百貨店やスーパーの分野別売上高推移をグラフ化してみる(2012年7月分まで版)

2012/09/07 12:00

デパート先日リクエストに応える形でガソリンスタンドの数の動向に関する記事を更新した(【ガソリンスタンド数の推移をグラフ化してみる(2011年度対応版)】)のをきっかけに、各小売業などの中長期のデータ精査記事について、データの更新を行っている。今回は2010年12月分までが最新の状態となっている、百貨店やスーパーの分野別売上高推移を「現時点での」最新の値まで反映させることにしよう。

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データ取得元は【経済産業省の商業動態統計調査】【統計表一覧】。ここに掲載されているデータは、百貨店・スーパーのもの。一方当サイトで業界団体発表の売上高を定期更新している「チェーンストア」とは、「百貨店」か「デパート」の違いがあるが、実際のところは表記上の違いでしかない(【百貨店 衣料品客離れていく 行き着く先はモールとネットに】で説明しているように「日本チェーンストア協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者がデパート、日本百貨店協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者が百貨店」という程度)ので、同一視して問題ない。

まずは年次動向。現時点では確定値が2012年6月分・速報値が同7月分まで出ている。年末がかきいれどきであることを考えると、現時点で比率計算をして2012年分の概算値を出すのは無理があるので、今回年次分は2011年分までについて、時系列データから「大型小売店業態別、商品別販売額及び前年(度、同期、同月)比」を取得する(前回作成時に2010年分は暫定値を一部用いたが、今回は確定値で再計算済み)。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)

元データの項目区分の都合上、衣料品・食料品はともかく、住関品は他のものと一緒になってしまっている(「その他」扱い)。しかし比率的には「住関品+その他」においては住関品が圧倒的に多数を占めるので、変移を見る上ではさほど影響がないと考えて差し支えない。

さてグラフを見ると、

・1990-1991年までがピークで、あとは下降、ほぼ前年比マイナスを継続している。
・飲食料品は他分野と比べれば下げ幅が小さい(マイナス5%未満に収まっている)。
・住関品や衣料品は1992年-1993年の低迷時期を皮切りに、約5年のサイクルで大幅な減少を見せている。
・衣料品は特に下げ幅が大きい。住関品も同様の傾向を見せていたが、直近の下落期では衣料品の下げ方が著しい。
・衣料品、食堂・喫茶の2008年-2009年の下げ幅はこれまでのパターンを逸脱するほどのもの。
・2009年は全分野でマイナス、2010年もマイナスだが、下げ幅は縮小(売上高の前年比における絶対額がマイナスであることに違いは無し)。
・2011年は震災の影響にも関わらず、年ベースでは総売り上げ・衣料品・飲食料品で下げ幅を縮小している。

など、昨今のチェーンストアの低迷が昨日今日に始まったことではなく、1990年前半以降継続した問題であることが分かる。特に住関品・衣料品は1990年代後半以降、2004-2005年の好景気をのぞけば前年比でマイナス3-6%の範囲で低迷したままで、両分野が深刻な状況にあることが見て取れる。

それに加えて2007年から始まる金融危機、さらに2008年のリーマンショックによる景気後退による売上高の減少ぶりは、少なくとも1988年以降において類を見ないほどのものであることが分かる。2010年に入って下げ幅はようやく縮小の雰囲気が見え始めたが、2011年の震災で再び頭打ちしてしまった感は否めない。いずれにせよ、前年比でマイナス圏にある以上、額面上の減少は続いている。

また、注目したいのは食堂・喫茶。単価が低く、他の分野よりも直接客足に影響されやすい分野だが、こちらも衣料品同様の下げが生じている。理由の一つは消費者の消費性向の変化(外食離れ)があるが、それと同時に店舗そのものへの来客数が大幅に減少している可能性を示唆している(実際、デパートやスーパーに足を運び、店内の飲食店を使う機会がどれだけあったかを、思い返してみるとよい)。

続いて先の記事同様に、2012年7月は速報ベース、それ以前は確定ベースのデータを元に、月次の推移をグラフ化する。スタートは2007年4月。昨今の金融危機による景気後退が影響を見せ始めた2007年夏の直前からとした。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)

1990年後半以降の定期的な低迷なら、前年同月比で悪くともマイナス6%前後に留まるはず。しかし2008年の後半(リーマンショック)以降、とりわけ同年秋以降下げが底割れ・長期化している様子が分かる。特に衣料品の下げ幅が著しい。

一方で2011年3月はグラフが鋭い針を形成するかのように大きく下落しているが、これは同月に発生した東日本大地震・震災によるもの。リーマンショックを「一年以上に渡る大きなマイナス圧力」と表現するならば、震災は「2、3か月の短期集中的なマイナス圧力」となる。

当然急落した2011年3月の1年後にあたる2012年3月は、急落分との比較になるため、大きくせりあがることになる。こちらもまた「針」を形成している。数年前のたばこ大幅値上げの際にコンビニの売上、あるいはたばこ自身の売上動向で発生した「1年毎に現れる大反動の繰り返し」のようでもある。

この部分について気になる人も多いと考えられるので、2010年-2012年の各3月における、売上額の推移をグラフ化しておく。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2010-2012年の各3月)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2010-2012年の各3月)

チェーンストアの月次動向でも時折触れているが、そして今件記事でも述べている通り、飲食料品の売上は比較的堅調で、震災の影響も受けず、むしろ震災当月においてですら前年同月比でプラス(ただし全店舗であることに注意)を示している。



これらのデータからは、ここ数年においてクローズアップされているチェーンストアの低迷振りは「1990年代以降露呈していた構造的な問題による売上低迷」に加え「昨今の景気後退による加速化」という、二つの要素によるものであることが分かる。2007年以降の景気後退、さらには2008年のリーマンショックがチェーンストアの業績悪化の主要因では無く、あくまでも後押しした・加速化させただけに過ぎない。例え2007年以降も好景気が続いていたとしても、現状のような状態は遠からず発生したものと見て間違いない。

チェーンストア人口の減少や可処分所得の漸減なども、売上減少の理由として考えられる。しかしそれでは、GDPが増加した時期や好景気の時に、売り上げが伸びないことへの説明がつかない。むしろ今件のチェーンストアにおいては「コンビニやディスカウントストアなどの登場」「インターネット通販の普及」「家族構成の変化」「消費者の消費性向の移り変わり」など、刻々と変わりゆく周辺環境の変化に対応し切れなかったこと(1990年前半にはすでにその傾向が見えていたにも関わらず、だ)に、昨今の売上低迷の起因があると考えたほうが道理が通る。

チェーンストアも四苦八苦をしながら企業同士、店舗同士の統合や整理、新業態へのチャレンジなどを続けている。食料品売り場の活性ぶりは多くの人が自ら実感しているはず。一方で他分野、衣料品や住関品などの厳しさは、売り場の動向を見れば一目瞭然。今業界においては、上記の折れ線グラフをプラス圏に持ち上げるべく、さらなる知恵と努力が求められよう。

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