気候動向を受けて穀物価格は最高値圏に接近(2012年8月分世界食糧指数動向)

2012/09/08 07:00

過去の当サイト記事において、国連食糧農業機関(FAO)発表の公式データ【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けていることをお伝えした。これは1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を食料価格指数としたものであり、すなわち世界の食料価格が高水準を維持していることになる。当然、各種商品市場の動向や政治情勢にも影響が生じ得る。そこで当サイトにおいては定期的、具体的には毎月データの更新・グラフの再構築と状況の精査を行うことにしている。今回はその2012年8月分の反映版となる。

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今記事のデータ取得元や用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認を願いたい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年8月)

砂糖(オレンジ色の線)は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいが、それ以外の項目は2005年前後まで、50-150の領域(水準値100のプラスマイナス5割内)でほぼ留まっていたことが確認できる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱・金融不況を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方だった。

2011年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きがあったが、それも今年に入ってからは再び上昇の気配が感じられた。最近ではややもみあいの雰囲気が続く中、今回8月分では元々変動幅の大きな砂糖は下げたが、他の項目は小康状態にある。

その他に目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、その後はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降にグラフ生成期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年8月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作の報をきっかけにした反動の結果。しかし価格上昇の原因である「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域(300を底値)での上げ下げを繰り返している状態。ある意味安定しているが、高値での安定はあまり好ましい状況ではない。

今回計測月となる2012年8月においては直上で触れたように砂糖の下げが目に留まるが、それ以外はやや上げ、あるいはほぼ変わらずの動きを見せている。いわゆる「小康状態」。ただし先月言及した米ロでの干ばつに加え、先日【干ばつ被害、バルカン諸国でも】でも伝えたように、ヨーロッパ方面でも同様の話が入ってきた。留意を要する動きといえる。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年7月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年7月)

昨年同月と比べればまだ低い水準ではあり、砂糖は先月比でも大きく下げている。ただし穀物は前月比・前年同月比共にプラスを示しているのが注目に値する。最初のグラフを見返せばわかる通り、穀物価格はこの20年来においける最高値圏に近づいており、今後の収穫動向次第では最高値の更新も十分にありえる。

リリースでは今月の動きについて「総合指数は先月とほぼ変わらず。昨年同月と比べればまだ低い方。砂糖価格が下がり、上昇する食肉と乳製品の上げ幅を吸収した」「穀物では7月同様、小麦と米が上昇したが、トウモロコシの下落が全体を抑える形となった。ロシアとアメリカの干ばつは目に余るものがあるが、現時点では食料の輸出制限は行わないとの発表が、国際価格の上昇をとどめるのに役立った」「油脂価格は2008年の高騰時と同程度。大豆価格などの上昇は、パーム油の下落でほぼ相殺」「乳製品はチーズ価格が安定、バターや粉ミルクなどの価格が上昇を続けている」「砂糖の大幅下落は最大の輸出国であるブラジルの天候回復による収穫量への明るい見通しを反映している」などとある。特に穀物はトウモロコシの下落と大国の”輸出制限はしない”発言が全体値を抑えているものの、今後しばらくは不安定な状況下にあることは間違いない。

食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させる。その観点から考えると、食料品の価格上昇は好ましい話ではない。価格の不安定化、上昇の雰囲気が強く出ている昨今の動向は頭の痛い話ではある。



食料価格の上昇要素は新興国における需要の急速な拡大(人口の増大と生活水準の向上で加速度的に大きくなる)に加え、穀物を中心にバイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な項目が揃っている。そして価格が安くなる要素は見つけにくい(科学技術の進歩による品種改良も、地力を下げるリスクが多分にある)。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には相場動向による上下を経て、値を上げ続ける。かつて原油輸出国だった国の多くが、自国の発展と共に輸入国に転じる動きと同じである。

特に気になる穀物の動向だが、直上でも触れている通り、多くの作物地帯での干ばつによる影響が懸念されている。現時点では輸出大手国の「輸出制限をしない」との声明で価格上昇は抑えられているが、収穫時の取れ高が明らかになるにつれ、被害の実態が明確化され、場合によってはさらに各穀物の価格、そして穀物指数を押し上げることになるものと考えられる。

一連の記事からの繰り返しになるが、日々の生活では欠かせない食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の価格は、社会情勢の動向に大きな影響を与え得る。世界各地の情勢不安・差別化問題に対する運動のすう勢も、食料価格の動きと小さからぬ関係がある。それだけに食料価格を世界的な視点で眺めることが可能な、今件世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。


■関連記事:
【米農務省発・米国内干ばつ状況マップ】

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