出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)(最新)

2017/10/29 05:00

2017-1018昨今は「出版不況」「書籍不況」なる言葉も日常化し、紙媒体に関しては書籍に限らず新聞、そして手帳などの文房具ですら、厳しい状態が続いている。これもひとえにデジタル機器の普及に伴う、利用者側の購入・利用性向の変化によるもの。今回はその中から特に景況感の上で取り上げられることが多い出版物の売上状況について、主要種類別に関する動向を、日販の『出版物販売額の実態』最新版(2017年版)を基に確認していくことにする。

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出版物の分類別、売上高の前年比を記したのが次のグラフ。前年2015年分(今件では年度算出ではなく年算出、1月から12月の集計であることに注意)と比較するとプラス項目数は2つ。「児童書」「学参」がプラスを示している。前年ではプラス項目が5つだったことと比較すれば、相当苦戦していることになる(2015年では「文芸」「専門」「総記」もプラスだった)。なお項目中「実用書」は「旅行地図」も含んでおり、辞典(「学参」には集計されない)・事典・日記・手帳・その他をまとめて「総記」と呼んでいる。

↑ 分類別売上高前年比(2016年)
↑ 分類別売上高前年比(2016年)

「児童書」がポジティブな状態なのは毎年複数の記事で解説しているが、ここ数年は「学参」(学習参考書)も随分と健闘している。項目別前年比ではそれぞれプラス4.1%、プラス2.6%。理由は「出版物販売額の実態」には記載されていないが、ここ数年様々な切り口、特に若年層の趣味趣向に合わせる形で参考書を作り上げる手法が注目を集めており、ヒット作も続々登場していることから、その成果が数字となって表れたものと考えられる。昨年も【ボカロのPV付き参考書が大ヒットしているとの話】で紹介したように、「ボカロP」(歌声合成ソフト「VOCALOID」を使って楽曲を作るクリエイター)が作詞作曲した学習用の歌を収録した歴史や理科の参考書が展開され、大ヒットを生み出していることから、「流れ」をつかんだ感はある。

他方他の分類は不調。「総記」以外では大よそマイナス5%前後を示しており、特段どのジャンルで売れ行きが低迷しているのかといった話ではなく、全般的な不調感の中にあることが分かる。ただし「新書」は別で、前年比15.1%と大幅なマイナスを計上。【日販の年間ベストセラーの記録】によれば、2016年における「新書」のベストセラーは、フィクション部門が「映画 暗殺教室 ―卒業編―」、ノンフィクション部門が「言ってはいけない」。これらの作品がセールスの上でいまいちだったとの話は耳にしていないのだが。

あるいは前年の「新書」が堅調だったため、その反動があるのかもしれない。とはいえ「新書」の前年2015年における前年比はマイナス2.7%で、好調だったとはとても言えない実情。「文庫」「新書」のセールスはヒット作の有無に左右されるとはいえ、好ましい数字ではない。一方で電子書籍化の恩恵を「新書」が大きく受けているため、その分紙媒体版のセールスのみが計上されている今件データでは、落ち込む一方の結果が出ている可能性も否定できない。



2014年分までの記事ならばこの後に、書店面積別の動向分析が入るのだが、『出版物販売額の実態』の2016年版(2015年分)からは関連値が非公開となってしまい、言及ができなくなってしまった。小規模、個人経営の書店の閉店が相次ぐ中で、状況把握には大いに役立つ内容だっただけに、残念でならない。

他方、子供を対象とした出版物が堅調な動向に変わりは無く、「児童書」だけでなく「学参」、さらには推定の域を出ていないが「総記」もまた、同様の堅調な波に乗った感はある。


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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 書店サポートチーム「出版物販売額の実態 2017」

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