前年比マイナス2.0%…新聞業の売上高動向(2016年)(最新)

2016/10/06 11:58

当サイトでは大きく2つのルートから日本の新聞業界の動向を俯瞰的に推し量り、解説記事を展開している。一つが半年ペースで更新される読売新聞社の広告ガイドページ経由・日本ABC協会発表の主要新聞社の販売動向。もう一つが日本新聞協会が年ペースで更新する、新聞業界全体の各種指標。そのうち後者において、業界全体の売上と従業員に関するデータの更新(2015年度分の反映)が確認された。そこで今回は売上全体の推移を中期的な視点から眺めていくことにする。

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中期的に総額は漸減、前年度に続き2015年度も「その他収入」が伸びる


データ取得元は【新聞の総売上高の推移】。ここから新聞業全体(日本新聞協会が把握している範囲)の売上高、及びその部門別額の移り変わりをグラフ化する。元データでは2002年度で「暦年」(各年12月末区切り)から「年度」(各年3月末区切り)に変更しており、この変更を無視してグラフ化すると2002年前後で不具合が生じかねないので、年度切り替えを果たした2002年度以降のみをグラフ生成の範囲とした。

↑ 新聞業の総売上高の推移(億円)(-2015年度)
↑ 新聞業の総売上高の推移(億円)(-2015年度)

2004-2005年度に総額で一時盛り上がりを見せているが(2011年度もわずかだが増加はしている)、それを除けば総じて減少傾向にある。特に赤茶色部分「広告収入」の減り方が急激なものであるのかが分かる。

一方で青色部分の販売収入(要は新聞そのものを販売したことによる売上)は大した減り方では無いが、やはり減少を続けている。大手5紙が概して少しずつだが確実に売り上げを落としていること(【新聞の販売部数などの推移をグラフ化してみる】)と合わせて考えると、感覚的には一致する。

直近の2015年度は主要の2部門が減少する一方で、唯一「その他」の収入が伸びている。これは前年度に続く動き。今件元資料では単純に「その他」のみの表記だが、具体的には情報処理サービスやイベント業務、不動産賃貸業務などを指すと経産省の「特定サービス産業実態調査」などの資料にある。要は新聞業においては副業的な立ち位置。色々と納得できる動きではある。もっとも売り上げ全体からみればやはり「その他」レベルでしかなく、全体を底上げするまでには至らない。全売上に対する比率は約19%となっている。

売上高前年度比で部門別のすう勢を確認


さてこの数字を元に、変化が分かりやすいように「前年度比」を算出したのが次のグラフ。2005年度以降、特に2007年度以降に渡り「広告収入」の減少ぶりが著しいことが再確認できる。ひとえに金融危機、そしてリーマンショックの影響によるところが大きい。またこの減退ぶりは、同時期に発生・進行している、広告発注側による「新聞の広告媒体としての価値観の見直し」も一因にあると見られる。もっともリーマンショックによる下落のピーク後は、少しずつ下げ幅を縮小する動きを示していた(下げ幅が縮小されても「下げ」ている以上、金額では前年比マイナスには違いない)。昨今では再びマイナス幅が大きくなる動きを見せている。

↑ 新聞業の総売上高の推移(億円)(-2015年度)
↑ 新聞業の総売上高の推移(億円)(-2015年度)

2015年度の販売収入は前年度比でマイナス2.8%、広告収入はマイナス4.8%。部数の下げ度合い以上に広告収入の下げ方が大きい。とはいえ双方ともマイナスには違いない。【新聞の広告掲載「量」と「率」動向】にある通り、2015年は新聞における総広告量は減っているが前年比で約2.2%減であることから、単純に広告量の減退だけでなく、広告単価も引き下げられたのは容易に想像ができる。そしてその広告単価引き下げの要因の一つとして、部数の減退があるとすれば辻褄は合う。

今年度2015年度の販売収入の減少ぶりマイナス2.8%は、比較が可能な2003年度以降に限れば、前年度の2014年度におけるマイナス4.8%に次ぐ下げ幅となっている。日本ABC協会発表の主要新聞社の販売動向でも言及しているが、大手新聞社の低迷が大きく響いているものと考えられる。

また、今世紀に入ってから、特に2005年前後からの広告費の急激な減少は明らかで、これが新聞業界全体の頭痛のタネとなっている(2012年度は久々にプラスだったが、それも続かなかった)。これはインターネットなど媒体としてのライバルの増加による競争激化に伴う単価引き下げ、発行部数低下に伴う媒体力の低下、そして内容そのものの(品)質の問題など、想定できる要因は複数考えられる。しかも、どの項目も多かれ少なかれ的外れではなさそう。

そして一方、鉄壁的存在ともいえた「販売収入」、つまり新聞そのものの売上も、毎年確実に減少している。さらに2011年度では総額を押し上げる貢献を果たした「その他収入」も、今年度もプラスを見せたものの、総額の底上げまでには至らなかった。

「販売収入」も「広告収入」も多分に販売部数と深い関係がある。売上の上昇には部数拡大が不可欠ではあるのだが、現状ではそれも難しそうだ。



ちなみに5月に【企業が払う新聞広告費と広告費相場の変化】で、新聞広告費の推移を確認した。

↑ 新聞広告費(億円)(-2015年)(再録)
↑ 新聞広告費(億円)(-2015年)(再録)

これは各企業が新聞掲載のために支払った金額。新聞社が受け取った、つまり売上として計上した額との間には大きな差異がある(グラフの年数区切りが年度・年で異なるので単純比較は出来ないが、大体3-4割の差異が確認できる)。これは姉妹サイトで解説している【広告業界や代理店の仕組みが分かるステキなレジュメ】などで概要を触れている通り、広告代理店の手数料やその他諸経費などが、この差異に該当すると見てよいだろう。


■関連記事:
【新聞の販売部数などをグラフ化してみる(半期分版)】
【戦中からの新聞の発行部数などをグラフ化してみる】

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