化学が「マイナス圏でのもみ合い状態」を打開できるかも・前年同月比でマイナス2.0%(2012年9月分大口電力動向)

2012/10/24 12:00

電気事業連合会は2012年10月19日、2012年9月分の電力需要実績の速報を発表した。それによると同年9月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で764億kWhとなり、前年同月比でプラス0.6%を記録した。産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス2.0%を記録し、振れ幅は小さいものの4か月連続で前年同月の実績を下回ることになった(【発表リリース、PDF】)。

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今調査の概要および用語解説は過去の記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で説明を行っている。そのページを見てほしい。

2012年9月では大口全体で前年同月比マイナス2.0%。それだけ工場の施設の稼働率が(昨年の同じ月と比べて)減ったことになる。

大口電力使用量産業別前年同月比(2012年08月-2012年09月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2012年08月-2012年09月)

先月は前年同月比プラスの項目は皆無だったが、今月はかろうじて「化学」のプラスが確認できた。上げ幅が限定的なため次月以降の動向はつかみにくいが、「マイナス圏でのもみ合い状態」を打開できる動きであることを期待したい。

1年前の記事と比較すると、1年前では「鉄鋼」以外ではマイナス値を示している。「化学」はリバウンドの可能性があるが、その他の項目は連続した下げであり、「昨年同月で上昇したのでその反動により、今月はマイナスになった」という説明は使えそうにない。特に「紙・パルプ」は昨年12.8%のマイナス・今年5.0%のマイナス、「繊維」は昨年7.3%のマイナス(確定時修正済み)・今年は7.6%のマイナスと大きな減少ぶりが確認でき、2年越しで概算するとそれぞれ17.2%・14.3%も減ったことになる。電力使用量がそのままその業界の景気動向をストレートに表すわけではないとはいえ、衝撃的な値には違いない。

先月比のグラフでは短期はともかく中長期の流れをつかむことは難しい。そこで記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

大口電力使用量産業別前年同月比推移
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2007年1月以降)

中期的な大口電力使用量の動向としては、「2010年4月を天井に、同年3月までの急速回復傾向がやや失速に転じた後の、安定成長期に移行したように見え」た動きが2011年3月で止まり、それ以降は大きく下落しているのが確認できる(無論東日本大地震・震災を直接・間接起因とするもの)。また2012年2月までは多くの項目でマイナス圏での推移が続いており、工場の物理的な損害以外に、(原材料の調達不足、タイムシフト・デイシフトをはじめとする各種節電対策など)多種多様な稼働率・生産調整が影響している。

2012年3月以降は「震災による大きな減少」からの反動の色合いが強く、多数の項目で大きく跳ねている。しかしこのリバウンド的な跳ねも一時的なもので、4月以降は失速、6-7月の領域で完全に低迷状態に陥り、以降はその状態が継続しているのが分かる。ちなみに今回の2012年9月・全体値の「前々年」同月比はマイナス7.6%という計算になる((100%-2.0%)×(100%-5.7%))こともは、合わせ知っておいて損は無い(昨年2011年は上旬まで電力使用制限令の影響で電力消費量が小さくなったが、今年も同様の節電要請が出されており、節電状況は昨年・今年でほぼ変わらない)。

工場今件大口電力は国内景気(内需)を推し量る物差しとなる指標の一つ。被災した工場の物理的復興は相当率なものとなったが、(電力の安定供給を含めた)回復を望めず生産施設をたたんでしまった事例をはじめ、節電対策による消費電力減退、景気低迷に伴う生産調整など、生産力の数字的低迷は否めない。そして今夏期は節電「要請」(だが企業にとっては実質的に電力使用制限令と同程度のプレッシャーがある)に伴い、「インフラに携わる者も含め」多くの企業や市民が難儀を強いられ、大きな負担を背負った。さらに今冬も、警戒される地域こそ異なれど、同じ状況が繰り返される可能性は極めて高い。

今後も全体の需給の流れと共に、特に製造業の動向を間接的に確認できる、大口電力の動向は注意深く見守っていきたい。

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