仕送り金は漸減状態…大学生のふところ内部事情(最新)

2022/04/12 03:07

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2022-0329高校生までと比べて大学生は可能なこと・するべきこと・許されていることが多く、また自由度も高い環境下で日々の生活を過ごすことになる。当然多様な出費が生じるため、それをまかなうための収入が不可欠。それでは大学生はどのようにして収入を得ているのだろうか。独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月29日に発表した【「令和2年度学生生活調査」】などの内容を基に、もっとも人数が多い大学生の大学昼間部について、ふところ事情を見ていくことにする。

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先に【アルバイト率約8割…大学生のアルバイト事情(最新)】で記した通り、今調査母体において直近年度では8割強がアルバイトに従事している。

↑ アルバイト従事者率(大学昼間部)(再録)
↑ アルバイト従事者率(大学昼間部)(再録)

アルバイトなどの仕事をすれば当然収入が得られることになる。しかしその手取りだけで学生生活の支出をすべてまかなえる人は少数(「まれ」のレベルだろう)。ほとんどは奨学金、実家からの仕送り、さらには貯蓄を取り崩して生活をすることになる。今項目ではそれら学生の収入事情をグラフにしたもの。

収入項目を大きく「家庭給付(仕送り)」「奨学金」「アルバイト」「定職(収入)・その他」に区分し、それぞれの収入推移と、収入全体に対する比率を経年でグラフ化したのが次の図。全体額の漸減、そして家庭給付が大きく減少しているようすが分かる。

↑ 大学生収入事情(大学昼間部、万円)
↑ 大学生収入事情(大学昼間部、万円)

↑ 大学生収入事情(大学昼間部、比率)
↑ 大学生収入事情(大学昼間部、比率)

今件データではアルバイト従事の有無、奨学金取得の有無毎の区分された値は無い。それぞれの年度全体としての平均であり、実際には個々の就学状態で大きく変化しうることを記しておく。例えばアルバイトをしていない学生は当然バイト料は手に入らず、実家通いで家賃や食費の一部を浮かせることができなければ、お財布事情はさらに厳しいものとなる(ちなみに直近の2020年度における大学昼間部の居住形態別学生数比率は、全体で自宅59.2%・学寮6.8%・下宿やアパートなど34.0%である)。

全体の傾向としては、

・全体額の漸減。特に2010年度の減りが大きい。2012年度と2018年度はかろうじて増加しているが、アルバイトや奨学金の積み上げによるもの。

・家庭給付の額はほぼ横ばいだったが、2008年度から2010年度にかけて大きく減っている。その後も漸減は続く。直近年度ではわずかに増加。

・アルバイトの額は横ばい、しかし2010年度には減る動き(アルバイト従事者の比率減少が一因)。2016年度以降は増加(アルバイト従事者の比率増加が一因)。

・奨学金額は2010年度に大きく増加し、その後はほぼ横ばいから漸減へ。

などの動きが見える。特に2008年度から2010年度にかけては大きなマイナス方向の動きがあり、2007年夏に始まる直近の金融危機、経済不況による影響が大きく出ていることがうかがえる。

詳しくは機会を改めて確認するが、とりわけ家庭給付の額の減少傾向が生じている。消費者物価指数の動向に大きな変化は無いことから、純粋に実家・親元のお財布事情が厳しくなったか意向の変化によって、仕送りが減らされたことがうかがえる。ちなみに2008年度から2010年度の急落だが、居住形態別推移を見ても、自宅通学の人が増えて下宿者が減ったからと説明するには減少額が大きすぎる。

気になる動きとしてもう一つ留意したいのが、奨学金比率の増加。これは奨学金の額面が増額しているわけではなく、受給者率が上昇しているからに他ならない。今件は大学昼間部のデータだが、2002年度では全学生のうち31.2%が奨学金受給者だったものの、これが2020年度には49.6%にまで増加している(こちらも詳しくは改めて見ていくことにする)。仕送り額の減額やアルバイト事情の厳しさを奨学金で少しでも穴埋めしようとの動きと言える。もっともここ数年においては漸減傾向にあるのもまた事実ではある。



仕事の現場で学べる点も多く、大学時代における一定のレベルでのアルバイトはむしろ奨励すべき話(極めて多忙な一部の学部を除く)。しかし大学生は学業こそが本業であること、そして学費の多分を実家にまかなってもらっている現状を考ると、アルバイトをはじめとする金銭関連で学生自身が苦心する状況は、あまり好ましいとはいえない。

奨学金制度をはじめ、大学生を支える仕組みの再構築と改善が求められよう。


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