐を抜け出すチャンスは残されている。ただし、残された時間は長くは無い。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー