出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/11/03 05:14

かつては出版物を購入する場所といえば本屋がメインで、あとは出勤時に駅の売店で買うぐらいのものだった。しかし現在ではコンビニやインターネット通販など、多種多様なルートを通じて入手することができる。それどころか昨今では新興勢力のインターネットに押される形で、本屋の統廃合や大型化が進んでいる状況。今回はその動向を販売額から確認すべく、日販の『出版物販売額の実態』最新版(2016年版)を元に、その実情を精査していくことにした。

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ネット以外は減少続く…直近の流れをチェック


まずは出版物(あくまでも出版されたもの。つまり紙媒体)の流れ・流通の仕組みだが、概念的には次の通り。

↑ 出版流通の仕組み(取引形態)
↑ 出版流通の仕組み(取引形態)

これは10年ほど前に経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課が「コンテンツ産業政策」の一環としてまとめた【出版産業の現状と課題(PDF)】に掲載されていたもの。約10年前に作成されたものなので数字部分は大きく変動しているが、基本的な流れに変わりはない。今回グラフ化するのは、この「書店」の部分、つまり「取次」と「消費者」の間に挟まっている、小売の「書店」部分の動向。

昨今では電子書籍の流通も進んでいるが、電子書籍でも少なからずは取次を経由しており、一般書籍とさほど変化は見られない(取次を利用した方が、紙媒体の販売時に取次に任せていた作業を自前でやらずに済む。つまり手間が増えない)。そして2015年度において日本国内の電子書籍市場規模はインプレス総合研究所の調査結果によれば【雑誌も含めて市場規模1800億円超え…「電子書籍ビジネス調査報告書2016」発売】にもあるように、雑誌も含めると1800億円程度と推定されている。また今年発行分から「出版物販売額の実態」でも電子書籍に関わる調査結果が記されており、それによれば1846億円で、ほぼ同額となる。これはインターネット経由の出版物の通販(インターネット専業店を経由して販売された出版物推定販売額。アマゾン経由なども含む)を超え、コンビニ経由に肩を並べるほどの額となっている。しかしながら今記事はあくまでも「出版物」を対象としているため、数字には反映していないが、後ほど別の記事で反映した考察を行う。

また今年発行分から「出版社直販」が項目に加わっている。これは出版社が取次を通さずに直接販売店や読者に出版物を販売するルートを指す。具体的な例としては個人読者以外に学校や研究施設、教育機関、企業などが相当する。グラフ記載の際には、通常の販売ルートとは多少色合いが異なるため、項目順としては最後に並べることとする。

さてそれでは早速、主要販売ルート別の推定出版物販売額を直近5年間の動きで見ていく。元データはもっと細かい部分まで出ているが、億円以下は四捨五入で掲載。なお今年発行分から仕切り分けが変更され、かつて生協ルート、駅販売ルート、スタンドルートに区分されていたものが、合わせて「その他取引経由ルート」となっている。また駅売店の一部が大手コンビニチェーン店によってコンビニ化されているが、これはコンビニに該当する。

書店ルートがトップなのは当然だが、コンビニが現時点では第2位のポジションについているのが分かる。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2011-2015年度年)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2011-2015年度年)(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2011-2015年度)(比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2011-2015年度)(比率)

かつて【「駅の売店では新聞・雑誌が売れないらしい」を確かめてみる】で挙げた駅売店を含む「その他取次経由」は、金額ベースでは814億円。インターネットルート(アマゾンジャパンや楽天ブックスなども、把握できる範囲で含む)は1727億円、全体比は9.6%。インターネット経由の出版物販売は、成長率こそ著しいものの、現状では出版物販売全体のシェアを食い荒らすほどのものではないことが分かる。立ち位置としては広告業界における既存媒体広告(いわゆる「従来型広告媒体」「4マス」)と、インターネット広告のような関係と表現できよう。また、この5年間に限れば、インターネット以外の主要ルートすべてで販売額が漸減している実情がうかがえる。

より長期の動向を確認する


より長い期間での推移を見るため、今資料にデータとして収録されている過去の分、そして当方の手元にある過去データ蓄積分のうち連続性のあるものを元に、積み上げグラフと比率グラフにしたものを生成する……のだが、上記でも言及の通り、今年発行分から「出版物販売額の実態」では各種仕切り分けや計算方式を変更したため、コンビニ経由の販売額以外では過去の公開値分との単純な連続性は無くなってしまっている。そこでコンビニのみ過去の値も含めた蓄積データを、それ以外は今回発行分に掲載されている値を基に生成する。

また上記で言及の通り、今件では電子書籍は含まれていない。さらに2006年度まではインターネット経由の数字は「その他」項目に区分されていたが、2007年度以降は別個の項目として新設されている。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(コンビニ限定)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(コンビニ限定)(主要項目における全体額に対する比率)

販売額数のトータルが減少している事実、そしてその減退ぶりには、改めて驚かざるを得ない。以前【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でも表したように、新刊の書籍・雑誌種類数は増加の傾向を示しているからだ。【書籍売上と新刊点数の推移 2000年-2012年(日本著者販促センター)】で状況を確認しても、新刊点数は増加を続けている。ただし直近値を確認すると【日本の出版販売額(取次ルート)(全国出版協会)】によれば、昨今では文庫本の新刊数はほぼ頭打ち、ムックは新刊点数は増加を続けているものの販売額は低迷、月刊誌に関しても「休刊点数が創刊点数を上回り、総銘柄数は7年連続で減少」など、景気の良い言及は見受けられない。

また【日版の取扱の限りでは雑誌の売れ行きが書籍を下回ったとの話、そして返本率の確認】などにもある通り、返本率は書籍などで3割、雑誌に至っては4割に達している。このことから、読者側の趣味趣向の多様化により、種類数は増えても1種類あたりの発行部数が減っていると見るのが推論としては正しいようだ。良く言えば趣味趣向の多様化に対応した戦略、うがった見方をすれば「数撃ちゃ当たる」「ノリと勢いで新刊を出し、ロングセラー的な売り方にはあまり注力しない」的な表現が当てはまる。さらに「日本の出版販売額」でも見受けられる言及であるが、ヒットする・しないで作品の販売動向が二極化する傾向も見受けられる。

他方、書店数は減少する一途をたどっているが、それにも関わらず、書店の販売比率(全出版物販売額比)はほぼ横ばい傾向にある。これは販売「額」を見ればお分かりの通りで、書店の販売「額」そのものは減少しているものの、それ以上に他の区分、とりわけコンビニや駅売店を含めた「その他取次経由」の販売額が減少しているのが要因。一言で表現すれば「書店以上に他の小売で出版物の売れ行きが減り、相対的に書店での販売額比率は横ばいを維持している」ことになる。書店の相次ぐ閉店、そして連動する形で販売機会の減少が声高に叫ばれているが、「リアルな購入機会の減少」事案は、それ以外の場所でもっと深刻化している次第である。さらに似たような現象、額面は減退中であるものの、全体比率はほぼ横ばいの動きは出版社直販でも生じており、興味深い傾向には違いない。



やや余談になるが、販売額の前年比を折れ線グラフにしてみたのが次の図。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)(コンビニ限定)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)(コンビニ限定)

書店や出版社直販、その他取次経由は単に減少するだけでなく、減少幅を拡大。インターネットはプラス圏を維持。そしてコンビニは2007年度の急落以降、大きな低迷を継続している。直近の2015年度に限れば、前年度比プラスはインターネットのみとなっている。

コンビニの低迷状況に関しては【コンビニでは本が売れなくなってきているようだ】でも一部指摘しているが、

・大きな低迷を見せ始めた2007年度以降はインターネットや携帯電話の本格的普及時期と重なるため、ハードルの低い時間つぶしが「コンビニでの雑誌(特にファッション誌や週刊誌、コミック廉価版など)」からネットやモバイル系端末に奪われた結果

・家計単位での雑誌販売額の減退によるもの

・コンビニで販売される機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連など、関連雑誌業界そのものの不調

・コンビニでしか買えない雑誌の類の減少

・コンビニで販売されるタイプの雑誌における、付加価値や情報そのものの陳腐化(付録雑誌は増加しているが、縮小再生産の感は否めず)

・コンビニにおける利用客の消費性向の変化(お弁当などと一緒の「ついで買い」をする余裕がなくなってきた、「ついで買い」の対象が惣菜やコーヒー、ドーナツなどの間食類に移ってきた)

などが想定される。この2005-2006年の時期をターニングポイントとする動きは、例えば広告費の動向などにも表れた共通のものであり、社会全体の流れが動きを見せた時期と見ることもできる。

一方、詳しくは機会を改めて解説するが、そのコンビニにおける雑誌の集客力が大きく減っていることは、コンビニ業界の月次報告でも言及されている。同じような立場のたばこと共に、売り場における肩身が少しずつ狭い状況となりつつあるのは確かな話。

ともあれ、書店数の減少そのものは事実だが、それのみが出版業界の低迷に直接起因する第一要因と考えるのは無理がある。むしろ原因と結果が逆で、出版業界の低迷が書店数の減少に影響を与えている、一因である可能性も否定できない。しかしそれよりはむしろ双方とも、他の要因(趣味趣向の多様化、インターネット・携帯電話の普及による時間消費手段の変化、書店経営者の高齢化、地域商圏の希薄化)により、連動的に縮小を余儀なくされていると考えた方が辻褄は合いそうだ。


■関連記事:
【コンビニの商品種類別売上の変化をグラフ化してみる】
【戦後の雑誌と書籍の発行点数をグラフ化してみる(「出版年鑑」編)】

※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 書店サポートチーム「出版物販売額の実態 2016」

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