どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移(最新)

2024/02/02 02:38

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2024-0201当サイトでは【定期更新記事:経産省広告売上推移(経済産業省・特定サービス産業動態統計調査)】にあるように、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を基にした広告費動向を定期的に追いかけ、グラフを作成し、その内容、つまり従来型4マスメディア(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)の広告とインターネット広告の動向を精査している。その中で、かつて新聞広告とインターネット広告は金額的にほぼ同じ、むしろ新聞広告の方が大きな市場規模を有していたが、昨今ではその立場は逆転し、インターネット広告が優位な状態にある。今回は広告市場の変貌を端的に推し量れるこの立ち位置の変化にスポットライトを当て、移り変わりの流れを確認していくことにする。

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データの取得元は「特定サービス産業動態統計調査」の【長期データ収納ページ】。ここには業態別に月・四半期・年・年度ベースでの金額・伸び率を示したファイルが納められている。ここから「広告業」のファイルをダウンロードし、必要となる「新聞」「インターネット広告」の部分を抽出、その値を基にグラフを作成する。インターネット広告は単独項目として登場するのは2006年1月以降なので、グラフもそれ以降を対象とする。

まずは取得できる全期間における推移。恐らくは2006年1月以前にもインターネット広告費はそれなりの額が動いていたはずだが、今件データとして収録されたのは2006年1月の80.3億円が初めて。一方同時期の新聞広告費は541.3億円。

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)

インターネット広告費は2009年までは「漸増」との表現が適切な上昇傾向だった。しかし2010年に入ってからは上下変動幅を大きくしつつ、全体的には上げ幅を拡大する流れにある。特に年末の12月と年度末の3月には大きく上振れするのが特徴的。消費一般もこの時期に拡大する傾向にあるため、より効果的な広告効果を狙うべく、機動力を持ち柔軟性の高いインターネットに広告リソースを一層投入しているものと考えられる。また【利用世帯率55.8%・平均支出額2万5286円、利用世帯に限れば4万5298円…ネットショッピング動向(最新)】でも解説の通り、インターネット通販では3月と12月は大いに世帯単位での利用額が増加することから、連動性が高いインターネット広告へのリソース投入もまた活性化すると推測すれば道理は通る。

一方、新聞は静かに減少。2010年に入るとようやく下げ止まった感はあるが、時折大きな減少を示す。そして2015年以降は再び漸減の動きを示している。【1987年がピーク、2022年では過去最少値を更新…新聞の推定読者数の推移と今後予想(最新)】【雑誌や書籍の支出金額…購入世帯率や世帯購入頻度の移り変わり(家計調査報告(家計収支編)・二人以上世帯版)(最新)】など他の調査結果によれば、新聞そのものの発行部数、そして新聞に対する広告出稿の減少は継続しており、今後新聞広告費が再び大きく下げる傾向となる可能性は高い。

またインターネット広告費と似た傾向として、新聞広告費では毎年3月に大きく値が跳ね上がる。年度末から新年度にかけ、さまざまな環境の変化に併せ、幅広い属性に向けた周知に期待ができる新聞に対する広告効果を狙った出稿増、特に新商品や雑誌の新刊などの広告展開が行われる結果と考えられる。

他方2020年4月以降は新型コロナウイルス流行を原因とする経済活動の停滞による影響が生じたようで、新聞広告費・インターネット広告費ともに例年と比べて勢いが弱いものとなったのが目にとまる。ただし勢いの回復はインターネット広告費の方が早く、そして回復度合いも大きく、今や新型コロナウイルス流行以前を超える勢いで増加を示している。もっとも、そのインターネット広告費もここ数年の間では成長が鈍化している、あるいは成長を止めてほぼ横ばいに推移しているようにも見える。不景気ゆえの動きか、それとも現状における市場規模拡大の限界に来ているのだろうか。

「新聞広告費…下げから横ばい、再び緩やかだが下げ」「インターネット広告費…漸増」との動きがあり、2010年半ば以降何度となく双方がクロスした以上、両者間の立ち位置がいずれ入れ替わるのは容易に想像できた。そして2013年に入ってからは、インターネット広告費が新聞広告費を上回る機会が多々生じ、2015年後半ぐらいからはそれが当たり前となっている。

インターネット広告費の上昇率が大きくなる2010年以降に限り、グラフを再構築したのが次の図。「インターネット広告費が新聞広告費を上回る」状態を記録した月の、インターネット広告費側の値の丸を黄色で塗りつぶしている。さらに差異が分かりやすいように、「インターネット広告費」から「新聞広告費」を差し引いた結果の推移も併記した。この値がプラスの場合、「インターネット広告費」は「新聞広告費」を上回っていることになる。

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(2010年1月以降)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(2010年1月以降)

↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(直近1年間)
↑ 新聞広告費とインターネット広告費(月次、億円)(直近1年間)

↑ インターネット広告費−新聞広告費の値(月次、億円)(2010年1月以降)
↑ インターネット広告費−新聞広告費の値(月次、億円)(2010年1月以降)

現時点で二者間の立ち位置が逆転、つまりインターネット広告費の額面が新聞広告費を超えた月は2011年3月に始まり、全部で138か月分(直近の2023年11月分まで)。2013年に入ると2月以降は継続してインターネットの優勢が続き、2013年11月と2014年1月にイレギュラー的に逆転現象が起きた以外は、インターネット広告費が優勢の月が続いている(2014年2月以降118か月連続)。

直近における新聞広告費優勢最後の月となる2014年1月分は、都知事選の影響が多分にあったことが観測されており、イレギュラー的な要因の結果と考えられる。また1月はインターネット広告の閑散月でもある。そのような事案が発生する以外においては、「従来型4マスメディアとインターネット」との区切りにおいて、「市場規模で比較してテレビ広告の次に来るのは新聞広告ではなく、インターネット広告」との状況は、固定化されつつある。

また2020年の春先以降は新型コロナウイルスの流行による経済活動停滞の影響を受けたと思われる特異な減少が生じているが、よく見ると新聞広告費は2020年4月から大幅な減少が見られるのに対し、インターネット広告費は同年5月に入ってからとなっている。同じ広告でも新聞とインターネットで影響が生じるタイミングがずれているのは興味深い。



一連のデータを元にした記事の展開を始めた2009年6月分時点では「あるかも」程度の可能性でしかなかった「新聞の広告市場規模をインターネットが抜き去る」状況が、今やすでに現実のものとなっている。何らかのイベント的な出来事で、今後稀に新聞の広告費がインターネットのそれを抜く時期が生じる可能性はゼロではないが、全体的な流れを変えることはないだろう。

メディアのすう勢を推し量る物差しの一つ「広告費市場規模」に関しては、インターネットが新聞を追い抜いたと断定してよいだろう。


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