ギリシャと関係の深いキプロスの動きが…EU失業率動向(2012年9月分)

2012/11/02 12:10

ヨーロッパ各国でも他国同様、「先進国病」の状況の一つとされる「若年層の高失業率」が問題視されている。そこで当サイトでは【EU統計局(Eurostat)】で公開している、失業率関連の統計データの最新版で確認し、内容を精査している。今回はその2012年10月31日発表・同年9月分の値について各種グラフを更新し、状況の把握を試みることにした(該当リリース:【Euro area unemployment rate at 11.6%(PDF)】)。

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文中・グラフ中にあるEA17やEU27については一覧ページ【ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】上の解説部分で確認してほしい。

ILO基準における2012年9月時点の発表データによる失業率は次の通り。なおこのグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータが未掲載(調査途中)の場合、原則として掲載時最新月分のデータを代用している。

↑ 2012年9月時点での失業率(季節調整済)
↑ 2012年9月時点での失業率(季節調整済)

スペインは相変わらず2割強の値を示し、ギリシャもそれに続いている。両国ともついに2割の後半(四捨五入して3割)に状態が悪化したのが気になるところ。そして、やはり債務問題でしばしば報道に登る国が上位に位置する状況を見ると、失業問題と経済・債務問題が密接な関係にあることが容易に推測できる。

今回も前回同様、前月(2012年8月)の値との差異を計算し、グラフ化を行う。失業率については(次の若年層周りでも同様だが)、国によって細かい修正が過去にさかのぼって行われることが少なくない。そこで前月比の算出の際に、今回計測月より前の月のものでも、最新のデータへ差し替えられているものがあれば(今回の場合は2012年8月分などが該当)、新しい値を入力し直した上で計算を行う。またリリース上に掲載が無いデータに関しては、詳細のデータベースページ【Data Explorer】を参照した上で追加し、計算する。

↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年8月→2012年9月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ 失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2012年8月→2012年9月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の多い・少ないや各国の統計上の誤差の大小などもあり、正直なところプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と見て問題ない(概して小国の方が誤差が出やすい)。今回月ではキプロスの動きが気になるところだが、【国債・公債のデフォルト確率上位国をグラフ化してみる(2012年8月15日版)】などで説明しているように、ギリシャとの関係が深く、同国の経済状態の悪化に伴い、連鎖的な影響が生じているものと考えられる。

そして冒頭にあるように、昨今の失業問題の中でも特に問題視されているのが、若年層の失業率。25歳未満の失業率はEA17か国で23.3%・EU27か国でも22.8%を記録しており、5人に1人以上が失業状態。中でもギリシャの55.6%(2012年7月)、スペインの54.2%を筆頭にポルトガルやイタリアなど、経済的に弱い国や労働市場での問題点を抱える国での高さ、急激に経済が冷え込んだ国の失業率増加が確認できる。

↑ 2012年9月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)
↑ 2012年9月時点での25歳未満の失業率(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)

↑ 2012年9月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)
↑ 2012年9月時点での25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)

前述のようにプラスマイナス0.3ポイント内は誤差と判断すると、スペイン、イタリア、ブルガリア、ポーランド、チェコの悪化、ポルトガル、スロバキア、リトアニア、スウェーデン、イギリス、エストニア、アメリカ、日本の改善が確認できる。今回月は比較的ポジティブの動きを示す国が多く、頼もしい限り。一方、今回最大の下げ幅(=状況の改善)を示したスウェーデンだが、先月の解説通り大きな悪化(当時プラス2.9%、直近データで修正が入りプラス2.8%)を直前に示しており、今回のマイナス2.2%はその反動とも受け止められる(スウェーデンの若年層の失業率問題については先月の記事を参照のこと)。

EU諸国に限ったことではないが、先進諸国で若年層の失業率が高いのは、産業構造の変化、そして若年層が手掛けることが多い「技術が未習得でも可能な、比較的容易な作業」が機械化され必要人員数が減ったこと、さらに為替レート上で相対的賃金の安い新興国に割り振られる動きを見せているのが主な要因。

そして債務問題で国レベルの財政の悪化に伴い、緊縮財政が取られていることも大きな悪化を後押しする要素。一般的に緊縮財政をとれば国内の産業が冷え込み、経済は低迷する。当然、労働市場も緊縮する。その上、ヨーロッパ諸国は他の先進国同様に高齢化により就労年齢が上昇しており、必然的に「高齢者が就業場所に居座り、席が空かない」状態になり、若年層が割を食う事態に陥っている。その上すぐには利益が数字として表れない(それゆえに企業にとってはかけがえの無い財産を創生しうる)「若年層の労働訓練・修練」は「即戦力にならない」「結果が出ない」とばかりに軽視されるため、若年層の立ち位置はますます悪化する。いわゆる負のスパイラル状態といえる(【イギリスでも広がる財政緊縮策への反発】でも触れている通り、緊縮財政のリーダーシップをとっているIMFも、ようやく方針転換を図る姿勢を見せてはいるが……)。

また、意図してか、結果論なのかは判断が分かれるが、【欧州の若年失業問題の整理に役立ちそうな記事】の例にあるように、「高齢者優遇」「若者冷遇」の雇用対策の結果(「(既存)労働者」の権利を手厚く保護するため、業績が悪化しても容易に現行労働者の解雇はできず、必然的に若年層を雇う余裕はこれまで以上に無くなる)が、若年層の失業率増加の大きな原因の一つとなっている。この状況は日本にも当てはまる。

労働市場の検証や失業対策では、単純に数字だけを比べて「他国と比べれば良い方だから我慢しよう」では無く、「失業率の低い国、改善が出来た国から有益な手法を学び」「自国の特性を加味した上で、状況改善に役立てられるかを検証」し、積極的かつ先行きが明るく見える政策が求められる。そして「安定性」という観点では短期間の労働契約ではなく、中長期的な雇用体系が望まれる。

上記にもある通り「雇用の長期化」は新規参入を阻む弊害もあるが、その弊害を無くすには、雇用そのものの拡大を推し量るのが一番手っ取り早い。ピザを分ける際に一人あたりの取り分が少なくなるのなら、ピザをもう一枚頼めば良いというわけだ。要は「経済の適切な拡大」が、結局のところ雇用問題の解決にもつながる次第。

明るい先・見通しが見えてこそ、就業者は経済面での生活の上でも精神的にも安定する。そしてさまざまな面での個人、そして国全体としても飛躍が期待できる。経済と雇用、労働市場、(さらには金融政策も)は密接な関連性があり、まとめて対策を打つ必要があることを忘れてはなるまい。

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