各電力会社間の電力の融通具合を図にしてみる(2012年9月版)

2012/09/17 07:00

各電力会社間の電力の融通具合先に【関電管轄に15%節電「要請」…今夏電力需給対策発表】【関西電力需給動向】などにもある通り、今夏の電力需給はとりわけ関西電力管轄において厳しく、中部電力や四国電力などからの融通電力を受け、どうにか乗り切ることができた(融通電力や大飯原発の再稼働が無ければ、不測の事態が起きたリスクはケタ違いに跳ね上がったことは容易に推定できる)。この際に使われたのが、各電力管轄間で電力のやり取りをする連系線。今回は今後の記事展開の資料用として、以前したためた記事を修正する形で、各電力会社間の応援送受電の容量(連系線上で実際に使われた、安定運用できる範囲での、という意味)を図にしておくことにする。

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今回資料として用いたのは、2012年3月に開催された【総合資源エネルギー調査会総合部会 電力システム改革専門委員会地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会(第二回)】内の資料、【資料6 地域間連系線の運用容量に関する新たな評価について(PDF)】。連系線に関するさまざまな実例、今後の課題と共に、昨冬における運用実績が描かれている。ちなみに容量に幅のある形で表記されているものは上限値を採用した。

↑ 国内連系線と運用容量(2011年12月-2012年3月・安定送電上限)(2012年3月総合資源エネルギー調査会総合部会「地域間連系線の運用容量に関する新たな評価について」から作成)
↑ 国内連系線と運用容量(2011年12月-2012年3月・安定送電上限)(2012年3月総合資源エネルギー調査会総合部会「地域間連系線の運用容量に関する新たな評価について」から作成) ※クリックで拡大表示

各電力会社はそれぞれのエリア内で需要に応じた電力を供給している。しかし他社受電などでも対応しきれないほどの需要が生じた場合や、事故やメンテナンスその他の理由で供給が落ち込んだ場合、他の電力会社からの融通が出来るように、連系線を使い、電力の応援送電・応援受電ができるようになっている。だが送電線の熱容量や周波数、電圧、安定度などの問題から送れる電力には上限が生じる。

また、中部-東京電力間が直流なのは異なる周波数間でも連系が行えるため(その分交流・直流・交流の変換プロセスが必要になるので施設が大きくなる)。四国-関西と東北-北海道間が直流なのは、交流の電力間で環状の流れが構築されると制御が難しくなるので、意図的に直流を用いている。

さて、図を見直すと分かるように、各電力会社間の連系線の運用容量は限られたものである。無論不測の事態・緊急事態においては短期間的に運用容量を超過した応援量を流すことも不可能ではないが、大きなリスクが生じる。

今件資料ではその一例として、2012年2月3日に九州電力管轄・新大分発電所で午前4時頃に起きた緊急停止(230万kW減)が挙げられている。安定運用では中国から九州への融通電力は30万kWだが、最終的には差し引きで100万kW超の超過潮流が生じた(融通電力量は210万kW。ただしその時点で69万kWが九州から中国に流れていたため、その分が打ち消され、141万kWとなる)。

↑ 2012年2月3日に九州電力管轄・新大分発電所で午前4時頃に起きた緊急停止の際の動向。策定資料より抜粋
↑ 2012年2月3日に九州電力管轄・新大分発電所で午前4時頃に起きた緊急停止の際の動向。策定資料より抜粋

運用容量を超過すると当然リスクが生じる。交流線の場合「熱容量」「系統安定度」「電圧安定性」「周波数維持面」の面でリスクが考えられ、想定値を超えて運用すると、それぞれの面で大規模停電、設備損壊などの可能性が生じる。例えるなら大の大人が自転車で三人乗りをする、ウォータースライダーで定められた一定時間の間隔を空けずに、続々と滑り出すようなものである。

「もっと連系線の能力を上げれば良いではないか」とする意見もあろう。ゲームの世界でなら、電線を幾ら敷いても懐は痛まないので、それも可能。しかし現実世界ではそうもいかない。同じく【総合資源エネルギー調査会総合部会 電力システム改革専門委員会地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会(第二回)】【資料7 地域間連系線等の整備に係る 費用負担のあり方について(PDF)】によれば、増強には「10年程度の期間」「100万kWの増強に2000-3000億円の費用」が必要とされている。もちろん施設が増えればそれだけ運用・不測の事態の際の修理コストも上乗せされる。お金が空から降ってくるものでない限り、費用を無制限に費やして好きなだけ増強するという考えは愚の骨頂でしかない。



事業者側でも運用方法を工夫するなりして、少しでも不測の事態に対応しやすいような努力を続けている。しかしこれまでのルールがあくまでも「安全・安定第一」を元に作られている以上、新たな設備や機構による補完が無い限り、リスクは確実に高まる。

春先に関電の需給関連で論議されていた、電力の安定供給を責とするために停電リスク回避を第一義として各種数字を提示した関電に対し、「リスクが積み重なっても、そのリスクが発動しなければ問題はない」として猛反発をした一部権威者のような考え方は、少なくともインフラ事業では取り入れるべきものではない。保険に入らずとも、シートベルトをかけなくても、事故に遭わなければどうということは無い、とする考え方は御免こうむりたいものである。

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